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after that
紗凪 4
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「留守電、入ってた?」
仕事中に席を外したボクにそう声をかけた大輝は心配そうな顔を見せたけれど、ボクが手にした缶コーヒーを見て少しだけ表情を緩ませる。
気にしてないふりをしながらも気になっていたのはボクも大輝も同じだったのだろう。
「入ってたよ」
大輝に缶コーヒーを渡し、自分の分はペットポトルのお茶をマグカップに注いだ後、「留守電だけじゃなくてメッセージも」と画面を見せる。
留守電には母からは電話に出ないことへの不満が入っていたけれど、電話をかけても出ないことを悟ったのだろう。留守電を入れる代わりにメッセージがいくつか入れられていた。
《貴哉君とのこと、紗羅の言ってることが本当なんじゃないですか?
だから紗羅が怒ってるんだと思います
ちゃんと説明してください》
《説明できない関係だから無視するんでしょ
メッセージくらい返しなさい》
《貴哉君がどこにいるのか教えなさい》
ボクの言葉では納得せず、姉の言葉だけを信じた一方的な言葉の数々は大輝の存在で癒された傷を少しずつ少しずつ広げていく。
貴哉に付けられた傷が、姉との関係を知ったことによって付けられた傷が。
ボクが好きだったと言ってくれた大輝の言葉で、ボクを大切にしてくれる大輝の態度で癒されたはずの傷が、母の言葉で再び開き、血を流し始める。
「ボクの言葉は信じてくれないんだよね、何言っても」
付き合っていないと言っても信じてもらえず、貴哉の居場所は知らないと言っても疑われてしまうのは、母の中でボクよりも姉の言葉の方が信じるに値するからだろう。
「お姉さんの言い方なんじゃないの?」
「それもあるんだろうけど、でもボクの言葉をもう少し聞いてくれてもいいと思うんだけど。
付き合ってたって、そんなふうに言える関係じゃなかったのにね」
諦めにも似た気持ちでそんな言葉を口にする。
付き合っていたと言えれば何かが変わったのかもしれない。
ボクは貴哉と付き合っていたと告げ、姉との関係はとっくに終わっていたのだから、ボクたちのことを認めて欲しいと言えたかもしれない。
同性ではあるけれど貴哉とこの先も一緒にいたいと告げ、許されないのならもう家には戻らないと自分の思いを伝えることができたかもしれない。
だけど現実はボクは姉のに代わりでしかなくて、その関係を大きな声で告げることもできない。そんな中途半端な関係は、貴哉が姉の元に向かった時に終わりを告げたのだからボクにはもう関係の無いことだ。
だから付き合っていたなんて言う必要は無いし、貴哉の連絡先だって転居先だって聞かれたところで答えられることは何も無い。
「あ、また」
そんなことを話しているとスマホの振動で着信に気付く。
だけど、どうせまた母からだろうと目にした画面には【紗羅】と表示されていて動きが止まる。
「お母さん?」
同じように予想した大輝に無言で画面を見せる。
「え、お姉さん?」
驚きを隠さないその声からは同じように動揺していることが伝わってくる。いずれ姉から連絡が来ることは覚悟していたけれど、それが今日だとは思っていなかったのは、ボクも大輝も同じだったのだろう。
通話ボタンを押すことができないまま留守電に繋がり、制限時間を超えたところで再び振動を始める。
きっとまた、姉の一方的な強い言葉が続いているのだろう。
「あれから、どうなってたんだろうね」
着信を知らせる画面を見ながらそんな言葉を口にする。
あの日、世界が終わらなかったことに安堵したのは貴哉が戻ってくる可能性があったからではなくて、大輝が側にいてくれたことと、これからも側にいられることへの安心感からだった。
貴哉が戻ってくるかもしれないと考えはしたけれど、だからといってあの部屋に戻る気は無かったし、戻りたいとも思わなかった。
それは大輝が受け入れてくれたせい。
姉の元に向かうと告げられてから不安な毎日を過ごし、触れられないことで自分はもう必要は無いのだと思い知らされた。
それまでボクを慈しんでいたのはボクを姉に見立てていたからで、本物に触れることができるのなら偽物は必要ないのだと現実を突きつけられた。
「会ってなかったのかな?」
静かになったスマホに留守電が入っていることを確認して、残された録音を聞いてみる。
『紗凪、電話に出なさいよっ!』
留守電に繋がったことで怒りを抑えることができなかったのだろう。
スピーカーモードにしたスマホからはボクに対する悪口とも取れる言葉と、貴哉と連絡を取れないことに対する不満が延々と続いていく。
どうして自分から貴哉を奪ったのか。
どうやって貴哉に取り入ったのか。
だけど、所詮自分の身代わりなのだから貴哉の居場所を教え、身を引くようにと言葉が続く。
『貴哉はお父さんになるんだから。
紗凪は貴哉のこと、お父さんにしてあげられないでしょ?』
そして、ボクを嘲る言葉が続いた後で告げられた言葉。
「お父さんになるって、子供のこと、嘘じゃなかったんだ?」
気になっていたけれど、確認をする術のなかった事柄が確定する。
子供を産むことができないという言葉に傷付くことはなかったし、お父さんにしてあげられないという言葉に対しても当たり前のことなのにとしか思えなかった。
そもそも貴哉と過ごすことで安心感を得てはいたけれど、側にいることで自分の孤独を埋めてはいたけれど、その関係が永遠に続くなんて甘いことは考えていなかった。
少しでも長く一緒にいられることは望んでいた。でも貴哉と添い遂げることができるとは思っていなかった。
ボクの家族に紹介をすることはできないし、貴哉の家族だって、紗羅の弟であるボクと貴哉が付き合うことを手放しで祝福することはないだろう。
だからあの噂を聞いた時に、独りで終わるよりも貴哉と共に終わることができれば孤独ではないなんて自分本位なことを考えた。
何度も不安を訴え、ボクから離れないようにと願い、その願いは叶えられると思っていた。
だけど、世界が終わるかもしれない時に貴哉が選んだのは姉の紗羅で、最後の時間を共に過ごしたふたりの間には新しい命が宿ったということなのだろう。
「奇跡、なのかな」
世界が終わることを覚悟して、それならふたりで過ごしたいと願ったふたりに訪れた奇跡。
自然妊娠は難しいと言われていたはずなのに、それなのに宿った命はふたりの絆が起こした奇跡なのかもしれない。
世界が終わるかもしれない時に、それぞれの終わりを迎えるのかもしれない時に会ってしまったら。
気持ちを残しながらも別れたふたりなのだから、最後の時に身体を重ねるのは当然の成り行きだろう。
願わくば、身体を重ねたまま、ふたりで繋がったまま悲しみも、苦しみも感じないまま終わりを迎えたい。
貴哉と姉はそう願ったのかもしれない。
だって、ボクだってそんなふうに思っていたから。
貴哉と身体を重ね、貴哉と繋がったまま終わりを迎えることができたら。
何も考えず、貴哉のことだけを感じて終わることができたら。
最後なのだから愛し、慈しんで欲しいなんて思わなかった。ただただ何も考えられないほどに蹂躙して、怖さも、悲しみも、愛されない虚しさも忘れさせれくれるだけでよかった。
そして、何も考えられなくなったまま終わりを迎えたいと思っていた。
これが、ボクの本音。
貴哉を愛していたからじゃない。
貴哉との永遠を望んだからじゃない。
貴哉が乱暴に抱いてくれたら、ボクを姉の身代わりとして鬱憤を晴らすように扱ってくれたら大輝と離れてしまったことも、大輝が彼女と過ごしていることも考える余裕がなくなるから。
だけど現実は独りで終わりを迎えることが怖くて、大輝を諦めることができなくて、ボクが独りで終わりを迎える前に少しだけふたりの仲を邪魔してやろうなんて浅ましいことを考えた。
世界が終わる時に想いが通じ合うなんて、そんな都合のいいことがあるなんて思ってもみなかったから、だから、最後の最後にボクの存在を覚えていて欲しいと願ってしまった。
