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第31話 2人のライン
しおりを挟む「どうした?電話では言えないって?」
「すいません」
ここは新宿駅地下、とある居酒屋だ。
込み入った話なのかな?と思って
個室があるここに来た。
結婚の相談かな?と倉田は思ったが
それにしてはタイミングがおかしい。
「社長、堀井さん連絡取れてないですよね?」
「なんだ?堀井ちゃんの事か?」
「ええ。さっきは尾崎さんと岡元さんも居たから…」
吉岡と堀井は仲がよかった。
倉田は気づいていなかったが
ラインで常に連絡を取っていたというのだ。
あの醤油のテストから吉岡は堀井を尊敬していた。
元々料理好きな吉岡は彼女に料理を教えてもらおうと
出会った時から弟子入りを懇願した。
堀井がアメリカに行ってからラインで指導を受けた。
吉岡にとって彼女は姉貴分で料理の先生だった。
「もちろん料理の話もしましたけど
やっぱりほかの話もするじゃないですか?」
「うん、そりゃそうだろ?」
「で、話をしてて…」
「あーん、どうしよう?私が漏らしたってなるし
でも堀井さんとは連絡とれないですよね?」
「あ~どうしよ。絶対秘密って約束したしなぁ…」
えらく困っている。なんだろう?
昔なら「社長命令だ、言え」なんて言えたけど
今のご時世、そんな圧力は掛けられない。
「社長、今独身ですよね?」
「なんだ?急に?」
「堀井さんの事どう思ってます?」
え?そう言われて…考える。
オレの世話してくれて 料理の腕前は最高で…
あの休暇から堀井ちゃんが帰国して
そのまま戻らなかったから本当に困ったな。
「堀井ちゃんはオレの大事な人だよ」
「それはごはんを作る係という意味でですか?」
「ごはんを作る係って言い方はないよ
お手伝いさんとか、家政婦さんじゃない。
堀井ちゃんは、うちの社員なんだけど
友達みたいな家族みたいな感じだ」
「じゃあ、ごはん係っていうんじゃなくて
大事な友人以上の人って事でいいですね?」
えらい力の入りようだな?
どうも話が入ってこないまま返事をする。
「社長、ぜーーーったい秘密にできますか?」
「ああ、口が裂けても言わないよ」
すぅー
吉岡は息を吸い込む。
「堀井さんね・・・」
「うん」
「ずっと社長が好きだったんです」
「えっ?」
「ただのファンのレベルじゃなくて昔から
社長がデビューされた時からずっと好きで
ずぅうっと追っかけというか推しだったんです」
「そしてたまたま料理人の話が出て
チャンスだ!と思って面接に来られたんです」
「でもアメリカでミスしたとかで
岡元さんに事務所ですごい叱られて
それが原因で責任とって辞めたんでしょ?」
「堀井さん、社長の健康面とか
支える事ができて幸せだったって
お傍に置いてもらえて幸せだったって 」
吉岡はぼろぼろ涙を流しながら言う。
「引退されるのはしかたないですけど
堀井さんの社長へのまごころを考えたら
社長には知ってもらいたかったんです
同じ女として…」
「堀井さんを好きになってくださいとは言いません
でも、社長をずーっと思って傍で見守ってたのに
社長が居ない間にひっそり退職なんて…」
吉岡は何度も涙を拭きながらスマホを出した。
「ほんとはダメなんですけど」
2人のラインだった。
******
「普段の社長はスターに見えないよ
普通すぎて草
かわいい人
やっぱりずーっと憧れてた甲斐あるよ
あーでもダメダメ
20年間ファンだったなんて
口が裂けても言えねえ~」
倉田は驚いた。
面接では借金もあるし仕事もないし
オレの映画は見た事ある。
そんな話だったはずだ…
「ポーカーフェースかっこよかったよ~
社長のクールな暗殺者完全別人
かっこよすぎワロタ
これ仕事人にヒントを得たのかな?
来月日本でも公開だと思うから
ももちゃんも見てね」
仕事人がモチーフって感じたんだ?
すごい、堀井ちゃん、見抜いてたんだ…
「シアターシティの新居すごいよ!
キッチンなんかまるでレストランの厨房
これで中古物件なんて信じられない!
燃えるわ~ めっちゃ料理したい」
「乗ってるよ初の左ハンドル
怖いけど道は広いしいけそう
でも自分ちの整理できなくて
私の新居はごみ屋敷オワタ」
ラインには 本当の「堀井元子」が居た。
「マリー・デュ・コロワ、会ったよ
超かわいい!同じ女かよ?
私と同じなの人間ってとこだけワロタ」
「社長~
好きにならないで~(´;ω;`)
でも私じゃ無理
竹やりとミサイルの勝負 自爆草」
「ラブシーン全拒否だって?
絶対やらないって言ってるの
超うれしい (⋈◍>◡<◍)。✧♡」
「フランスロケ パリってだけでテンション⤴
ももちゃんにもお土産送るからね!」
「ヤバい 超泣きまくった!
あのラストはマジでヤバかった
映画館全員ギャン泣き!
ネタばれできないけど
ももちゃん絶対見てね!」
「見た?キュンキュンでしょ?
ラストヤバかったでしょ?
日本でも人気でるかな?でるよね?」
「マリーは絶対演技じゃないよ
あの泣き方はガチ
マリーは惚れてる
あ~嫌だー (´;ω;`)
でもしかたないよね?
しゃーねえ、許すか?
どの口が言う?草」
「辞めるかもしれない
ごめんねももちゃん」
「マジさよならかも」
******
堀井ちゃん…
まだ会話は続いていたがスクロールを止めた。
もう読めない
「ももちゃん、ありがと」
倉田はあわててトイレに立った。
懸命に顔を洗う。
止まらない涙をごまかすために。
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