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第2章 境界線の向こう側
知性を与えられた猫たちは何を見る? 第25話
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数秒間の沈黙の後、ジョンは言った。
「次の任務だ」
さっきまでの重い口調とは異なったキビキビとした声に私たちは背を伸ばした。
「新たに調べてほしいことがある。ここ最近、各地でロボットの暴走や誤作動が相次いでいる。件数はそんなに多くないのだが、それらに共通しているのが、電気エネルギーに関係していることだ。」
電気エネルギーと聞いて、私のみならず2匹もコタローもビクッとした。
「暴走のパターンは2種類、まず、1つ目の暴走パターンだが、ロボットが指示無く勝手にそこで使われている無駄な電気量を調べている」
「何それ、それって何の被害もないよね」
茶丸が口を挟んだ。
「むしろ、それをロボットのオーナーに伝えるなら、逆にいいことに思えますが」
コタローもそれに同意する。
「いや、その調べた結果をオーナーに伝えたわけではない。何より、問題は、その行動は誰にも指示されてないってことなんだ。」
「いったい何のために・・?」
「それがわからない。それと同様のことが5件見つかっている。」
「ロボットが自発的に動いたってこと?」
「そう見えるな」
全員がしばらくの間、考え込んだ。
「そして2つめの暴走だ。清掃ロボットがいくつかの電力会社のデータセンターで勝手にデータを削除したという事件だ。」
「清掃ロボットが?どうやって?彼らにPCを触るような機能は備え付けられてないと思うんだけど」
「ロボットがPCにUSBを挿しこんでいる様子がカメラの映像にあった。それをどうやって入手したのか、そして何の目的なのかも不明だ」
「削除されたデータが何であるかはわかってるの?」
「ある特定の場所での異常な消費の記録などの他、エネルギー消費パターンに関するものなどだ」
「例えば、昨日のような?」
「そういったものも含めてだ」
特定の場所での異常な消費記録、これはトラグネスのエネルギー転送計画と結びつくかもしれないが、エネルギーの消費パターン?それは何だろう?トラグネスが関係しているのかしら?私は考え込んだ。
「暴走したロボットは、メーカーは異なるが、いずれもネクサーク社のAIチップを使っていることがわかった。タイプはまちまちだが製造年月日はどれも1年以内・・・。まずは近いうちにデータセンターへ行ってもらう。そこで調査をして欲しい。その後、ネクサーク社についても調査が必要だ。そこで作られたAIチップに何があるのか、それも調べてほしい」
「わかったわ」
わかったというものの、データセンターへ行って何を調べたらいいのだろう?私は悩みながらも通信を切った。
5月も半ばを過ぎ、陽気が続くなか、窓の外では半袖の人も多かった。
私は、空調の管理されたオフィスのデスクでモニタを見つめながら、今朝のジョンの話を思い出していた。
ロボットの暴走、無意味な自発的行動、消費パターン・・・そもそもトラグネスと関係あるのか?
その時、スマホが光るのを見た。AIが三木のメッセージを知らせてきた。「この後、開発室に来てほしい」とだけ。
そう言えば、一昨日、まだ話があるとか言っていたような・・・。
時計を見るとそろそろ休憩に入っていい時間だった。私は開発室へと向かった。
「この間の話の続きだ」
三木はデスクに向かい、引き出しを開けた。中から例の金属片を取り出す。
「実は、これに心当たりがある」
突然の発言に私は驚いた。
「心当たり?何か知ってるの?」
「いや、直接こいつを見たわけではないんだが・・・」
彼は私をうながして廊下へ出た。私はその後を追ってしぶしぶ喫煙室について行く。
彼はポケットから煙草を取り出し、火をつけながら話し始めた。
「この模様なんだが・・・俺が今のこの会社に入社する前の職場で見たことある。」
私は、思いもかけない手掛かりに心拍数が上がるのを感じた。
「前の会社はAIチップの製造、開発をしていた会社なんだが、どうもその・・・」
三木が頭をかきながら話す。
「なんか気に入らなくて辞めちまったんだが・・・。そこで見た資料や設計図に書かれていた模様がこれなんだ。間違いない。」
そう言って金属片の模様を私に見せる。
「その資料ではAIの行動を監視するとかいう理由をつけて、不必要なユーザーへの監視機能をつけたり・・・とにかく、怪しかった。そんなのが気分悪くて辞めたんだが。ま、それで気になって俺も調べてたわけだ」
私はまさか…という思いで尋ねた。
「それで、その会社の名前は?」
「ネクサーク社だ」
彼の言葉に一瞬固まる。
そして次の瞬間に私は興奮でアドレナリンが上昇するのを感じた。
繋がった!!
「次の任務だ」
さっきまでの重い口調とは異なったキビキビとした声に私たちは背を伸ばした。
「新たに調べてほしいことがある。ここ最近、各地でロボットの暴走や誤作動が相次いでいる。件数はそんなに多くないのだが、それらに共通しているのが、電気エネルギーに関係していることだ。」
電気エネルギーと聞いて、私のみならず2匹もコタローもビクッとした。
「暴走のパターンは2種類、まず、1つ目の暴走パターンだが、ロボットが指示無く勝手にそこで使われている無駄な電気量を調べている」
「何それ、それって何の被害もないよね」
茶丸が口を挟んだ。
「むしろ、それをロボットのオーナーに伝えるなら、逆にいいことに思えますが」
コタローもそれに同意する。
「いや、その調べた結果をオーナーに伝えたわけではない。何より、問題は、その行動は誰にも指示されてないってことなんだ。」
「いったい何のために・・?」
「それがわからない。それと同様のことが5件見つかっている。」
「ロボットが自発的に動いたってこと?」
「そう見えるな」
全員がしばらくの間、考え込んだ。
「そして2つめの暴走だ。清掃ロボットがいくつかの電力会社のデータセンターで勝手にデータを削除したという事件だ。」
「清掃ロボットが?どうやって?彼らにPCを触るような機能は備え付けられてないと思うんだけど」
「ロボットがPCにUSBを挿しこんでいる様子がカメラの映像にあった。それをどうやって入手したのか、そして何の目的なのかも不明だ」
「削除されたデータが何であるかはわかってるの?」
「ある特定の場所での異常な消費の記録などの他、エネルギー消費パターンに関するものなどだ」
「例えば、昨日のような?」
「そういったものも含めてだ」
特定の場所での異常な消費記録、これはトラグネスのエネルギー転送計画と結びつくかもしれないが、エネルギーの消費パターン?それは何だろう?トラグネスが関係しているのかしら?私は考え込んだ。
「暴走したロボットは、メーカーは異なるが、いずれもネクサーク社のAIチップを使っていることがわかった。タイプはまちまちだが製造年月日はどれも1年以内・・・。まずは近いうちにデータセンターへ行ってもらう。そこで調査をして欲しい。その後、ネクサーク社についても調査が必要だ。そこで作られたAIチップに何があるのか、それも調べてほしい」
「わかったわ」
わかったというものの、データセンターへ行って何を調べたらいいのだろう?私は悩みながらも通信を切った。
5月も半ばを過ぎ、陽気が続くなか、窓の外では半袖の人も多かった。
私は、空調の管理されたオフィスのデスクでモニタを見つめながら、今朝のジョンの話を思い出していた。
ロボットの暴走、無意味な自発的行動、消費パターン・・・そもそもトラグネスと関係あるのか?
その時、スマホが光るのを見た。AIが三木のメッセージを知らせてきた。「この後、開発室に来てほしい」とだけ。
そう言えば、一昨日、まだ話があるとか言っていたような・・・。
時計を見るとそろそろ休憩に入っていい時間だった。私は開発室へと向かった。
「この間の話の続きだ」
三木はデスクに向かい、引き出しを開けた。中から例の金属片を取り出す。
「実は、これに心当たりがある」
突然の発言に私は驚いた。
「心当たり?何か知ってるの?」
「いや、直接こいつを見たわけではないんだが・・・」
彼は私をうながして廊下へ出た。私はその後を追ってしぶしぶ喫煙室について行く。
彼はポケットから煙草を取り出し、火をつけながら話し始めた。
「この模様なんだが・・・俺が今のこの会社に入社する前の職場で見たことある。」
私は、思いもかけない手掛かりに心拍数が上がるのを感じた。
「前の会社はAIチップの製造、開発をしていた会社なんだが、どうもその・・・」
三木が頭をかきながら話す。
「なんか気に入らなくて辞めちまったんだが・・・。そこで見た資料や設計図に書かれていた模様がこれなんだ。間違いない。」
そう言って金属片の模様を私に見せる。
「その資料ではAIの行動を監視するとかいう理由をつけて、不必要なユーザーへの監視機能をつけたり・・・とにかく、怪しかった。そんなのが気分悪くて辞めたんだが。ま、それで気になって俺も調べてたわけだ」
私はまさか…という思いで尋ねた。
「それで、その会社の名前は?」
「ネクサーク社だ」
彼の言葉に一瞬固まる。
そして次の瞬間に私は興奮でアドレナリンが上昇するのを感じた。
繋がった!!
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