貴方の✕✕、やめます

第16話

女狐…と言った所でしょうか。

私はニッコリと笑うと、横で待っていた給仕に合図を送り
「では、今からお食事を運ばせて頂きます。さぁ入って」
と入り口から避けた。
給仕の者が3人ワゴンを引いて入っていく。
カチャカチャと食器を並べる音がして、先に2人が出てきた。
そして三人目…と思ったところで、ガッシャーンとワゴンが倒れる音がした。

すぐさま部屋を確認すると、出口付近でワゴンが倒れ、給仕はソファーの後ろでガタガタと震えている。
直ぐに駆け寄り
「どうしたの？大丈夫？」
と声を掛けると、私の方をゆっくり振り返りコクン頷いたものの足元を見る。
足？と思った時シュルっと布がこすれる音がした。
顔を上げ、この部屋で今みんながいる位置を把握すると、だいたい把握できた。

「さぁ、外に出ましょう。ワゴンは私が片すから。スベン」
「はいっ」
「彼女を」
「かしこまりました」
侍従に入ってもらい、給仕を連れて出てもらう。
多分、令嬢の近くでは動けないと思ったからだ。
それから私はワゴンを起こし、散らかった道具を拾い落とし物がないか周りを確認する。

すると突然、
「あの給仕、私の宝石を狙ったの。だからはたいたらこんなことを…」
イルデアス侯爵令嬢がそんな事を言い出した。
「ティスミル、何を言ってる」
「だってクー」
「その呼び方はやめろ」
結構な茶番をやろうとしているようだが、バカバカしいことこの上ない。