かのやばら園の魔法使い ~弊社の魔女見習いは契約社員採用となります~

ぼんた

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第41話 最後の魔女試験 ―中編―

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 呪いの魔女の幻に打ち勝ったヒカリは、呪いの魔女を見つめて堂々と立っていた。

「ほう。二人も残ったか。それじゃ、最終試験を始めるかの」

 呪いの魔女がそう言うと、ヒカリともう一人の魔女見習いは、不気味な森の前に立っていた。ヒカリともう一人の魔女見習いは、周りが気になり見渡す。

「ここはどこよ! すっごく気味が悪い!」

 もう一人の魔女見習いが言う。少し身長が低く、暗い紫色の帽子とフード付きのローブを身につけ、黒い靴を履いた明るい茶髪でおかっぱの女の子だ。

「ひっひっひっ! ここは私が作った魔界樹の森さ」

 呪いの魔女は笑いながら言う。

「魔界樹の森……」

 ヒカリはその森の名前からも危険度の高さを感じた。

「ここは、もちろん、あんたたちの知っているような、普通の森じゃーないからね。ひっひっひっ! ……あそこに塔が見えるだろう?」

 呪いの魔女は笑いながら言った後、どこかを指差した。呪いの魔女が指差した方向を見てみると、遠くの方に大きな塔が見えた。

「日没までに、あの塔の頂上にくること。それが、最終試験の内容さ。……さぁ、開始だよ。二人もいるんだから、仲良くもがきなさい。ひっひっひっ!」

 呪いの魔女はそう言うと、目の前から消えていった。ヒカリは、呪いの魔女が最後に言った言葉の意味がわかり、すぐにもう一人の魔女見習いに話しかけようとした。しかし、もう一人の魔女見習いは、ほうきに乗り飛び去ってしまう。

「待って! 二人で協力した方がいい!」

 ヒカリはもう一人の魔女見習いに向かって叫んだ。

「私は強いのよ! あんたなんかの力を借りなくても、こんな試験、余裕で乗り越えられるんだから!」

 もう一人の魔女見習いはそう言うと、森の中に入っていった。ヒカリは少しだけ呆然としたが、すぐに気を取り直して周りの観察を始めた。

「森の上空には、常に何か大きな生き物がたくさん飛んでいる……。なんだあれ、鳥のような、人のような、見たこともない生き物だ……。空を飛んで簡単にたどり着けるほど、甘くはないか」

 ヒカリは塔に向かう最善なルートを考える上で、一番思いつきやすい空に目を向けたが、やはりそこは、単純に通れるほど甘くないことが理解できた。そして、森に目を向ける。

「だとすれば、何が潜んでいるのかわからないけど、何かあっても身を隠せるから、森の中を通った方がいいな。……それに、あれだけ高い塔だから、少し飛べば進行方向を間違えずに済みそうだし。……そうしよう!」

 ヒカリは冷静に判断して森の中を通ることに決めた。



 ヒカリは周りを警戒しながら森の中をほうきで飛んでいく。すると、奥の方から悲鳴が聞こえた。

「悲鳴? 魔女見習いの子?」

 ヒカリは焦った。その悲鳴がもう一人の魔女見習いの声だったからだ。ヒカリは悲鳴が聞こえた方へ急いで向かった。

 すると、もう一人の魔女見習いが木の枝にグルグル巻きになり、大きな生き物に襲われている状況が確認できた。大きな生き物をよく見ると、全身が濃い緑色で、目が一つだけの体長十メートルほどの巨人のようだ。

 ヒカリは緑色の巨人の間をすり抜け、もう一人の魔女見習いのそばまでたどり着いた。もう一人の魔女見習いはどうやら気を失っているようだ。

「気を失っているだけか。でも、すごいケガしてる」

 ヒカリは気配を感じて後ろを振り返ると、緑色の巨人が襲い掛かってきていた。ヒカリはとっさに逃げることができず、全身を巨人の両手で握られてしまった。巨人は大声で叫びながら、ヒカリを握りつぶそうと力を込め始めた。

「……っぐ。…………」

 ヒカリは痛みに耐える。すると、緑色の巨人は、一瞬驚いた様子で固まった後、ゆっくりと力を緩め始めた。

「……なんで、抵抗しない?」

 緑色の巨人はヒカリに問いかけた。

「あなたが私を殺すつもりがないって、わかったから」

 ヒカリは少し苦しい表情を浮かべながら言う。

「なぜ、そう思う?」

 緑色の巨人はじっとヒカリを見つめながら言った。

「なんとなくわかる……」

 ヒカリはそう言った。

「この森には、何が目的だ?」

 緑色の巨人は、さらにヒカリに顔を寄せて問いかける。

「あの塔に行きたいの。だから、ちょっとだけ通らせて欲しい」

 ヒカリは右手で塔を指差して言う。すると、緑色の巨人はヒカリを握りつぶすのをやめ、ヒカリをゆっくりと地面に下ろした。

「お前はいいやつだと思った。だから何もしない」

 緑色の巨人は落ち着いた口調でそう言った。

「ありがとう。……あの! えっと……緑さん!」

 ヒカリはなんて呼べばいいのかわからなかったので、とっさにそう言った。

「み、緑さん? 俺のことか? はははは!」

 緑色の巨人は少し戸惑った様子を見せた後、大声で笑いだした。

「もし、気にさわったならごめんなさい! 名前があれば、教えて!」

 ヒカリは問いかける。

「……名前はない」

 緑色の巨人は遠くを見て、ほんの少しだけ寂しそうに言った。その後、ヒカリの顔に視線を移して笑みを浮かべる。

「だから、お前に名前を付けてもらえて、すっごく嬉しかった! 人間よ、お前の名前は?」

 緑さんは嬉しそうに言う。

「私はヒカリ!」

 ヒカリは元気よく名乗った。

「ヒカリか! いい名前だ!」

 緑さんは笑顔でそう言った。

「あの! あそこの魔女見習いの子を解放してもらえないかな?」

 ヒカリは緑さんにお願いをする。

「あいつはヒカリの仲間なのか?」

 緑さんは問いかける。

「うん。まだあまり話したことないけど、これから仲良くなれるってわかる」

 ヒカリは真剣な表情を浮かべてそう言った。

「それなら俺はもう手を出さない。ただ、解放してほしいのなら、俺じゃなくて魔界樹に相談するんだな。……それじゃ、気を付けて行って来いよー!」

 緑さんはそう言うと、大きな足音をたてながら去っていった。すぐにヒカリは、もう一人の魔女見習いに駆け寄り、その体を縛っている木の枝に優しく手を触れた。

「私たち、この森を通りたいだけなの。この子が何をしたかは知らないけど、決して悪い子じゃないと思う。だから、離してもらえないかな?」

 ヒカリが真剣に言うと木の枝が緩み、もう一人の魔女見習いが解放された。

「サイクロプスが認めたならば、あなたは悪い人じゃない。そんなあなたが言うならば解放します」

 魔界樹は優しい口調でそう言った。

「ありがとう!」

 ヒカリはそう言うと、すぐにもう一人の魔女見習いの様子を見る。木の枝の圧迫がなくなったからか、顔色も良くなっていた。

「大丈夫?」

 ヒカリはもう一人の魔女見習いに声をかけた。

「……う。……なんで、あんたが。いててて!」

 もう一人の魔女見習いは意識を取り戻し、ゆっくりと立ち上がろうとする。ヒカリはもう一人の魔女見習いがしばらく歩けない状態だと一目見てわかった。

「すごいケガしてるから、動いちゃダメよ!」

 ヒカリはもう一人の魔女見習いを支えながら言った。

「やめてよ!」

 もう一人の魔女見習いは、ヒカリの手を振り払いながら言う。そして、もう一人の魔女見習いはヒカリの支えがなくなり、尻もちをついてしまった。

「ほら! 一緒に行くよ! まだ大人を乗せては飛べないから私の背中に乗って! 何が出るかわからない森なんだから!」

 ヒカリはおんぶの姿勢をしながら、もう一人の魔女見習いに言う。

「どうせ私は、もう何もできないのよ! ただのお荷物じゃない! 誰かのお荷物になるくらいなら、死んだ方がマシよ!」

 もう一人の魔女見習いは大声で言った。その瞬間、ヒカリはもう一人の魔女見習いを思いっきりビンタした。

「……そんな悲しいこと、言わないで」

 ヒカリは悲しい表情を浮かべながら力強く言った。すると、もう一人の魔女見習いは驚いた表情を見せた後、視線をそらした。

「……ごめん」

 もう一人の魔女見習いは小さい声でそう言った後、ヒカリの背中に乗った。

「でも、私をおぶってたら、日没までに間に合わなくなっちゃうよ。あなた、魔女になれなくなってもいいの?」

 もう一人の魔女見習いは心配しているようだった。

「困っている人がいるから助ける。それだけよ。……それに、まだ諦めたわけじゃない! 間に合うように頑張るし!」

 ヒカリは笑顔でそう言った。

「……あんた、名前は?」

 もう一人の魔女見習いは問いかける。

「私はヒカリ」

 ヒカリは名乗った。

「私はリカ。この恩は必ず返すわ」

 リカはそう言った。

「よろしくね。リカ」

 ヒカリはリカと少し打ち解けられた気がして嬉しかった。

「うん。……よろしく」

 リカは恥ずかしそうに小さな声で言った。

「ヒカリ、この森の中央の塔に行きたいんですよね?」

 魔界樹がヒカリに話しかけてきた。ヒカリは話しかけてきた魔界樹の方に体を向ける。

「うん! そうだよ!」

 ヒカリは魔界樹に返事をする。

「中央に行くなら気を付けてください。ダークウィザードという魔法を使ってくる恐ろしいやつが四体いますので」

 魔界樹はそう言った。

「ダークウィザード。……それは、魔法使いなの?」

 ヒカリは魔界樹に質問した。

「いえ、魔法使いは魔法を使える人間ですが、ダークウィザードは魔法が使えても人間ではありません」

 魔界樹はそう言った。

「そんなのがいるんだ……。わかった! いろいろとありがとう!」

 ヒカリは魔界樹にお礼を言うと、リカをおぶって歩き出した。

「ねぇ。……あんた、いろいろ大丈夫なの?」

 リカは何かわからないがヒカリのことを心配していた。

「ん? 大丈夫だけど?」

 ヒカリは特に体の具合も悪くなかったのでそう言った。
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