貴方の✕✕、やめます

第122話

「国王陛下に、ご挨拶申し上げます」
御前で、ラヴェ様が挨拶する中、私はお腹をかばいながらカーテシーをする。

このような場所に私がいることは、奇跡に近い。
私の横にいるのは王弟で、20歳年上の人。そして私は英雄の妻だった女で、愛人に夫を寝取られた石女のバツイチ。
女として最悪のレッテルを、この後ろにいる貴族たちに貼られた女が今、王弟陛下の妻として国王に挨拶している。
いやはや、本当に何が起こるかわからない人生を送っていると、自分でも思う。

「…リア。マリア？」
「は、はいっ」
「大丈夫か？」
「体を起こしてもいいのよ」
気づけば、王妃様が私に声をかけてくださっていたようで、ラヴェ様達に心配をかけてしまった。
「大丈夫でございます。まだ大きくなりかけでございますので…」
「でも、大変なことは知っているわ。無理をしないでね」
「はい。ありがとう存じます」
「イーギルとアルフォンスにとっては、初めての従兄弟だ。待ち遠しいだろ？」
「というか、弟以降、赤ちゃんを見ていないので楽しみです」
「俺は初めてなので…」
「アルフォンスも、急げよ」
「あ～～っ…叔父上が優越に浸ってる～」
ハッハッハッハッ…
ホッホッホッホッ…
王家の方たちの笑い声が響く。

「では私達はこれで」
ラヴェ様のその言葉とともに、もう一度礼を取ると、ラヴェ様はすぐに私を支えで歩き出す。
この後、並んでいた公爵達が国王陛下に挨拶を始め、正式に夜会が始まった。