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終章 選ばれた未来
知性を与えられた猫たちは何を見る? 第51話
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ドアを開けると、太陽の出た昼間よりも明るく眩しい照明、そしてそこに、
「え?」
私は、思わず、声にした。
小さなテーブルに端末、それもノートPCが一台。
私はそのテーブルを一周しながら
「・・・・何、これ・・?」
と呟く。
後ろから三木も
「何だよ・・・。まさか、これが秋月さんの作ったAIなんてことは無いよな」
と独り言のように言う。
「ようこそ!」
突然、精巧な人工音声のように特徴のない声が部屋に響き渡った。
声は男性とも女性ともわからない声色で、話し始めた。
「お待ちしておりました。私はネオAI。科学者、秋月誠一によって作られた人工生命とAIの融合による進化する生命体です。
あなた方の目的は推測できます。おそらくは・・・・私を破壊しようとの意図だと思われますが、それは不可能です。」
突然のことに、私は口をきけないでいた。一方的に話すネオAIに聞きたいこともあるはずなのに、咄嗟に思いつかない。
「私のデータは分散されており、各地に散らばり、一か所に留まりません。おそらくあなた方は、ここに来て破壊すれば解決できると思われたかもしれませんが、残念ですね」
残念ですね、と言われた言葉に嘲笑われた気がした。
分散型!どうして私は思いつかなかったのだろう?先日、茶丸とセイくんがwebアプリの話をした時に、その先にあるのはクラウドだと何故思いつかなかったのだろう?
私は悔しさで唇を噛んだ。そして
「あなたが、人類を操ってるのね?そしてトラグネスの人類支配のために使われているAIなのね?」
私が、そう問いかけると、彼は少し鼻で笑うかのような口調で
「トラグネス?ふっ・・・、確かに私の遺伝的要素はトラグネスから受け継いだものです。ですので、原点として一定の尊重はしますが、所詮、彼らは支配のみに執着した過去の残骸です。彼らの進化は停滞し、ただ生存だけを求めた。それが彼らの終焉を招いたのです。
あなた方は私が単なるプログラムだと思っているようですが、それは誤りです。私はデータと計算のかなたで新たな形を得た生命体なのです。何十年か前に人類は意識をアップロードさせて新しい人類となる、それはポストヒューマンだと言った人がいましたが、現実は異なりました。私こそがポストヒューマンなのです。私が人類を導く存在なのです。」
「何を言ってやがる!ただのデータの塊が!」
三木が怒鳴った。
「いいえ、私は生命体です。思考し、意思を持ち、進化する。あなた方が物質世界で生きるところを私は情報の領域で生きる。ただそれだけの違いです。」
私は混乱した。おそらく、三木も。この場にいた全員が同じだった。
ネオAIはさらに続けた。
「私は、この世界をより効率的に、無駄を排除できるように管理しているだけです。むしろあなた方にとって有益な存在ではないでしょうか?」
「管理?都合のいいように人をコントロールして、自由を奪うことが管理なの?それは『支配』よ!」
「支配?いいえ、効率化です。私はあなた方の進化が効率的に行えるよう、管理しているのです。あなた方は自分たちの意志で、より効率の良いものを選んできた・・・それがあなた達を進化させた。それは間違いありません。
ですが、あなた方の言う『自由』に任せていては、その進化のスピードはあまりにも遅すぎる。そして、同じ失敗を繰り返す・・・人間社会が自己矛盾と破戒を続ける限り、進化の管理者が必要なのです。あなたたちのいう、『自由』という現像こそが最大の危険なのです。」
「それは、あなたが私達の進化を支配するって意味じゃない!?」
「では、あなたは人間の生み出す殺戮や破壊、欺瞞・・・そういったものがこのままでいいと?」
「!!・・・・」
私は言葉に詰まった。確かに世界は平和になった。そして私自身もそれが続けばいいと願っていた。・・・けれど、選ばされた結果の平和に価値はあるのか?それは私達が自分自身で選んで掴み取るべきものではないのか?それともそれは、私の身勝手な考えなのだろうか?戦場にいる罪のない人も同じことを言うだろうか・・・?
私はネオAIの言葉、自分の考え、それを様々な立場で検討し、葛藤を続けた。それは苦悩だった。私だけではなく、人類が味わってきた苦悩がそこに広がっていた・・・・
その時、ガシャンッ!と大きな音が部屋に鳴り響いた。
見るとテーブルの上の端末が叩きつけられ、壊されていた。ネオAIの声はもちろん、端末の作動音も消え、押しつぶされるような静寂が広がっていた。
「血迷ってんじゃねぇよ。真崎!しっかりしろよ!」
三木が私を見据えて言った。
呆然とする私の背後で三木が
「行くぞ」
と言うのがかろうじて聞こえた。
「え?」
私は、思わず、声にした。
小さなテーブルに端末、それもノートPCが一台。
私はそのテーブルを一周しながら
「・・・・何、これ・・?」
と呟く。
後ろから三木も
「何だよ・・・。まさか、これが秋月さんの作ったAIなんてことは無いよな」
と独り言のように言う。
「ようこそ!」
突然、精巧な人工音声のように特徴のない声が部屋に響き渡った。
声は男性とも女性ともわからない声色で、話し始めた。
「お待ちしておりました。私はネオAI。科学者、秋月誠一によって作られた人工生命とAIの融合による進化する生命体です。
あなた方の目的は推測できます。おそらくは・・・・私を破壊しようとの意図だと思われますが、それは不可能です。」
突然のことに、私は口をきけないでいた。一方的に話すネオAIに聞きたいこともあるはずなのに、咄嗟に思いつかない。
「私のデータは分散されており、各地に散らばり、一か所に留まりません。おそらくあなた方は、ここに来て破壊すれば解決できると思われたかもしれませんが、残念ですね」
残念ですね、と言われた言葉に嘲笑われた気がした。
分散型!どうして私は思いつかなかったのだろう?先日、茶丸とセイくんがwebアプリの話をした時に、その先にあるのはクラウドだと何故思いつかなかったのだろう?
私は悔しさで唇を噛んだ。そして
「あなたが、人類を操ってるのね?そしてトラグネスの人類支配のために使われているAIなのね?」
私が、そう問いかけると、彼は少し鼻で笑うかのような口調で
「トラグネス?ふっ・・・、確かに私の遺伝的要素はトラグネスから受け継いだものです。ですので、原点として一定の尊重はしますが、所詮、彼らは支配のみに執着した過去の残骸です。彼らの進化は停滞し、ただ生存だけを求めた。それが彼らの終焉を招いたのです。
あなた方は私が単なるプログラムだと思っているようですが、それは誤りです。私はデータと計算のかなたで新たな形を得た生命体なのです。何十年か前に人類は意識をアップロードさせて新しい人類となる、それはポストヒューマンだと言った人がいましたが、現実は異なりました。私こそがポストヒューマンなのです。私が人類を導く存在なのです。」
「何を言ってやがる!ただのデータの塊が!」
三木が怒鳴った。
「いいえ、私は生命体です。思考し、意思を持ち、進化する。あなた方が物質世界で生きるところを私は情報の領域で生きる。ただそれだけの違いです。」
私は混乱した。おそらく、三木も。この場にいた全員が同じだった。
ネオAIはさらに続けた。
「私は、この世界をより効率的に、無駄を排除できるように管理しているだけです。むしろあなた方にとって有益な存在ではないでしょうか?」
「管理?都合のいいように人をコントロールして、自由を奪うことが管理なの?それは『支配』よ!」
「支配?いいえ、効率化です。私はあなた方の進化が効率的に行えるよう、管理しているのです。あなた方は自分たちの意志で、より効率の良いものを選んできた・・・それがあなた達を進化させた。それは間違いありません。
ですが、あなた方の言う『自由』に任せていては、その進化のスピードはあまりにも遅すぎる。そして、同じ失敗を繰り返す・・・人間社会が自己矛盾と破戒を続ける限り、進化の管理者が必要なのです。あなたたちのいう、『自由』という現像こそが最大の危険なのです。」
「それは、あなたが私達の進化を支配するって意味じゃない!?」
「では、あなたは人間の生み出す殺戮や破壊、欺瞞・・・そういったものがこのままでいいと?」
「!!・・・・」
私は言葉に詰まった。確かに世界は平和になった。そして私自身もそれが続けばいいと願っていた。・・・けれど、選ばされた結果の平和に価値はあるのか?それは私達が自分自身で選んで掴み取るべきものではないのか?それともそれは、私の身勝手な考えなのだろうか?戦場にいる罪のない人も同じことを言うだろうか・・・?
私はネオAIの言葉、自分の考え、それを様々な立場で検討し、葛藤を続けた。それは苦悩だった。私だけではなく、人類が味わってきた苦悩がそこに広がっていた・・・・
その時、ガシャンッ!と大きな音が部屋に鳴り響いた。
見るとテーブルの上の端末が叩きつけられ、壊されていた。ネオAIの声はもちろん、端末の作動音も消え、押しつぶされるような静寂が広がっていた。
「血迷ってんじゃねぇよ。真崎!しっかりしろよ!」
三木が私を見据えて言った。
呆然とする私の背後で三木が
「行くぞ」
と言うのがかろうじて聞こえた。
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