夫婦で異世界放浪記

片桐 零

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第2章

第17話 背後からの奇襲

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『情報提示。まもなく陸草鰐グラスゲーターの感知範囲です。』

(ここで止まって。その場に伏せて。)

旅する魔樹大老トラベルトレンダーから、徒歩で10分くらい。
残った陸草鰐グラスゲーターの姿がもうすぐ見えるかと思っていたところに、ナビさんからの情報を聞いた俺は、即席のハンドサインを使って後ろを歩く優子マメ達に止まって伏せるように促す。

(ナビさん、出来るだけ早めに決着を付けたい。何か策はある?)

『行動提案。接近して毒液の檻ベノムケージで動きを止める、もしくは毒蔦縛ポイズンアイビーを重ねがけして動きを止めることを提案します。』

どちらにしても、魔物モンスターに接近しないといけないってことか…

ついてきていた足音が止まったのを確認してから、起伏のほとんどない草原の中で、長く伸びた草の陰に隠れるようにして俺も姿勢を低くして、優子マメ達に小声で話しかける。

「もうすぐ魔物モンスターの感知範囲に入るみたいだ。
ここからは話し合った通り、俺の真後ろにシーホ、その後ろに優子マメの布陣で行く。
毒液の檻ベノムケージを俺の左右や前方に展開するするかもしれないから、俺の前に出たり左右にズレて動いたりしないでくれよ?OK?」

小声でみんなに話しかけると、誰も声を出すことなく頷いてくれた。

今後のことも考えれば、団体行動の訓練になる…とでも考えればいいかな…

「よし、合図をしたらシーホはこれに火炎撃フレアインパクトで火を付けて、魔物モンスターに向かって投げてくれ。
優子マメは誰か怪我したら治せるように、魔法を使う準備だけしておくこと。…それじゃ行こう。」

シーホの使える火炎撃フレアインパクトの射程は、まだ2mくらいしかないが、その短さを補えるようにボール状に丸めた毒蔦の塊を、いくつかストレージリングから取り出して渡しておいた。

火炎撃フレアインパクトの炎で毒蔦を燃やして投げれば、射程外からでも効果を出せると考えたからだ。
…ま、体の大きな陸草鰐グラスゲーター相手じゃ、嫌がらせか牽制くらいの効果しかないだろうけど、足止めくらいにはなるだろう。

俺たちは、なぜか一切動かない陸草鰐グラスゲーターへと、背の高い草に隠れるようにしながら慎重に近づいて行く。

…数分かけて、魔物モンスターまで100mくらいの所に何事もなく来る事が出来てしまった。
ちょうど真後ろから近づく形になったため、気が付かれていないだけだと思いたいが、陸草鰐グラスゲーターはまだ動かない。

(ナビさん、なんで動かないんだ?)

『推察情報。敵性体、陸草鰐グラスゲーターの前方に、防御結界の反応があります。そのため、陸草鰐グラスゲーターはこの防御結界に対して注視していると推察。こちらに反応しないものと思われます。』

前にナビさんは思考を読めないって聞いているから、あくまでも推察なんだろうけど…
ま、こちらに反応しないなら好都合だ。

このまま近づいて、毒液の檻ベノムケージで覆ってしまおう。

(ナビさん、いつも通り毒液の檻ベノムケージの展開範囲を陸草鰐グラスゲーターの周囲に設定してくれ。)

『要請受諾。範囲指定のため、42m前方へ移動して下さい。』

ナビさんの指示に沿って、先程までよりもさらに慎重に、音を立てないように移動していく。

『情報提示。範囲指定が完了しました。』

(停止。そのまま体勢を低くして待機。)

ハンドサインで後ろに指示を出してから、俺はゆっくり立ち上がって魔法を発動する。

「…毒液の檻ベノムケージ!」

GU…?GYA!…GURRR…

俺の声に反応した陸草鰐グラスゲーターが、振り向こうと頭を動かしたように見えた。
しかし、既に発動した毒液の檻ベノムケージ陸草鰐グラスゲーターの動きを制限しているため、少し動いただけで鼻先が毒液に触れてしまい、その痛みに悲鳴を上げることになる。
陸草鰐グラスゲーターは諦めたのか、そのまま唸り声を上げながら縮こまって動かなくなってしまった。

陸草鰐グラスゲーターの体に沿うように、ピッタリと展開した毒液の檻ベノムケージは、これまでで一番綺麗に決まったと思うが、それにしても呆気ない…

「シーホ、優子マメ、もう大丈夫だと思うけど、一応俺より前には出ないでくれ。」

「…もう終わったんですか?」

シーホが不安そうに聞いてくる。
あまりにも呆気なく終わったからな、俺も少し驚いているよ…

「多分ね。あいつが魔法を使えるなら別だけど、物理攻撃だけだったらもう動けないからね。」

『行動提案。毒液の檻ベノムケージの重ねがけを提案します。』

ナビさん、次からはもう少し早く言って欲しいかな?

「…念のため、毒液の檻ベノムケージ!」

ナビさんに言われるまま、魔法を重ねがけして、陸草鰐グラスゲーターを完全に抑え込んだ。
見た目には若干のやり過ぎ感があるけど、何が起きるか分からないからね。
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