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探索者
しおりを挟むいつの間にやら早熟のレベルが6になっていた。早熟は自身のスキルレベル+1までのスキルの必要熟練度半減という強力なスキルだが、それ以上のスキルレベルでの必要熟練度が倍になるという効果を持つ事でレベルが上がれば上がるほどキツさが増すというスキルのはずなのだが早熟の効果が早熟自体に乗っている事で現在僕が持つスキル群の中で最もスキルレベルの高い物となっている。
レベル70までの経験値とスキルレベル7までの熟練度の半減というのは破格も破格だ。
6階層まで上がって来れば追っ手が来ることはまずないだろう。仮に僕の情報の全てがばれていたとしても僕を追う事よりもダンジョンというシステムの解明の方が優先されるだろう。
だから逃げる必要はない。転移権限というユニークスキルがあれば正面から出ることも叶うだろう。
それに外の情報は僕のスマホが受信してくれる。ダンジョン内は基本的にネットに繋がらないが窓付近では電波が立つ。今のところ外の状態はこんな感じだ。
2019年6月22日、東京のダンジョン出現。
23日、ダンジョン探索隊が組織され探索開始。
24日、ダンジョン内では異形の怪物が存在している事とその怪物を殺す事で不可思議なアイテムが手に入る事。そしてこれは日本政府の発表ではなく外国の情報だが、レベルやスキルという概念が存在している事が確認された。
25日、外国の情報が一気に流れてくる。虚偽の情報ももちろん存在したが、冒険者制度を作った国や魔法使いと呼ばれるダンジョン探索者の話が大きく取り上げられていた。
26日、現在地球上で確認されたダンジョンの数は約300個だと予想される。基本的にダンジョン間の距離が一定になっている事と基本的に国家一つに対して一つの割合で設けられているという事が判明した。
27日、日本の探索者チームが天の塔一階層を完全網羅したと発表。日本政府から正式にダンジョン内ではレベルやスキル、魔法といった技術が存在していたとのこと。
28日、アメリカで大規模なダンジョン探索が行われた。銃火器を筆頭に様々な現代兵器を装備した合計30人の部隊だったが攻略は9階層までしか行えなかった。参加した部隊の一人、唯一生き残った一人は後にこう語った。10階層は死神の領域だ、と。
29日、アメリカを筆頭に幾つかの大国が冒険者制度を正式に採用した。日本はまだだが国民の声とアメリカの声双方を加味して採用されるのは時間の問題だろう。大国が冒険者制度を正式採用した理由は書かれてはいないがネット掲示板などではダンジョンで手に入る物の価値が人間の命よりも重いと考えたのではないかという意見まであった。おおむね僕もその意見に賛成である。
そして今日、三十日。流石にこれ以上潜っている訳にもいかなくなりそうだ。
転移で2階層まで戻り、そこから1階層の入り口付近まで慎重に近づく。外から慌ただしい声が聞こえた。朝のニュースでいつも以上にダンジョン前へ車が多く来ていると言っていたので気になったのだが案の定と言うべきか、銃で武装した筋肉質の男たちが並んでいる。恐らくは9階層までの探索を行うのだろう。
確かに銃があれば犬や兎、猪と熊は余裕だろう。ゴブリンも油断さえなければ負ける相手じゃない。
恐らくは冒険者制度による被害を最小に抑えるために下層のマップや敵の情報を埋めておきたいのだろう。流石に10階層まで行かないと思うが、一応僕もついて行ってみるか。
実は今日までの間に僕は9階層の最後まではたどり着いていた。9階層には大きな扉が鎮座しており、そこから一瞬中を覗いて一瞬で閉めた。僕じゃなく『俺』が感じ取ったからだ、今までの相手とは別格の奴だと。そいつを倒すためにの準備をここ二日ほどしていたのだがまだ倒すビジョンは見えないらしい。
樋口 徹
レベル23
ユニークスキル