「奇跡って、妊娠が?」
「そう。
一緒にいたいって気持ちが奇跡を起こしたのかもね」
ボクが大輝と一緒にいられるなんて、望みながらも諦めていてことが起こるくらいなのだから、姉が妊娠するという奇跡だって無いとは言い切れない。
もしかしたら、最後の最後に神様が姉に与えてくれた奇跡だったのかもしれない。
だけど、その奇跡は姉にとっては想定外の幸せなのかもしれないけれど、義兄にとっては悪夢のような奇跡でしかないだろう。
「でも、だったら何であの人のこと探してるのかな。
もしもあの時にできた子ならとっくに分かってたことだよな」
「そうなんだけど、でもお義兄さんの子ではないだろうし」
義兄から聞かされた話と浴びせられた言葉を思い出す度に気分が悪くなるせいで、ブロックしてからは思い出さないようにしていたけれど、こうなってしまうと義兄のことを思い出さないわけにはいかない。
紗柚を妊娠してからは姉との行為は無かったと、義兄はどんな気持ちでボクに告げたのだろう。
ボクと貴哉の関係を知った義兄の気持ちをボクが知る由もないけれど、ボクと貴哉の関係が姉の行動に干渉してないとは言い切れない。言い切れないどころか、確実に干渉しているのだろう。
もしかしたら、姉の妊娠の原因は僕にあるのだと逆恨みすらされているかもしれない。
「だから、あの人に会うためにひとりで来てたのか」
「そうなんだろうね」
「でも紗凪がいたらどうするつもりだったのかな?」
「それは、」
大輝の言葉に姉の行動を想像しながらその時の気持ちを探る。
送られてきたボクの写真を見た時。
貴哉とボクの関係に気付いた時。
姉はきっと、ボクに対してドス黒い気持ちを抱いただろう。
自分がいたはずの場所に納まるボクを見て、自分が手放したものの大きさを思い知ったのかもしれない。
最後を望んだのに最後にならなかったことを嘆き、ボクの元に戻った貴哉を諦めきれなかった姉は、自分の身に起きた奇跡に歓喜したのだろうか。
義兄の存在も、紗柚の存在も、固執していた汐勿の家さえも奇跡の前では取るに足りないものになってしまったのかもしれない。
仕事中に席を外したボクにそう声をかけた大輝は心配そうな顔を見せたけれど、ボクが手にした缶コーヒーを見て少しだけ表情を緩ませる。
気にしてないふりをしながらも気になっていたのはボクも大輝も同じだったのだろう。
「入ってたよ」
大輝に缶コーヒーを渡し、自分の分はペットポトルのお茶をマグカップに注いだ後、「留守電だけじゃなくてメッセージも」と画面を見せる。
留守電には母からは電話に出ないことへの不満が入っていたけれど、電話をかけても出ないことを悟ったのだろう。留守電を入れる代わりにメッセージがいくつか入れられていた。
《貴哉君とのこと、紗羅の言ってることが本当なんじゃないですか?
だから紗羅が怒ってるんだと思います
ちゃんと説明してください》
《説明できない関係だから無視するんでしょ
メッセージくらい返しなさい》
《貴哉君がどこにいるのか教えなさい》
ボクの言葉では納得せず、姉の言葉だけを信じた一方的な言葉の数々は大輝の存在で癒された傷を少しずつ少しずつ広げていく。
貴哉に付けられた傷が、姉との関係を知ったことによって付けられた傷が。
ボクが好きだったと言ってくれた大輝の言葉で、ボクを大切にしてくれる大輝の態度で癒されたはずの傷が、母の言葉で再び開き、血を流し始める。
「ボクの言葉は信じてくれないんだよね、何言っても」
付き合っていないと言っても信じてもらえず、貴哉の居場所は知らないと言っても疑われてしまうのは、母の中でボクよりも姉の言葉の方が信じるに値するからだろう。
「お姉さんの言い方なんじゃないの?」
「それもあるんだろうけど、でもボクの言葉をもう少し聞いてくれてもいいと思うんだけど。
付き合ってたって、そんなふうに言える関係じゃなかったのにね」
諦めにも似た気持ちでそんな言葉を口にする。
付き合っていたと言えれば何かが変わったのかもしれない。
ボクは貴哉と付き合っていたと告げ、姉との関係はとっくに終わっていたのだから、ボクたちのことを認めて欲しいと言えたかもしれない。
同性ではあるけれど貴哉とこの先も一緒にいたいと告げ、許されないのならもう家には戻らないと自分の思いを伝えることができたかもしれない。
だけど現実はボクは姉のに代わりでしかなくて、その関係を大きな声で告げることもできない。そんな中途半端な関係は、貴哉が姉の元に向かった時に終わりを告げたのだからボクにはもう関係の無いことだ。
だから付き合っていたなんて言う必要は無いし、貴哉の連絡先だって転居先だって聞かれたところで答えられることは何も無い。
「あ、また」
そんなことを話しているとスマホの振動で着信に気付く。
だけど、どうせまた母からだろうと目にした画面には【紗羅】と表示されていて動きが止まる。
「お母さん?」
同じように予想した大輝に無言で画面を見せる。
「え、お姉さん?」
驚きを隠さないその声からは同じように動揺していることが伝わってくる。いずれ姉から連絡が来ることは覚悟していたけれど、それが今日だとは思っていなかったのは、ボクも大輝も同じだったのだろう。
通話ボタンを押すことができないまま留守電に繋がり、制限時間を超えたところで再び振動を始める。
きっとまた、姉の一方的な強い言葉が続いているのだろう。
「あれから、どうなってたんだろうね」
着信を知らせる画面を見ながらそんな言葉を口にする。
あの日、世界が終わらなかったことに安堵したのは貴哉が戻ってくる可能性があったからではなくて、大輝が側にいてくれたことと、これからも側にいられることへの安心感からだった。
貴哉が戻ってくるかもしれないと考えはしたけれど、だからといってあの部屋に戻る気は無かったし、戻りたいとも思わなかった。
それは大輝が受け入れてくれたせい。
姉の元に向かうと告げられてから不安な毎日を過ごし、触れられないことで自分はもう必要は無いのだと思い知らされた。
それまでボクを慈しんでいたのはボクを姉に見立てていたからで、本物に触れることができるのなら偽物は必要ないのだと現実を突きつけられた。
「会ってなかったのかな?」
静かになったスマホに留守電が入っていることを確認して、残された録音を聞いてみる。
『紗凪、電話に出なさいよっ!』
留守電に繋がったことで怒りを抑えることができなかったのだろう。
スピーカーモードにしたスマホからはボクに対する悪口とも取れる言葉と、貴哉と連絡を取れないことに対する不満が延々と続いていく。
どうして自分から貴哉を奪ったのか。
どうやって貴哉に取り入ったのか。
だけど、所詮自分の身代わりなのだから貴哉の居場所を教え、身を引くようにと言葉が続く。
『貴哉はお父さんになるんだから。
紗凪は貴哉のこと、お父さんにしてあげられないでしょ?』
そして、ボクを嘲る言葉が続いた後で告げられた言葉。
「お父さんになるって、子供のこと、嘘じゃなかったんだ?」
気になっていたけれど、確認をする術のなかった事柄が確定する。
子供を産むことができないという言葉に傷付くことはなかったし、お父さんにしてあげられないという言葉に対しても当たり前のことなのにとしか思えなかった。
そもそも貴哉と過ごすことで安心感を得てはいたけれど、側にいることで自分の孤独を埋めてはいたけれど、その関係が永遠に続くなんて甘いことは考えていなかった。
少しでも長く一緒にいられることは望んでいた。でも貴哉と添い遂げることができるとは思っていなかった。
ボクの家族に紹介をすることはできないし、貴哉の家族だって、紗羅の弟であるボクと貴哉が付き合うことを手放しで祝福することはないだろう。
だからあの噂を聞いた時に、独りで終わるよりも貴哉と共に終わることができれば孤独ではないなんて自分本位なことを考えた。
何度も不安を訴え、ボクから離れないようにと願い、その願いは叶えられると思っていた。
だけど、世界が終わるかもしれない時に貴哉が選んだのは姉の紗羅で、最後の時間を共に過ごしたふたりの間には新しい命が宿ったということなのだろう。
「奇跡、なのかな」
世界が終わることを覚悟して、それならふたりで過ごしたいと願ったふたりに訪れた奇跡。
自然妊娠は難しいと言われていたはずなのに、それなのに宿った命はふたりの絆が起こした奇跡なのかもしれない。
世界が終わるかもしれない時に、それぞれの終わりを迎えるのかもしれない時に会ってしまったら。
気持ちを残しながらも別れたふたりなのだから、最後の時に身体を重ねるのは当然の成り行きだろう。
願わくば、身体を重ねたまま、ふたりで繋がったまま悲しみも、苦しみも感じないまま終わりを迎えたい。
貴哉と姉はそう願ったのかもしれない。
だって、ボクだってそんなふうに思っていたから。
貴哉と身体を重ね、貴哉と繋がったまま終わりを迎えることができたら。
何も考えず、貴哉のことだけを感じて終わることができたら。
最後なのだから愛し、慈しんで欲しいなんて思わなかった。ただただ何も考えられないほどに蹂躙して、怖さも、悲しみも、愛されない虚しさも忘れさせれくれるだけでよかった。
そして、何も考えられなくなったまま終わりを迎えたいと思っていた。
これが、ボクの本音。
貴哉を愛していたからじゃない。
貴哉との永遠を望んだからじゃない。
貴哉が乱暴に抱いてくれたら、ボクを姉の身代わりとして鬱憤を晴らすように扱ってくれたら大輝と離れてしまったことも、大輝が彼女と過ごしていることも考える余裕がなくなるから。
だけど現実は独りで終わりを迎えることが怖くて、大輝を諦めることができなくて、ボクが独りで終わりを迎える前に少しだけふたりの仲を邪魔してやろうなんて浅ましいことを考えた。
世界が終わる時に想いが通じ合うなんて、そんな都合のいいことがあるなんて思ってもみなかったから、だから、最後の最後にボクの存在を覚えていて欲しいと願ってしまった。
「奇跡って、妊娠が?」
「そう。
一緒にいたいって気持ちが奇跡を起こしたのかもね」
ボクが大輝と一緒にいられるなんて、望みながらも諦めていてことが起こるくらいなのだから、姉が妊娠するという奇跡だって無いとは言い切れない。
もしかしたら、最後の最後に神様が姉に与えてくれた奇跡だったのかもしれない。
だけど、その奇跡は姉にとっては想定外の幸せなのかもしれないけれど、義兄にとっては悪夢のような奇跡でしかないだろう。
「でも、だったら何であの人のこと探してるのかな。
もしもあの時にできた子ならとっくに分かってたことだよな」
「そうなんだけど、でもお義兄さんの子ではないだろうし」
義兄から聞かされた話と浴びせられた言葉を思い出す度に気分が悪くなるせいで、ブロックしてからは思い出さないようにしていたけれど、こうなってしまうと義兄のことを思い出さないわけにはいかない。
紗柚を妊娠してからは姉との行為は無かったと、義兄はどんな気持ちでボクに告げたのだろう。
ボクと貴哉の関係を知った義兄の気持ちをボクが知る由もないけれど、ボクと貴哉の関係が姉の行動に干渉してないとは言い切れない。言い切れないどころか、確実に干渉しているのだろう。
もしかしたら、姉の妊娠の原因は僕にあるのだと逆恨みすらされているかもしれない。
「だから、あの人に会うためにひとりで来てたのか」
「そうなんだろうね」
「でも紗凪がいたらどうするつもりだったのかな?」
「それは、」
大輝の言葉に姉の行動を想像しながらその時の気持ちを探る。
送られてきたボクの写真を見た時。
貴哉とボクの関係に気付いた時。
姉はきっと、ボクに対してドス黒い気持ちを抱いただろう。
自分がいたはずの場所に納まるボクを見て、自分が手放したものの大きさを思い知ったのかもしれない。
最後を望んだのに最後にならなかったことを嘆き、ボクの元に戻った貴哉を諦めきれなかった姉は、自分の身に起きた奇跡に歓喜したのだろうか。
義兄の存在も、紗柚の存在も、固執していた汐勿の家さえも奇跡の前では取るに足りないものになってしまったのかもしれない。
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