34 / 68
第2章 境界線の向こう側
知性を与えられた猫たちは何を見る? 第34話
しおりを挟む
三木がSNSでメッセージを送ってきた。
「朗報だ」
「何?」
「秋月さんの行きつけのカフェで彼が電話で話すのを盗み聞きした」
「!」
「『ならば、長塚変電所の件は計画どおり進行中ということですね。6月28日に問題は解決する。時間は、深夜11時。なるほど、ありがとうございます』そう言ってた」
「やはり!」
「いっそ、秋月さんを人質にとってしまうか?」
三木が言うと本気か冗談かわからない。
「それは、もうちょっと先にとっておきましょう」
と私は返事しておいた。
当日は日中も曇り空でうっとおしい天気だった。空には厚い雲が見られ、今にも降りだしそうである。夏も近いというのに、肌寒さを覚えた。
夕飯を食べた後、私達一行は長塚変電所へ向かう。
辺りは静まり返り、虫の声も聞こえない。巨大な送電塔の姿が薄暗いライトの中に浮かび上がり、無機質な影を地面に落としていた。
巨大な変圧器が低い唸り声を上げ、地上施設は異様な雰囲気を醸し出していた。私達はフェンスを越えて敷地内に潜入した。
私はタブレットを操作し、フェンスのロックを静かに解除した。
「鮮やかなもんだな」
三木が後ろで言う。
「どうってことないわよ」
施設のドア近くでセイくんが独り言のように言う。
「まず、セキュリティカメラを無効化して、その後、建物のドアの電子キーを解錠する。」
数分後、苦も無くセイくんが
「これでOK」
と言って私を見上げた。
私がそうっとドアを開けるとキーッと金属の軋む音がした。
建物の中に入るとその隅に設置された重厚な鉄扉が目に入った。開けるとその奥には地下へと続く階段が見えた。
地下施設の狭い通路を奥へと進むと薄暗い通路の奥に青白いライトが揺れるように照らされ、動くのが見えた。
「気を付けて!巡回用のセキュリティロボットだ!カメラに映ったら一発でアウトだ!」
セイくんがそう注意するのを聞き、私達は慌てて隠れるところを探した。
「こっちへ!」
廊下を曲がった脇道に身を潜める。
モーターと車輪の動く音が次第に近付いてくる。
私はその音が近づくにつれ、自分の心臓の音も高鳴り、気付かれるのではないかと、胸を押さえた。
ロボットは円柱の頭の部分にスポットライトとカメラらしきものがあり、車輪のような足でフロアを移動していた。ライトがすぐ近くを照らし、息を呑んだ。
こっちに来ませんように、と願いながら片目をつぶって様子を覗う。
やがて、ロボットが過ぎ去っていくのを確認した私達はホッと息をつく。
そして、改めて私は辺りを見回した。
真っ直ぐ続く廊下のところどころに右へ左へと曲がり角がある。これではどこへ進めばいいのかわからない。まるで迷路のようだ。
三木が
「送電システムの操作をするならおそらく制御室のはずだが、・・・どこだ?」
と呟く。
「とりあえず、進んでみましょう」
と私は促した。
いくつかドアがや別の通路があったが、それらしきドアは見つからない。
廊下の突き当たりまで来て
「まずは右へ」
と、進み始めたが、その時、前方に巡回ロボットの姿が目に入った。
「ヤバい!巡回ロボットだ!」
慌てて引き返すが間に合わない。
鋭い警報が鳴り響いた。
ロボットが車輪の回転を早め、高速で近づいてくる。カメラの赤い光が鋭く光る。
私達は走り出した。が、前からも複数のロボットが警報を聞きつけ、こちらへ動き出すのが見える。
セイくんが立ち止まり、端末を取り出す。
「このロボットの制御システムにアクセスする!」
そう言って操作し始めた。画面に複雑なコードが次々と表示される。
「急いで!」
私は半ば悲鳴を上げた。
セイくんが落ち着いた様子で
「これだ!」
と呟く。それと同時にロボットが急に停止し、警告音が途切れ、静寂が戻った。
茶丸が振り返り、
「やったね?もう追ってこない?」
と尋ねる。
セイくんは
「今の状態がどれだけ続くかわからない!今のうちに逃げよう!」
と皆に呼び掛ける。
「まずは制御室のドアを探さなきゃ」
そう言って駆け出そうとする2匹とコタローを私は慌てて止めた。
「ダメよ!行き先もわからずに動き回っては、またロボットに追いかけられてしまうわ」
とは言え、どうすれば…。
「朗報だ」
「何?」
「秋月さんの行きつけのカフェで彼が電話で話すのを盗み聞きした」
「!」
「『ならば、長塚変電所の件は計画どおり進行中ということですね。6月28日に問題は解決する。時間は、深夜11時。なるほど、ありがとうございます』そう言ってた」
「やはり!」
「いっそ、秋月さんを人質にとってしまうか?」
三木が言うと本気か冗談かわからない。
「それは、もうちょっと先にとっておきましょう」
と私は返事しておいた。
当日は日中も曇り空でうっとおしい天気だった。空には厚い雲が見られ、今にも降りだしそうである。夏も近いというのに、肌寒さを覚えた。
夕飯を食べた後、私達一行は長塚変電所へ向かう。
辺りは静まり返り、虫の声も聞こえない。巨大な送電塔の姿が薄暗いライトの中に浮かび上がり、無機質な影を地面に落としていた。
巨大な変圧器が低い唸り声を上げ、地上施設は異様な雰囲気を醸し出していた。私達はフェンスを越えて敷地内に潜入した。
私はタブレットを操作し、フェンスのロックを静かに解除した。
「鮮やかなもんだな」
三木が後ろで言う。
「どうってことないわよ」
施設のドア近くでセイくんが独り言のように言う。
「まず、セキュリティカメラを無効化して、その後、建物のドアの電子キーを解錠する。」
数分後、苦も無くセイくんが
「これでOK」
と言って私を見上げた。
私がそうっとドアを開けるとキーッと金属の軋む音がした。
建物の中に入るとその隅に設置された重厚な鉄扉が目に入った。開けるとその奥には地下へと続く階段が見えた。
地下施設の狭い通路を奥へと進むと薄暗い通路の奥に青白いライトが揺れるように照らされ、動くのが見えた。
「気を付けて!巡回用のセキュリティロボットだ!カメラに映ったら一発でアウトだ!」
セイくんがそう注意するのを聞き、私達は慌てて隠れるところを探した。
「こっちへ!」
廊下を曲がった脇道に身を潜める。
モーターと車輪の動く音が次第に近付いてくる。
私はその音が近づくにつれ、自分の心臓の音も高鳴り、気付かれるのではないかと、胸を押さえた。
ロボットは円柱の頭の部分にスポットライトとカメラらしきものがあり、車輪のような足でフロアを移動していた。ライトがすぐ近くを照らし、息を呑んだ。
