知性を与えられた猫たちは何を見る?

ChamalSei

文字の大きさ
25 / 68
第2章 境界線の向こう側

知性を与えられた猫たちは何を見る? 第25話

しおりを挟む
数秒間の沈黙の後、ジョンは言った。

「次の任務だ」

さっきまでの重い口調とは異なったキビキビとした声に私たちは背を伸ばした。

「新たに調べてほしいことがある。ここ最近、各地でロボットの暴走や誤作動が相次いでいる。件数はそんなに多くないのだが、それらに共通しているのが、電気エネルギーに関係していることだ。」

電気エネルギーと聞いて、私のみならず2匹もコタローもビクッとした。

「暴走のパターンは2種類、まず、1つ目の暴走パターンだが、ロボットが指示無く勝手にそこで使われている無駄な電気量を調べている」

「何それ、それって何の被害もないよね」

茶丸が口を挟んだ。

「むしろ、それをロボットのオーナーに伝えるなら、逆にいいことに思えますが」

コタローもそれに同意する。

「いや、その調べた結果をオーナーに伝えたわけではない。何より、問題は、その行動は誰にも指示されてないってことなんだ。」

「いったい何のために・・?」

「それがわからない。それと同様のことが5件見つかっている。」

「ロボットが自発的に動いたってこと?」

「そう見えるな」

全員がしばらくの間、考え込んだ。

「そして2つめの暴走だ。清掃ロボットがいくつかの電力会社のデータセンターで勝手にデータを削除したという事件だ。」

「清掃ロボットが?どうやって?彼らにPCを触るような機能は備え付けられてないと思うんだけど」

「ロボットがPCにUSBを挿しこんでいる様子がカメラの映像にあった。それをどうやって入手したのか、そして何の目的なのかも不明だ」

「削除されたデータが何であるかはわかってるの?」

「ある特定の場所での異常な消費の記録などの他、エネルギー消費パターンに関するものなどだ」

「例えば、昨日のような?」

「そういったものも含めてだ」

特定の場所での異常な消費記録、これはトラグネスのエネルギー転送計画と結びつくかもしれないが、エネルギーの消費パターン?それは何だろう?トラグネスが関係しているのかしら?私は考え込んだ。

「暴走したロボットは、メーカーは異なるが、いずれもネクサーク社のAIチップを使っていることがわかった。タイプはまちまちだが製造年月日はどれも1年以内・・・。まずは近いうちにデータセンターへ行ってもらう。そこで調査をして欲しい。その後、ネクサーク社についても調査が必要だ。そこで作られたAIチップに何があるのか、それも調べてほしい」

「わかったわ」

わかったというものの、データセンターへ行って何を調べたらいいのだろう?私は悩みながらも通信を切った。

5月も半ばを過ぎ、陽気が続くなか、窓の外では半袖の人も多かった。
私は、空調の管理されたオフィスのデスクでモニタを見つめながら、今朝のジョンの話を思い出していた。
ロボットの暴走、無意味な自発的行動、消費パターン・・・そもそもトラグネスと関係あるのか?

その時、スマホが光るのを見た。AIが三木のメッセージを知らせてきた。「この後、開発室に来てほしい」とだけ。
そう言えば、一昨日、まだ話があるとか言っていたような・・・。
時計を見るとそろそろ休憩に入っていい時間だった。私は開発室へと向かった。

「この間の話の続きだ」

三木はデスクに向かい、引き出しを開けた。中から例の金属片を取り出す。

「実は、これに心当たりがある」

突然の発言に私は驚いた。

「心当たり?何か知ってるの?」

「いや、直接こいつを見たわけではないんだが・・・」

彼は私をうながして廊下へ出た。私はその後を追ってしぶしぶ喫煙室について行く。

彼はポケットから煙草を取り出し、火をつけながら話し始めた。

「この模様なんだが・・・俺が今のこの会社に入社する前の職場で見たことある。」

私は、思いもかけない手掛かりに心拍数が上がるのを感じた。

「前の会社はAIチップの製造、開発をしていた会社なんだが、どうもその・・・」

三木が頭をかきながら話す。

「なんか気に入らなくて辞めちまったんだが・・・。そこで見た資料や設計図に書かれていた模様がこれなんだ。間違いない。」

そう言って金属片の模様を私に見せる。

「その資料ではAIの行動を監視するとかいう理由をつけて、不必要なユーザーへの監視機能をつけたり・・・とにかく、怪しかった。そんなのが気分悪くて辞めたんだが。ま、それで気になって俺も調べてたわけだ」

私はまさか…という思いで尋ねた。

「それで、その会社の名前は?」

「ネクサーク社だ」

彼の言葉に一瞬固まる。

そして次の瞬間に私は興奮でアドレナリンが上昇するのを感じた。

繋がった!!
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

ビキニに恋した男

廣瀬純七
SF
ビキニを着たい男がビキニが似合う女性の体になる話

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

俺だけ毎日チュートリアルで報酬無双だけどもしかしたら世界の敵になったかもしれない

宍戸亮
ファンタジー
朝起きたら『チュートリアル 起床』という謎の画面が出現。怪訝に思いながらもチュートリアルをクリアしていき、報酬を貰う。そして近い未来、世界が一新する出来事が起こり、主人公・花房 萌(はなぶさ はじめ)の人生の歯車が狂いだす。 不意に開かれるダンジョンへのゲート。その奥には常人では決して踏破できない存在が待ち受け、萌の体は凶刃によって裂かれた。 そしてチュートリアルが発動し、復活。殺される。復活。殺される。気が狂いそうになる輪廻の果て、萌は光明を見出し、存在を継承する事になった。 帰還した後、急速に馴染んでいく新世界。新しい学園への編入。試験。新たなダンジョン。 そして邂逅する謎の組織。 萌の物語が始まる。

冤罪で辺境に幽閉された第4王子

satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。 「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。 辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。

処理中です...