早熟7
幸運2
天の塔転移権限
Pスキル
剣術7
体術7
武術7
回避7
生命感知7
聴覚強化7
風魔法6
命中4
剣速上昇7
神聖魔法6
魔力感知5
魔力循環6
魔力操作7
錬金術5
隠形5
隠密4
心眼3
Aスキル
Ⅲアクセルスラッシュ
Ⅳトルネードダッシュ
Ⅲトリプルジャンプ
Ⅳクリティカルカウンター
Ⅳシャドウステップ
Ⅳダブルドライブ
Ⅲ風の加護
Ⅲ風の魔弾
Ⅱリモートアームズ
Ⅱマナキャッチャー
Ⅲマジックディストラクション
Ⅲハイヒール
Ⅲハイキュア
Ⅲ聖なる加護
Ⅲエンチャント・ウィンド
この二日は動きっぱなしだった。『俺』くんが。
スキルの熟練度上げを最優先に行動したため新しいスキルはあまり増えていない。
しかし、大きくスキルレベルを向上させることに成功した。今のステータスなら人外の動きも可能だし、何なら生物の域さえ超えているとも思わなくもない。
ただしこれでもなお、『俺』は10階層への階段を守る者には勝てないと言った。
『俺』のこういう感は当てになる。野生の感とでもいうのか、あいつはそういうことに優れている。
だから基本的に僕はあいつの勝てる勝てないは当たると考えている。というか僕には分からないのだから任せるのが適任という奴だ。
隠形で姿を消し、隠密で音を消しながらついていく。生命感知の範囲ギリギリをついていく事で見つかる可能性は殆どないと思う。サーモセンサー付きのゴーグルとか持ってたらヤバいから一応距離は30m位離れている。
気になる所があるとするなら一つ。30人前後の迷彩服の中に一人、和装の女がいることだ。黒髪に着物姿は似合っているの限りだが着物って絶対動きにくいだろ。
まさか陰陽師とか結界師とか退魔師とかそういう系のやつ? いやいやこのご時世にそれはないだろ。てかダンジョン生物にそんなの効くわけない……よな?
「理からはみ出たる異形の者よ、在るべき処、在るべき姿、理を読み解き成るべき形へ戻りたまえ」
は? 詠唱? 巫女じゃなくて魔法使いってか?
しかも効果覿面とはどういうことだ。一角兎が何のダメージも追っていないのに光の粒になって消えてしまった。
その後も平気で何体ものモンスターを光の粒へと変えていく。聴覚強化を全開で使って盗み聞ぎしてみることにした。
「初めて聞いたときは驚いたがこうやって見せてもらうとすごいもんだな」
「やはりこのダンジョンの生物は怪異に近い存在のようです。私の家計に伝わる怪異退治の技があればこの程度の位しか持たない怪異であれば問題なく消滅させることができるでしょう」
「この分なら任務の遂行も簡単かもしれないな」
「はい、任せてください!」
高校生くらいなんだよな、どう見ても。
普通の女の子だったとしたら銃弾飛び交う戦場で平然としていられるのだろうか?
それにその能力は無制限に使い続けられる物なのか?
4階層まではこれといった危険もなく順調に歩みを進めていった。あの不可思議な能力についてもかなりわかってきたことがある。
まず効果対象は視界範囲内で無制限。同時に数十体でも消せていた。距離についても制限はなく射程は視界範囲内。詠唱は絶対に必要なわけではなく規模が下がっていいなら一小節程度の詠唱でも効果を発揮する。
盗み聞ぎの結果、あの娘はダンジョンに入るのは初めての様だ。レベルはここまで来て2まで上がっているようだが討伐数0の状態であの魔法のような何かを使えたという事になる。魔力感知全開で調べてみたところあの子から魔力の反応は無かった。
つまりあの能力は魔法ではない。
恐らくはユニークスキル。先天的に獲得している能力なのだろう。
ならば能力次第で僕や俺が到達できていない階層まで行けるかもしれない。
ただあの能力を疑うのならば一つ、あの能力は相手の強さや格に左右されないのだろうか。
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