こっちに来ませんように、と願いながら片目をつぶって様子を覗う。
やがて、ロボットが過ぎ去っていくのを確認した私達はホッと息をつく。
そして、改めて私は辺りを見回した。
真っ直ぐ続く廊下のところどころに右へ左へと曲がり角がある。これではどこへ進めばいいのかわからない。まるで迷路のようだ。
三木が
「送電システムの操作をするならおそらく制御室のはずだが、・・・どこだ?」
と呟く。
「とりあえず、進んでみましょう」
と私は促した。
いくつかドアがや別の通路があったが、それらしきドアは見つからない。
廊下の突き当たりまで来て
「まずは右へ」
と、進み始めたが、その時、前方に巡回ロボットの姿が目に入った。
「ヤバい!巡回ロボットだ!」
慌てて引き返すが間に合わない。
鋭い警報が鳴り響いた。
ロボットが車輪の回転を早め、高速で近づいてくる。カメラの赤い光が鋭く光る。
私達は走り出した。が、前からも複数のロボットが警報を聞きつけ、こちらへ動き出すのが見える。
セイくんが立ち止まり、端末を取り出す。
「このロボットの制御システムにアクセスする!」
そう言って操作し始めた。画面に複雑なコードが次々と表示される。
「急いで!」
私は半ば悲鳴を上げた。
セイくんが落ち着いた様子で
「これだ!」
と呟く。それと同時にロボットが急に停止し、警告音が途切れ、静寂が戻った。
茶丸が振り返り、
「やったね?もう追ってこない?」
と尋ねる。
セイくんは
「今の状態がどれだけ続くかわからない!今のうちに逃げよう!」
と皆に呼び掛ける。
「まずは制御室のドアを探さなきゃ」
そう言って駆け出そうとする2匹とコタローを私は慌てて止めた。
「ダメよ!行き先もわからずに動き回っては、またロボットに追いかけられてしまうわ」
とは言え、どうすれば…。
6
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件
さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。
数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、
今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、
わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。
彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。
それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。
今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。
「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」
「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」
「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」
「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」
命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!?
順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場――
ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。
これは――
【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と
【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、
“甘くて逃げ場のない生活”の物語。
――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。
※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される
clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。
状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
人質5歳の生存戦略! ―悪役王子はなんとか死ぬ気で生き延びたい!冤罪処刑はほんとムリぃ!―
ほしみ
ファンタジー
「え! ぼく、死ぬの!?」
前世、15歳で人生を終えたぼく。
目が覚めたら異世界の、5歳の王子様!
けど、人質として大国に送られた危ない身分。
そして、夢で思い出してしまった最悪な事実。
「ぼく、このお話知ってる!!」
生まれ変わった先は、小説の中の悪役王子様!?
このままだと、10年後に無実の罪であっさり処刑されちゃう!!
「むりむりむりむり、ぜったいにムリ!!」
生き延びるには、なんとか好感度を稼ぐしかない。
とにかく周りに気を使いまくって!
王子様たちは全力尊重!
侍女さんたちには迷惑かけない!
ひたすら頑張れ、ぼく!
――猶予は後10年。
原作のお話は知ってる――でも、5歳の頭と体じゃうまくいかない!
お菓子に惑わされて、勘違いで空回りして、毎回ドタバタのアタフタのアワアワ。
それでも、ぼくは諦めない。
だって、絶対の絶対に死にたくないからっ!
原作とはちょっと違う王子様たち、なんかびっくりな王様。
健気に奮闘する(ポンコツ)王子と、見守る人たち。
どうにか生き延びたい5才の、ほのぼのコミカル可愛いふわふわ物語。
(全年齢/ほのぼの/男性キャラ中心/嫌なキャラなし/1エピソード完結型/ほぼ毎日更新中)
冤罪で辺境に幽閉された第4王子
satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。
「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。
辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる