夫婦で異世界放浪記

片桐 零

文字の大きさ
22 / 100
第1章

第18話 村に着いた

しおりを挟む
「…ん?お前ら見かけねぇ顔だな?子供だけでこんな時間にどうした?親はどこだい?」

素通り出来るかとも思って、何食わぬ顔で近づいてみたが、案の定と言うべきか、村の入り口で鈍く光る槍を持ち、上半身を覆う革鎧を身につけた男に呼び止められてしまった。
ま、これは想定通りなのだが…

やはり日本人は幼く見えるのか?
それとも、この世界でも15歳はまだ子供なんだろうか?

(ナビさん、この世界でも15歳は子供なのか?)

『回答提示。国によって差はありますが、アルバート王国では15歳で成人として認められます。』

良かった、成人前だとこの後生活するのが大変になるかも知れないからね。

それに少し不安だった言語についても、特に違和感なく理解できているので安心した。
言葉が通じないと、本当に不便だからな。

ま、幼く見えたのは仕方ないと思おう。
そう、決して俺の身長が低いからじゃない。
相手がデカイだけなんだ…

少しナビさんと喋り、物思いにふけってしまっていると、門番の男を無視している形になってしまった。
門番の男には、それが不審に見えたのだろう。

「…い…おい!聞いてるのか?お前ら…まさか!いや…俺の問いに答えろ!親はどこだ!」

門番の男は、持っていた槍の穂先をこちらに向けて突き出すように構えると、少しだけ声を荒げて聞いてきた。

とりあえず、このまま黙っていても良いことはないので、事前に考えていたシナリオAで対応することにしよう。

「…失礼な人ですね。私達は子供ではありません。どちらも15歳、成人しています。」

こちらの年齢を告げると、門番の男は少しだけ狼狽えたが、まだ構えを解くことはない。

「…え?その見た目で…まじか…な、なら、どうしてすぐに答えなかった!」

「それは、あなたが子供と言ったので、自分達ではなく別の方かと思ってしまっただけですよ。他意はありません。」

「それは…そうか…そうだよな、おっとすまねぇ、こんな辺境の村に、商会の定期便以外で人が訪ねてくることなんて滅多にねぇからよ。つい緊張しちまってな、この通り、許してほしい。」

門番の男は、槍を下ろすと、こちらに頭を下げ、丁寧に謝ってくれた。

この人は多分いい人なんだろう。

「いえ、まぁ実際15になったばかりですし、子供扱いされたくらいで怒りませんよ。あまり気にしないで下さい。」

「そ、そうかい?いや、成人したばっかりにしては、随分しっかりしゃべりやが…いや、これは…」

門番の男は、バツが悪そうにしているが、こちらの思惑通りに動いてくれそうなので、俺としては好都合だった。

「大丈夫ですよ、さっきも言いましたが気にしないでください。」

「…すまん、あんたと喋ってると、見た目はうちの子供ガキと同じくらいなのに、死んだ先代様みたいに思えてくるから妙な気分になっちまう…本当に15かい?」

あんたの家の子供はいくつだよ…
ま、本当は60を過ぎているから、違和感はあるだろうね。

「先日15になったばかりですよ。それより、何か聞くのでは?」

「おっとそうだった、えー…ここはハボック村だ。お前さん達はどこから来たんだい?」

よし、門番さんの口調が柔らかくなった。警戒心も少し薄れた気がするし、これでしゃべりやすくなるかな。

「つい先日まで、ミハレット子爵の治めるチサという小さな漁村に住んでいました。小さな村だったので、こちらの方は知らないかもしれませんが…」

ここ、領主の名前も村の名前も、本当にあるものなのがポイントだ。
架空の村だと、どこでバレて問題になるか分からないからね。

事前にナビさんから聞いた情報を基にして、いくつかの要素をクリアする所を選んだつもりだ。

選出基準は3つ。場所と名前、そして大きさだ。

まず、この村からあまり近い場所だと、村の中に知ってる人がいるかも知れないし、その場合は情報に齟齬が出てしまうと不要な疑いを持たれてしまう。
「随分遠いところから…」とか、「どこだよそこ…」とか、誰も知らないか、名前だけは分かる程度の距離にある村であれば、その村出身の人に会うこともないだろうし、誤魔化す回数を極力減らすことができる。

次に名前、これは領主の名前と村の名前に、他にも聞き間違えるくらいに似たような名前があるところを選んだ。
今回なら、領主は「メフアレト伯爵」ってのがいるみたいだし、「チャシャ村」ってのもある。
これなら、何かあっても相手の聞き間違いでシラを切れる。
これはあくまで保険だね。

最後に大きさ、これは出来るだけ規模の小さい村が望ましい。
小さな村なら、その分田舎だろうから、ものを知らなくても仕方ないと思ってもらえるだろ?
まぁ、これはフレーバー程度だけどね。

以上の条件に合う村を、ナビさんに協力してもらって探して、今回のミハリット子爵領、チサ村出身にすることにした。

完全な嘘の情報にすると、何かの拍子にバレるかもしれないから頑張って探しましたとも…
実際に探してくれたのも、情報をくれたのもナビさんだから、今回もお世話になりっぱなしだか…

「…チサ?…聞いたことねぇな…それで、そのチサの村のあんたが、どうしてうちみたいな辺境の村に?」

知らないみたいだけど、警戒はされてないっぽい…?
第一条件クリアでいいかな。

「それが…乗っていた乗合馬車が魔物モンスターの襲撃を受けまして…」

「本当かい!そりゃどこでだい!」

「い、いえ、もう魔物モンスターは討伐されています。お恥ずかしい話ですが、私達はすぐに逃げ出したため、戦闘自体は見ていないのですが、ほとぼりが冷めた頃に馬車のいた所に戻ると、襲って来た魔物モンスターの首だけが転がっていました。
その頃には、乗ってきた馬車も他の乗客達もどこにも見えなくなっていて、道沿いを馬車を追って歩いたのですが、今日まで追いつくことも出来ず…」

「そうだったのかい…そりゃあ大変だったな…」

あぶね…なんとか誤魔化せた。
近くで人を襲う魔物モンスターが出たなら、そりゃ警戒するわな…反省しよう。
だが、門番の男は、こちらに同情的になってくれているようだから第ニ条件クリア…

「幸いなことに、それからは一度も魔物モンスターに襲われることはなかったのですが、この辺りの地理に疎いもので…」

「道に迷って偶然この村にたどり着いた、って訳かい?」

最後まで言わなくても、こちらの想定通りの答えに考えが及んでくれている…
第三条件クリア…
ここまでくれば、後はこの村のリソース次第だな。

「そうです。なので、少しの間で構いません、滞在させてはもらえないでしょうか?」

門番の男は、少し悩むような仕草を見せたものの、大きく頷いてくれた。

「分かった。妙な格好をしているからどんなやつかと思ったが、あんた、悪い人間じゃなさそうだからな。」

そう言って、村の門を押し開いてくれる。

「改めて、ようこそハボック村へ。」

門番の男は、こちらに手を差し出してくる。
この世界でも握手の習慣はあるらしい。
その手を軽く握り返すと、思い出したように門番の男が口を開く。

「そういや、まだ名前を聞いてなかったな、俺はレクレット。お前さん達は?」

「名前ですか?私は…「ぼんです。」ちょ!優子マメ何を!」

「ボンとマメか、変わった名前だが覚えやすくていい。わっはっは。」

「いやちが…「オレはしろまです。」「私はでっかちゃんです。」おいお前ら!」

「ん?今何か…」

「何でもないです!気にしないでください!」

「そうか?…っと、俺が案内してやれりゃいいんだが、ここを離れるわけにいかないんでな。
ここをまっすぐ進むと、ノノーキルって奴が雑貨屋をやってる店がある。困ったらそこで色々聞くといい。
ま、何もない村だがゆっくりしていってくれ。」

「ありがとうこざいます。それじゃ。」

門番のレクレットに見送られながら、優子マメの背中を押して村へと入ることになった。

最後の最後でグダグダだよ!


