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一緒に未来を見ましょう 3
しおりを挟む「な、な、な、なんであなたがここにいるのですか!」やっとラジオから言葉が出た。
「初対面で近づきすぎて申し訳ありません。
アルバ家に私は必要のない人間なのでこちらの修道院にお世話になっています。
お父様からの依頼をお聞きになっていませんか?」
「お父様?あなたは、マリア・アルバ様ではないのですか?」
「母を知っているのですか?私は娘のリリア・アルバです。」
「そ、そうか。いや、でも、誰か執事を呼んでくれ!」
「はいー!そこで待機していましたー!何でございましょう、おぼっちゃまー。」
「あの例のものを持ってきてくれ!」
「はいー!あれでございますねー!もうご用意しておりますー!」
ラジオの執事は手に何かを持っている。
それをラジオに手渡し、リリアはラジオからその品を受け取る。
フサフサ、サラサラとした触感。
よく見ると、それはカツラだった。
修道院に来た当初少年を助けた際売ったリリアの髪の毛で出来ている。
「頼む。そのカツラをあなたに被ってもらいたい。」
「…。わかりました。しかしタダでとは言いませんわよね。
このカツラをかぶるのでその後は私の話を必ず聞いてくださりますか?」
「あ、ああ。もちろんだ。」
「では。」リリアは帽子を脱ぎカツラを身につける。
元々リリアの髪で作られているので違和感なく着けられている。
ロイも目を見張った。
修道院の中で出会ったリリアが目の前にいる。
今日は綺麗に化粧もしており綺麗な服も着ている。
体もあの時よりスリムになり、どこからどう見ても完璧な令嬢だ。
(普段から男みたいな格好になれていたから、このリリアは誰が見て綺麗と言うだろうな…。)
ロイは嬉しいような、何だかまた取り残されたような気持ちになっていた。
「これでよろしいでしょうか。」
「あ、ああ。」ラジオはうっとりリリアを見ていた。
ロイがハラハラとラジオを見ている。
リリアはラジオをじっと見ている。
リリアは、ラジオの視線をさらに強く見返すような強い眼差しを向ける。
顔は怒ってはいないがどこか挑戦的な表情だ。
ラジ無言のまま、徐々に困惑した表情となり落胆していった。
「ラジオ様、私は母ではありません。外見は似ているかも知れませんが似て非なるものです。」
「そうだよな。マリア様がいるはずないよな。顔は似ているが眼差しが別人だ。」
「ラジオ、どっかでリリアの母親に会ったのか?」
「ああ。幼い頃王国のパーティに連れて行かれた時のことだ。
魔力がない僕はほぼ用無しだ。どこの貴族にも関心を持たれないし、
両親から存在が恥ずかしいから姿を隠せと言われた。
庭で過ごしていたらマリア・アルバ様が僕に気がついて声をかけてくれた。
息子と一緒に来たが乳母に任せて庭で休憩していたところだったらしい。
マリア様はお腹が大きかったが、その時の子が君か。」
「母はラジオ様に何を?」
「全てを聞いてくれた。僕に魔力がない事、器はあるが人の魔力はおぞましいと思っていること、
ビッツ家に僕は必要ないこと全部だ。
ずっと聞いてくれた。
そして、そんな僕を立派な人と言ってくれた。不思議な人だった。
他の大人が言ったら薄っぺらいのにマリア様が言うと癒された。
あの綺麗な瞳の光、ずっと聞いていたい声。
あの時間があったから僕は何とかやってきた。
だからマリア様が不慮の事故で亡くなったと聞いて後悔したんだ。何で会いに行かなかったのだろうって。
またあの方に会いたい。僕を導いて欲しかった。」ラジオは両手で頭をかきむしる。
「その気持ちが抑えきれなくて、母と似たような何かを探して集めていたのですね。」
「何をしても満たされない。僕はこの世界に必要ない人間だから。」
「まあ、それでラジオ様は屋敷から出ずバスク地区も放っておいたのですね。まあ、お可哀想…。」
「そうなんだ…。僕はダメな人間だ。」ラジオは落胆しようとしていたが、
「なんて言うとお思いですか?」リリアは低い声で話し続ける。
ロイもラジオも驚いてリリアを見る。
「ラジオ様の不遇は同情すべきところがあります。
しかし、貴族として暮らしている以上市民を守る義務はどこに行ったのかしら?」
「で、でも僕に魔力はないから…。」焦って反論するラジオ。
「あなたがそこでぐずぐずしている間に、子供たちは劣悪な環境で勉強もできず働かされ、
地区の崩壊寸前のところで命を削って踏ん張っている大人たちがいるのですよ。
あなたはそれをどうお思いですか。」なお低い声でリリアは相手を冷静に追い詰める。
「ぼ、僕だって…。できることがあればやりたいよ。でも、でも。」
(この人は一つのことをやり遂げて成功したことがない人ね。
自信がなくて何からすべばいいか分からない人。誰かに保障してもらわないと何もできない人。今は。)
「では、あなたに出来る事、あなたにしかできないことがあります。
修道院で薬草を作り、街で売ります。
あなた、薬草や医療について多少知識があるのでしょう?
