俺の婚約者は地味で陰気臭い女なはずだが、どうも違うらしい。

ミミリン

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やっと落ち着いた

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俺は頭を潰されかけ、アリスは殴られそうになり、マリーナ嬢がルイスに殴られたかと思ったら、マリーナ嬢は将来の王妃と言い、あっという間に場を収集させてしまった。


え?何が起こった?ん?一緒に行動していたあのまだら色髪の生徒が第一王子だったって?
それから学園長たちが来て…。頭が情報量についていかないぞ。

俺は口を開けてぼんやりしていた。

その時、


「アレクっ!!」

アリスは俺の元に駆け寄って俺を抱きしめた。

「良かった。アレクが死ぬかと思った。」
アリスは涙をこぼしている。眼鏡はどこかに放り投げられていてアリスは素顔だ。


「アリス。アリスから抱きしめてくれるなんて…。いや、そうじゃなくて俺もアリスが連れていかれるんじゃないかって怖かった。ごめんな助けられなくて。」


「ううん。アレクが無事で良かった…。」


「あの…、アリス。あいつが俺とは違うって言ってくれたの嬉しかった。すごく嬉しかった。」

アリスの顔が見えるように少し体を離して覗き込むようにアリスのアメジストの瞳を見た。


「だってアレクが私の中身を知って好きになってくれたのは本当の事だもの。」
俺たちは見つめ合う。ああ、アリスが愛おしい…。

と、いい雰囲気だったがマリーナ嬢の咳払いで現実に戻った。


「ううううん!えっとアリスもアレックスもところどころ傷があるし、まずは二人で保健室に行ったらどうかしら?傷の手当てが終わってから聞き取りにするわ。」


冷静になり周囲を見渡すと教員がルイス達を連れて行ったあと大勢の生徒たちが俺たちを囲んでいた。

ああ、いや俺はいいんだが、恥ずかしがっているアリスの素顔をギャラリーに見せるのは腹が立つ。
この可愛い表情は俺しか見てはいけないからな。

ということで保健室に向かうことにした。


ああ、その前に第一王子のセドリック殿下に挨拶しなくては。

今まで公の場にほとんど出ておられなかったから顔を知らなかったけどよく見れば美形よりだよな。可愛らしい感じか?

「セドリック第一王子この度は…。」王子に話しかけようとしたが

「いらない。お前たちの話はどうでもいい。マリーナの手当てが先だ。失礼する。」

ああ、怒ってる。というか、俺たちは王子の眼中に入ってない。

マリーナ嬢はすごい人に好かれたな。途中の王子の告白は本心からに見えたし。

マリーナ嬢、王妃って…。スケールが違いすぎる。いや、マリーナ嬢だったらどうにかするか。

うん。きっとそうだ。



「さあ、傷の手当てをしようか。一緒に保健室に行こう。」俺はアリスの手を繋いだ。

さっきアリスに抱きしめてもらって何だか更にアリスと近づけた気がした。

アリスは手を繋がれ恥ずかしかったのか照れていたが口元が笑っている。ああ、可愛すぎるだろ。

保健室に着くと誰もいなかった。

保健の先生はマリーナ嬢の状況を見に行っているんだろう。俺たちの傷はかすり傷ばかりだからここに置いてある処置セットで十分だ。


「アレク、体が痛いでしょう?ここに座って。」アリスが保健室のベッドに俺を誘導する。


俺はベッドに腰を掛けた。


「じゃあ、私はほとんどかすり傷だからアレクの傷の手当てを先にするわね。」
アリスが慣れた手つきで処置セットを処置台に広げようとする。

「俺は大丈夫。ちょっと抑え込まれただけだから。
日ごろの演習は魔力ありきで戦っているから今日みたいな状況は想定してなかった。油断していたな。」
俺は苦笑する。

いやいや、そんなことをアリスと話したいんじゃない。


「アリス、手当は良いから、こっちに座ってくれないか。」
俺が座っているベッドの空いているスペースにアリスを誘う。

「え、ええ。」アリスは緊張しながらも拒否せずに俺の隣に座ってくれた。

「アリス、抱きしめても良いか?」

「ええ。大丈夫よ。」

俺はアリスを怖がらせないようにゆっくり、そっとアリスを抱きしめる。


ああ、アリスが俺の手の中に居る。良かったあ。

アリスにはああ言ったが頭をつぶされそうなとき死を覚悟してたんだよな。アリスが素顔を出して止めてくれなかったらやばかった…。安心すると体の力が抜けてくる。


「なあ、アリス。あのルイスっていう公爵だろ?アリスが学校に通えなくなった原因。さっきすごく怖かっただろ?それでも俺を助けるために素顔を出して前に出てくれた。」


「うん。ルイス様の顔を見たときね、震えが止まらなかった。嫌な記憶って何年たっても顔を見るだけで鮮明に思い出すのね。
でも、その怖さより、アレクが殺されていなくなることの方がもっと怖かったの。それだけは絶対いやって思ったら気づいたらルイス様の前に出てた。」


「うん。嬉しかったし、助かった。でもアリスが危険な目に遭うからやっぱり困るかな。俺だってアリスが誰か傷つけられたら嫌だから。これからアリスを守れるくらい強くなりたい。」

「うん。でも、二人とも助かって良かった…。」

「そうだね。アリス、今俺が抱きしめているけど怖くないか?」

「全然怖くない。アレクの心臓の音が聞こえて安心する。アレク温かいし、いつものアレクのいい匂いがする。」

に、に、匂い?そうか。普段から使っている香水廃盤になる前に在庫を全部買い占めておこう。
ああ、アリスが安心して俺の腕の中にいることがすごく嬉しい。


「アリス、今回の事も含めて痛感した。やっぱりアリスの存在って人にすごく影響力があるんだって。

アリスが望まなくてもアリスの容姿や功績だけを見て近づく奴が今後もたくさん出てくると思うんだ。
俺やマリーナ嬢は上辺じゃなくて本来のアリスが好きだけど、そうじゃない奴もいる。
嫉妬や羨望もあるし尊敬だけじゃなくてやっかみをぶつけてくる連中ももっと出てくるはずだ。
俺、アリスが傷つくのは嫌だ…。」話が途中で止まり真剣な目でアリスを見る。


「アレク?どうしたの?」


「アリス、俺たち婚約者のままじゃダメだ。」


「え?どういうこと…?婚約継続って言ってたじゃない…。」

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