ーーーー
作者です。
レクレットさんは5人家族です。

感想その他、お時間あれば是非。
しおりを挟む
感想 18

あなたにおすすめの小説

私と子供より、夫は幼馴染とその子供のほうが大切でした。

小野 まい
恋愛
結婚記念日のディナーに夫のオスカーは現れない。 「マリアが熱を出したらしい」 駆けつけた先で、オスカーがマリアと息子カイルと楽しげに食事をする姿を妻のエリザが目撃する。 「また裏切られた……」 いつも幼馴染を優先するオスカーに、エリザの不満は限界に達していた。 「あなたは家族よりも幼馴染のほうが大事なのね」 離婚する気持ちが固まっていく。

クラス転移したら種族が変化してたけどとりあえず生きる

アルカス
ファンタジー
16歳になったばかりの高校2年の主人公。 でも、主人公は昔から体が弱くなかなか学校に通えなかった。 でも学校には、行っても俺に声をかけてくれる親友はいた。 その日も体の調子が良くなり、親友と久しぶりの学校に行きHRが終わり先生が出ていったとき、クラスが眩しい光に包まれた。 そして僕は一人、違う場所に飛ばされいた。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

幽閉王女と指輪の精霊~嫁いだら幽閉された!餓死する前に脱出したい!~

二階堂吉乃
恋愛
 同盟国へ嫁いだヴァイオレット姫。夫である王太子は初夜に現れなかった。たった1人幽閉される姫。やがて貧しい食事すら届かなくなる。長い幽閉の末、死にかけた彼女を救ったのは、家宝の指輪だった。  1年後。同盟国を訪れたヴァイオレットの従兄が彼女を発見する。忘れられた牢獄には姫のミイラがあった。激怒した従兄は同盟を破棄してしまう。  一方、下町に代書業で身を立てる美少女がいた。ヴィーと名を偽ったヴァイオレットは指輪の精霊と助けあいながら暮らしていた。そこへ元夫?である王太子が視察に来る。彼は下町を案内してくれたヴィーに恋をしてしまう…。

巻き込まれた薬師の日常

白髭
ファンタジー
神に選ばれ、魔素の循環する界へと送り込まれたのは――現代の薬師。 剣も魔法も扱えない彼が憑依したのは、戦闘力ゼロの商人見習いの少年だった。 彼の武器は、知識と経験。商品を生み出し、人脈を築き、産業を広げていく。 「居場所を見つけたい」その願いが、やがて世界を変える力となる。 これは、一人の薬師が紡ぐ研究と開発、そして成長の物語。 【カクヨムでも掲載しています】 表紙は紹介文をもとに、ai【adobe firefly】で作成したものです。(参考程度に……)

転生無双なんて大層なこと、できるわけないでしょう! 公爵令息が家族、友達、精霊と送る仲良しスローライフ

幸運寺大大吉丸◎ 書籍発売中
ファンタジー
アルファポリス様より書籍化! 転生したラインハルトはその際に超説明が適当な女神から、訳も分からず、チートスキルをもらう。 どこに転生するか、どんなスキルを貰ったのか、どんな身分に転生したのか全てを分からず転生したラインハルトが平和な?日常生活を送る話。 - カクヨム様にて、週間総合ランキングにランクインしました! - アルファポリス様にて、人気ランキング、HOTランキングにランクインしました! - この話はフィクションです。

神々の愛し子って何したらいいの?とりあえずのんびり過ごします

夜明シスカ
ファンタジー
アリュールという世界の中にある一国。 アール国で国の端っこの海に面した田舎領地に神々の寵愛を受けし者として生を受けた子。 いわゆる"神々の愛し子"というもの。 神々の寵愛を受けているというからには、大事にしましょうね。 そういうことだ。 そう、大事にしていれば国も繁栄するだけ。 簡単でしょう? えぇ、なんなら周りも巻き込んでみーんな幸せになりませんか?? −−−−−− 新連載始まりました。 私としては初の挑戦になる内容のため、至らぬところもあると思いますが、温めで見守って下さいませ。 会話の「」前に人物の名称入れてみることにしました。 余計読みにくいかなぁ?と思いつつ。 会話がわからない!となるよりは・・ 試みですね。 誤字・脱字・文章修正 随時行います。 短編タグが長編に変更になることがございます。 *タイトルの「神々の寵愛者」→「神々の愛し子」に変更しました。

【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました

佐倉穂波
恋愛
 転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。  確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。 (そんな……死にたくないっ!)  乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。 2023.9.3 投稿分の改稿終了。 2023.9.4 表紙を作ってみました。 2023.9.15 完結。 2023.9.23 後日談を投稿しました。

処理中です...