この生の理

戒月冷音

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第100話

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「コレは剣術ではありません。剣を持っても弓や槍を持っても対応できる。
 珍しいもので言ったら、湾曲した剣でも大丈夫な動きです。
 それを続けようと思ったら、生半可な覚悟ではしないほうが自分の体のためです」
「俺の体?」

「はい。柔軟をしてもそれ相応の覚悟がなければ、この動きは体を壊します。
 自分の気の緩み1つで、腕の関節が抜けたりするんです」
「関節が抜ける?」
「はい。通常とは違う関節の動きをしますから、うまく噛み合わないと抜けるんです」
「…」

「コー爺は現役で、さっきの動きを今でも平気でやれます。
 それは、辺境に出る魔物に対応する為。
 何が出て来ても自分が迷いなく必ず倒す…そのために続けてきたものです」
「何が来ても…」
「迷いなく…」
アーサーとルーカス様が、渋い顔をする。

「お二人はそういうことが、ないでしょ」
「そういうこと?」
「戦う相手を、必ず殺さなければならないことです」
「こ、ころ⋯す?」
「はい。魔物は、殺すのが鉄則です。
 生かして懐くはずないのですから、殺さねば自分たちが餌となります」
「餌…」
「自分達が生きるために、僕達は辺境で魔獣を殺します。
 魔獣は自分たちが生きるために、食料を求めて人間を殺し、食料とします。
 そうやって、互いが生きている場所が辺境です」

「だから…迷いなくあの動きができるということか?」
ルーカス様が先にたどり着いた。
「ルーカス、どう言う事だ?」
「体を壊すってこと。動きに迷いが生まれれば、関節を壊す。
 剣に迷いがあれば、動きに負荷ががかる」
「あぁ~、負荷がかかれば、いずれ蓄積されて壊れるということか」
アーサーがやっと理解した。

理解が遅い!
そう思ったと同時に
「アーサー様、もう少しお早く理解して頂けると嬉しいのですが…」
「わたしも、少し疲れてきましたわ」
さすがに女性達が見学するには、時間が長く少し疲れていた。
「すみません。
 久しぶりにジョーと遊べたので、嬉しくなって時間を忘れていました」
「済まない」
「申し訳ない。こういうモノをやってみたいと思ったら…」
「前から新しいものに飛びつきやすい方でしたから、諦めております」
婚約の時から、尻に敷かれている感満載の、二組ではあるが女性が楽しそうで何よりだ。


少しすると、いつもの文官さんが顔を出し、皆で生徒会室に戻る。
そこには休憩してくださいとばかりに、紅茶とお菓子が準備してあって、紅茶ポットの際に流れるような字で
【鍛錬お疲れ様でした。ご休憩に…  ジョージ】
と書いてあった。
アーサーの監視をしているジョージさん。何から何までありがとう。
そう心でお礼を言った後、皆で美味しくいただきました。
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