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想い描いたその先にあるもの 4
「光流だって…。光流だって、俺のことは何とも思ってなかったじゃないか。メッセージだって来ないし、それこそ誕生日だって。彼女はちゃんと祝ってくれたのに光流からはお祝いの言葉すら無かった」
それは心からの言葉。
そうだ、光流だって俺を顧みなかったではないか。本当はもっと光流と会いたかった。光流に触れたかった。
光流に誕生日を祝って欲しかったし、色々な行事だって光流と過ごしたかった。
俺はどこで間違えたのだろう?
俺の言葉を聞いた静流は大きくため息を吐き、先ほどの秘書が持ってきた紙袋から何かを取り出す。
「これが何かわかるか?」
「それは。何故ここに?」
その箱を見て何故か父が驚きの顔を見せる。見覚えのある箱に困惑を隠せないようだ。
「送り返されましたから」
「でも確かに護に送ったはずです」
静流と父の会話が理解できない。
その時に気が付いてしまったのだ。
箱に貼られた宛名の字に。
「この字って。
開けてみても?」
躊躇うように箱を持ち、書かれた宛名の字を見る。元々貼ってあったであろう送り状の上に被せて貼られた送り状。それに書かれた字は手書きのものだったが、見覚えのある字だった。送り主は俺の名前だ。
無言のまま包装を解き箱を開ける。中から出てきたのは革靴。
俺の足にぴったりなサイズに驚き靴を箱から取り出す。そして、中から出てきたカードを見て自分の勘違いに気づいてしまったのだ。
〈なかなか会えないのでこちらに送ります。次に会う時に使っていてくれたら、僕はまだ護君を信じます〉
靴を取り出すと気付くことのできるようになっていたメッセージ。
光流の精一杯の意思表示。
「光流、言ってたよ。
既読は付くのにメッセージか来ないのは忙しいせいなんだろうって。
勉強の邪魔はしたくないから既読が付いてもメッセージが来ないのならこっちから送るのは控えるって。
オレにキャンセルの連絡が来るうちはちゃんと自分のことを想ってくれているはずだって」
静流から伝えられる光流の気持ち。
俺の事を想うからこそ送ることが出来なかったメッセージ。
そうだ、光流はそうやって気を回してしまうのだ。そして、そんな風にしたのは俺なのだ。
「お前のしたことをオレは許さない」
そして告げられる決別の言葉。
「弁解の余地もありません」
それしか言えなかった。
全ては俺の身勝手な行動が引き起こした事なのだ。
膝の上で拳を握り締める。
そうでもしていないと感情を抑えることが出来ない。
「光流君に会えますか?」
謝罪させてほしい、静流は首を横に振る。
「前提として挑発フェロモンを纏っている相手と会わせるつもりはない。
光流な、寝込む度に痩せていくんだ。
お前と一緒にいた頃着てた服は処分したよ。サイズが合わなくて着られなくなったんだ。
ボトムはベルトをしないと落ちるし、Tシャツは肩が出る。スーツはラインが変ってしまって作り直しだ。
それに、今は眠り続けてる」
その言葉に顔を上げて静流の表情を伺う。
「光流は休ませてるって言っただろ?
主治医に診てもらったが、急激なストレスによりヒートが早まったとの事だ。諸々の検査もしてもらったが多少の数値の乱れしか確認できない。
ただ今日起きるのか、明日起きるのか…。
前回が5日だったからそれ以上になるなら入院を勧められたよ」
光流の現状を知り息を飲む。
「大丈夫なのですか?」
俺の口から出たのは絞り出すような声。それが精一杯だった。
「前回は大丈夫だった。
でも前回大丈夫だったから今回も大丈夫とは断言できない、そう言われたよ」
「そんな…」
「そもそもこの婚約はどちらかに継続の意思が無くなった場合、速やかに解消すると決めてあったはずだが、光流より大切にしたい相手ができたなら何故そう言わなかった?」
告げられた内容に覚えは無かった。
父からは早く既成事実を作れ、番になれと急かされていたくらいだ。
「そんな話は知らない」
「親から聞いてないのか?」
父に冷ややかな視線を向けるとゴニョゴニョと何か言おうとするが要領を得ないため静流が話を続ける。
「小学生の頃からお前を縛りつけたようなものだ。恋愛感情なんて知らない小学生が〈婚約者〉と言われて物珍しさで受け入れたとしても、思春期を過ぎれば気持ちも変化する。特に光流は男性Ωだ。異性に惹かれた場合に強要してまで婚約の継続は望んでいなかった。
お前と光流はちゃんと関係を築いていたようだが〈婚約者〉の存在を示すことによって光流の安全を確保する事が最優先事項だったんだよ」
父にチラリと視線を向けると顔面蒼白になっている。父の独断で俺には伝えられなかった事実。
そんな事は知らない。
そんな事は聞いていない。
「光流はちゃんと理解していたよ。
この先、新しい出会いの中でお前が可愛い女の子と恋に落ちるかもしれない。自分は男性Ωだからその時はどうすることもできないだろうって。
ヒートを一緒に過ごしてしまえばお前を縛り付けることになる。だから結婚が決まるまでは一緒にヒートは過ごさない。
それでも自分を選んでくれた時に、その時に護にとって有用で在り続けるために学びを続けると」
静流の言葉だけが続く。
それは心からの言葉。
そうだ、光流だって俺を顧みなかったではないか。本当はもっと光流と会いたかった。光流に触れたかった。
光流に誕生日を祝って欲しかったし、色々な行事だって光流と過ごしたかった。
俺はどこで間違えたのだろう?
俺の言葉を聞いた静流は大きくため息を吐き、先ほどの秘書が持ってきた紙袋から何かを取り出す。
「これが何かわかるか?」
「それは。何故ここに?」
その箱を見て何故か父が驚きの顔を見せる。見覚えのある箱に困惑を隠せないようだ。
「送り返されましたから」
「でも確かに護に送ったはずです」
静流と父の会話が理解できない。
その時に気が付いてしまったのだ。
箱に貼られた宛名の字に。
「この字って。
開けてみても?」
躊躇うように箱を持ち、書かれた宛名の字を見る。元々貼ってあったであろう送り状の上に被せて貼られた送り状。それに書かれた字は手書きのものだったが、見覚えのある字だった。送り主は俺の名前だ。
無言のまま包装を解き箱を開ける。中から出てきたのは革靴。
俺の足にぴったりなサイズに驚き靴を箱から取り出す。そして、中から出てきたカードを見て自分の勘違いに気づいてしまったのだ。
〈なかなか会えないのでこちらに送ります。次に会う時に使っていてくれたら、僕はまだ護君を信じます〉
靴を取り出すと気付くことのできるようになっていたメッセージ。
光流の精一杯の意思表示。
「光流、言ってたよ。
既読は付くのにメッセージか来ないのは忙しいせいなんだろうって。
勉強の邪魔はしたくないから既読が付いてもメッセージが来ないのならこっちから送るのは控えるって。
オレにキャンセルの連絡が来るうちはちゃんと自分のことを想ってくれているはずだって」
静流から伝えられる光流の気持ち。
俺の事を想うからこそ送ることが出来なかったメッセージ。
そうだ、光流はそうやって気を回してしまうのだ。そして、そんな風にしたのは俺なのだ。
「お前のしたことをオレは許さない」
そして告げられる決別の言葉。
「弁解の余地もありません」
それしか言えなかった。
全ては俺の身勝手な行動が引き起こした事なのだ。
膝の上で拳を握り締める。
そうでもしていないと感情を抑えることが出来ない。
「光流君に会えますか?」
謝罪させてほしい、静流は首を横に振る。
「前提として挑発フェロモンを纏っている相手と会わせるつもりはない。
光流な、寝込む度に痩せていくんだ。
お前と一緒にいた頃着てた服は処分したよ。サイズが合わなくて着られなくなったんだ。
ボトムはベルトをしないと落ちるし、Tシャツは肩が出る。スーツはラインが変ってしまって作り直しだ。
それに、今は眠り続けてる」
その言葉に顔を上げて静流の表情を伺う。
「光流は休ませてるって言っただろ?
主治医に診てもらったが、急激なストレスによりヒートが早まったとの事だ。諸々の検査もしてもらったが多少の数値の乱れしか確認できない。
ただ今日起きるのか、明日起きるのか…。
前回が5日だったからそれ以上になるなら入院を勧められたよ」
光流の現状を知り息を飲む。
「大丈夫なのですか?」
俺の口から出たのは絞り出すような声。それが精一杯だった。
「前回は大丈夫だった。
でも前回大丈夫だったから今回も大丈夫とは断言できない、そう言われたよ」
「そんな…」
「そもそもこの婚約はどちらかに継続の意思が無くなった場合、速やかに解消すると決めてあったはずだが、光流より大切にしたい相手ができたなら何故そう言わなかった?」
告げられた内容に覚えは無かった。
父からは早く既成事実を作れ、番になれと急かされていたくらいだ。
「そんな話は知らない」
「親から聞いてないのか?」
父に冷ややかな視線を向けるとゴニョゴニョと何か言おうとするが要領を得ないため静流が話を続ける。
「小学生の頃からお前を縛りつけたようなものだ。恋愛感情なんて知らない小学生が〈婚約者〉と言われて物珍しさで受け入れたとしても、思春期を過ぎれば気持ちも変化する。特に光流は男性Ωだ。異性に惹かれた場合に強要してまで婚約の継続は望んでいなかった。
お前と光流はちゃんと関係を築いていたようだが〈婚約者〉の存在を示すことによって光流の安全を確保する事が最優先事項だったんだよ」
父にチラリと視線を向けると顔面蒼白になっている。父の独断で俺には伝えられなかった事実。
そんな事は知らない。
そんな事は聞いていない。
「光流はちゃんと理解していたよ。
この先、新しい出会いの中でお前が可愛い女の子と恋に落ちるかもしれない。自分は男性Ωだからその時はどうすることもできないだろうって。
ヒートを一緒に過ごしてしまえばお前を縛り付けることになる。だから結婚が決まるまでは一緒にヒートは過ごさない。
それでも自分を選んでくれた時に、その時に護にとって有用で在り続けるために学びを続けると」
静流の言葉だけが続く。
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