知性を与えられた猫たちは何を見る?

ChamalSei

文字の大きさ
15 / 68
序章 知性を与えられた日

知性を与えられた猫たちは何を見る? 第15話

しおりを挟む
翌日、その日は朝からコタローのソフトウェアのアップグレードを予定していた。

セイくんがその準備をする間、私は家に届けられた抑制装置に見入ってた。小型のバングル型の装置を手に取り、私はその感触を確かめた。手首にはめてみると、シンプルだが、どこか威圧感がある。

「これが抑制装置…?」

バングルの表面は滑らかな黒い光沢を放ち、細い銀色のラインが静かに脈動しているようだった。

「とても軽いのね。重さを全然感じない。これがテレポートを止める装置…?」

そしてジョンから送られた抑制装置とは別にもうひとつ小さな箱があった。

「これは…?」



その時、セイくんの声が聞こえた。

「律佳ちゃん、準備できたよ」

部屋には初めて2匹の秘密に気づいたときのように、部屋の中央に円筒状の光が青く輝いて立ち上がり、その円筒状の光の中でコタローは宙に浮かんでいた。

と同時にジョンの声が聞こえた。

「ハードウェアの強化は成功したみたいだね。これで耐久性は大幅に向上した。素晴らしい仕事だ。だが、地球の技術だけでは補いきれない部分がある。」

「例えば?」

「このコタローが、敵対する異星人の技術を防ぐにはエネルギー効率をさらに最適化し、宇宙由来の素材を組み込む必要がある。今日、抑制装置とは別に届いた箱の中身だが、それは特殊なナノマテリアルだ。これをコタローに適用することで、三木さんが構築したフレームをさらに強化できる。」

私が慎重に箱を開けると、中には輝くような微粒子が詰まった小瓶が入っていた。

「これがナノマテリアル?」

「そうだ。特定の条件で活性化する自己組織化技術が組み込まれている。」

「具体的にはどう使うの?」

「コタローのフレームに塗布するだけで、自動的に最適化される。三木さんの作業を台無しにするつもりはないので安心してほしい。」

私はコタローを慎重に分解し、三木が強化したフレームの表面にナノマテリアルを塗布した。

「これで本当に変わるの?」

数秒後、塗布した箇所が淡い光を放ち始めた。

「…これは!」

ナノマテリアルが自己組織化を始め、フレーム全体に均一に広がっていく。その過程で、表面が滑らかで金属的な質感へと変化していった。
ジョンが続けた。

「今、ナノマテリアルがフレームと融合している。この結果、強度は3倍以上に、耐熱性と耐電性も大幅に向上することになる。君たちの会社と私たちの技術が合わさることで、君の力強い味方になるだろう。」

「頼もしくなっていくわね」

私はコタローの頭に手をのせて彼の顔を見ながらそう言った。

ジョンが続けて話す。

「あと抑制装置だが、カーボンファイバーとチタン合金をベースに作られている。軽量で耐久性が高い設計だ。」

私は抑制装置のタッチパネルに指を触れてみた。
タッチした瞬間、デバイスが微かに振動し、青白い光が腕から放射状に広がった。茶丸が驚いたようにキョロキョロとあたりを見回す。

「なんか今、空気がピリッとした感じがするよ!」

セイくんも耳を後ろに向けながら慎重に周囲を見渡した。

「この範囲内にいると、テレポートは無効化されるってことか。」

私は満足して頷きながら、タッチパネルで範囲を再調整した。

「使い方は意外と簡単ね。でも、このスイッチは何?」

ジョンが答える。

「それは緊急モードだ。手首を強く握ると緊急モードに入る。それで一時的に最大範囲が広がる。ただし、バッテリーの消費が激しいので注意が必要だ。」

私は実際に試してみた。

「こうやって…強く握ると…」

その瞬間、青白い光が一気に広がり、周囲が静寂に包まれた。

「すごい…。これで敵を抑え込めるのね。」

隣でアップグレードが完了したコタローがゆっくりと動き出した。動作音もほとんどなく、以前よりも滑らかな動きだった。

「コタロー、調子はどう?」

「動作は完璧です、律佳さん。新しい素材は非常に効率的です。」

茶丸が驚いたように声を上げた。

「なんか、前よりずっと強そうになったね!」

セイくんも感心して頷いた。

「見た目だけじゃなくて、本当に中身も進化してるみたいだね。」

コタローが続けて言った。

「新しい機能には骨伝導通信の強化、自立行動の効率化、そして緊急時のエネルギー回収システムも搭載しました。」

「どんどん高性能になっていくわねぇ?!」

「三木がこれを見たら何というかしら!?いつかジョンに会わせてあげたいわね」

「そんな日もあるかもしれないね。また何かあったら連絡してくれ。それでは私はこれで」

そう言って通信は途絶えた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される

clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。 状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

人質5歳の生存戦略! ―悪役王子はなんとか死ぬ気で生き延びたい!冤罪処刑はほんとムリぃ!―

ほしみ
ファンタジー
「え! ぼく、死ぬの!?」 前世、15歳で人生を終えたぼく。 目が覚めたら異世界の、5歳の王子様! けど、人質として大国に送られた危ない身分。 そして、夢で思い出してしまった最悪な事実。 「ぼく、このお話知ってる!!」 生まれ変わった先は、小説の中の悪役王子様!? このままだと、10年後に無実の罪であっさり処刑されちゃう!! 「むりむりむりむり、ぜったいにムリ!!」 生き延びるには、なんとか好感度を稼ぐしかない。 とにかく周りに気を使いまくって! 王子様たちは全力尊重! 侍女さんたちには迷惑かけない! ひたすら頑張れ、ぼく! ――猶予は後10年。 原作のお話は知ってる――でも、5歳の頭と体じゃうまくいかない! お菓子に惑わされて、勘違いで空回りして、毎回ドタバタのアタフタのアワアワ。 それでも、ぼくは諦めない。 だって、絶対の絶対に死にたくないからっ! 原作とはちょっと違う王子様たち、なんかびっくりな王様。 健気に奮闘する(ポンコツ)王子と、見守る人たち。 どうにか生き延びたい5才の、ほのぼのコミカル可愛いふわふわ物語。 (全年齢/ほのぼの/男性キャラ中心/嫌なキャラなし/1エピソード完結型/ほぼ毎日更新中)

冤罪で辺境に幽閉された第4王子

satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。 「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。 辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。

処理中です...