スクリーンより愛をこめて

CAROL

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第1話 記者会見

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「しかしすごい数だな」

フラッシュの集中砲火を浴びながら思った。 
何度か記者会見は出たけど、これまでとは… 
やっぱりハリウッド進出となると違うな。 

この会見の3年前。 
米映画界で日本人俳優を
探しているという話があった。
 チョイ役から地道に這い上がって来た俳優 
倉田浩平はこの話題に色めき立った。 

「チャンスだ!もし間違って採用されたら?」 

エキストラでも死体の役でも何でもいい。
 ひっかかってくれたら話題になる。
 大学の演劇部からこの世界に飛び込み20年。
 180㎝超えの精悍な佇まいでイケメン。
 でもそのわりにはパッとしない役者人生。
 主役ではない。名バイプレイヤーでもない。 
「あ~倉田ね?」
そう言われる程度の役者だった。

 「え?こーちゃんがオーディション?」

 周りの関係者は彼の挑戦を鼻で笑った。
 中学生の野球部の補欠がWBCに出る。
 そう言って友人までバカにして笑った。
 だが世の中わからない。
なんと彼は書類選考をクリアし 
オーディションに受かった。
次々にふるい落とされる俳優をしり目に 
なんと最終選考の5人に残った。

日本中が大騒ぎとなる。 

ロスで監督、プロデューサーと面接し
本格的にカメリハに入る。
主役のエディ・ターフィーも彼を気に入った。 
エディは大スターだ。
刑事シリーズで全米を席巻した。

だがここ何年かは新作にも恵まれずに落ち目。 
あまりに前作がヒットしすぎて
それを越す作品が生まれない。
久々の新作は同じ刑事もの。
彼にとっても再起をかけた映画だった。 

映画のあらすじはこうだ。 
マクセル刑事役のエディが殺人事件を捜査中 
事件のカギを握る日本人旅行者と出会う。 
英語がほとんど理解できない倉田と
エディがちんぷんかんぷんのやり取り。
 勘違いしつつ協力しながら事件を解決する。 

倉田が演ずる変な日本人は
主役のエディを食うほどの面白さ。
 映画「ハリウッドコップ」は大ヒット。 
エディ・ターフィ復活と
ニューカマー倉田の誕生だった。

そして続編「ハリウッドコップ2」の制作が
3年ぶりに決まる。今日はその記者会見だった。 

正面に座る身長183センチの倉田は
隣のエディに見劣りしなかった。
 前作が大ヒットしたおかげで
仕事も増えたし自信もついた。
 記者のいじわるな質問に対しても
ジョークで楽々切り返す。
この日の芸能ニュースの見出しは
「倉田大爆発」だった。 

***** 

記者会見が終わり、ホテルの部屋に戻る。
銀座の一等地に建つ「ロックカールトン東京」
倉田はこのホテルに来るのも初めてだった。

 「今日さ、みんな態度一変してたよな?」 

部屋に入るなり倉田はマネージャーの
岡元洋二にうれしそうに言う。

「なにがですか?」

 次のスケジュールを確認しつつ尋ねた。

「今までオレを適当にあしらってた奴らだよ。  
必死じゃん、一言ください、くださいって」 

「週刊文修の安藤がいただろ?」 

「あ~いましたね」 

「あいつ、会見中オレに先生って言ってただろ?」
 
「終わってから言ってやったんだよ。
 たしかオレ、コバンザメでしたよね?って」 

「そしたら、いや~先生、手厳しいなぁだって。  
苦笑いで逃げていきやがった」 

「そんなもんですよ、世間なんて。
手のひら返しは常じゃないですか?  
売れたら媚びるし、落ちたらけなすし」 

「いつか仕返ししてやるよ」 

「相手しないほうがいいですよ
そのほうが倉田さんの株があがりますよ」

 笑いながら岡元はこの話題をさえぎった。

 週刊文修の安藤は倉田とそりが合わなかった。
 5年ほど前、当時大人気だった女優
「泉野麗」との熱愛報道が出た時
「金目当ての接近?」とデカデカと書かれた。
 記事ではコバンザメと揶揄され、
それが原因で2人の仲は疎遠に。 
彼女はその後一般男性と結ばれ芸能界を引退。 
真剣な恋愛をおもしろおかしく扱われた。
今でも自分が独身なのはあのせいだ。
あの恨みは忘れていない。

 岡元は愚痴が続くのが嫌で話題を変える。 

「でも、これからは向こうでの生活ですよね」 

「うんオレ、アメリカの俳優だもんな」 

本格的にハリウッドスターとなる倉田は 
日本を離れて米映画界の一員となる。 
苦しみもがいたこの邦画界ともお別れだ。 

「それで、あれ、どうなった?」 

「あ、すいません
今、候補しぼってるんですよ」 

これからの生活。問題があった。それは食事だ。
 前回3か月のアメリカ滞在で倉田は苦しんだ。
 毎日毎日ステーキ、ピザにマック。
10日ほどで嫌になった。
 和風レストランに通い詰めたがこれが辛かった。
 とんでもない価格の不味い寿司
きつねうどんに親子丼。
 インスタント並みのラーメンに30$
ばかばかしかった。
日本で食べる普通の家庭料理が食べたい。 

独身の倉田を世話する家政婦が必要だった。 
だがなかなか適合者が見つからなかった。 
サポートする家政婦さんもアメリカで
生活しなければならないからだ。
 男でも女でもいいが、家事ができるシングル。 
女性は倉田のスキャンダルにならない人。 

 おばさんがいいんだけどなぁ。
 独身で身軽な人。誰かいないかな?

 岡元は東奔西走していた。


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