そこで薬師として働いてもらいます。まずはそこからです。分かりましたね。」
「そ、そんなことしたら一族の笑い者だ!」
「じゃあ、今のままでいいのですか?一族の笑い者が嫌で市民の命を奪うのですか?」
「で、でもお父様が知ったら何を言われるか…。怖いよ。」
「その時は、気が狂ったアルバ家の令嬢にそそのかされたとでも言いなさい。
どうせ私はアルバ家から市民落ち、もしかすると命を狙われかねない人物です。
アルバ家との関係に傷もつかないでしょう。」
「リリア、何を言っているんだ?」ロイは驚いて口を挟む。
「ロイ、私はね、腹が立っているのよ。ラジオ様にではないわ。
この世界を作っている貴族全般によ。
何もかもがおかしいわ。そんな貴族に属する自分にも反吐が出そう。」
「ねえ、ラジオ様。あなたもそうじゃないの?これはあなたの自分に対する挑戦よ。
さあ、私もロイも着いているわ。出来るところからやりましょう。」
「お、俺も?」
「そうよね、ロイ。」
「あ、ああ。そうだ。俺たちもうすでに全員一族の笑い者だろ。
もう何も怖くないぞ。ラジオ。ちょっとずつで良いんだ。自分にできることをしよう。
ラジオは賢いんだもっと自信持ってくれよ。」
「ろ、ロイ。何か雰囲気が変わったな。ぼ、僕もそうなりたい。リリア、良いのかい?」
「ええ。私たちでこの地区を盛り上げましょう。
安全で子供たちがのびのび育つ地にしましょう。どうぞ、よろしくお願いいたします。ラジオ・ビッツ様」
「ああ。よろしく。リリア・アルバ。そしてロイーズ・セント・ノイズ。」
「フルネームで呼ぶな。」ロイが苦笑する。
「素敵な名前じゃない。ロイ。」リリアが笑う。
髪が長く化粧をしたリリアににっこり笑われ、ロイは顔が真っ赤になってしまった。
「3人で乾杯と行きたいが、明日俺は王都に行く予定だ。
ラジオ、俺がいない間リリアを頼む。
危なっかしいことばかりするから気を付けてくれ。」照れ隠しに話題を変えた。
「そう言えば、リリアはなぜそんな髪の毛が短いの?カツラ、返そうか?」
「色々あって。私この短い髪の毛気に入っているからいらないわ。質にでも出して。」
「じゃあ、俺がそのカツラもらう!」
「え?何でロイがリリアのカツラがいるんだ?お前、まさか女装に目覚めたのか?」
「え?そうなのロイ。水臭いじゃない。早く教えてよ。メイクなら私色々貸せるわよ。」
「ち、違う!でも、俺がもらっておく!」強引にカツラをもらうように話を進めた。
「でも、今日1日はリリア、このカツラをつけておいてくれ。」ロイはどさくさに紛れてリリアに頼む。
「わ、分かったわ。何かロイの参考になるよう着けておくわね。」
「もう、だから違うって言ってるだろ!」
3人は大笑いした。
ラジオの執事が嬉しそうにその光景を眺めていた。
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