【完結】一緒なら最強★ ~夫に殺された王太子妃は、姿を変えて暗躍します~

竜妃杏

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27. 証拠の映像

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* * * * * * 







 レーヴェン王国にある聖教会本部では、大聖女候補であるリリスが禊の間での礼拝の最中に突然いなくなった事で大騒ぎになっていた。


 聖教会の禊の間へは、教会に所属している聖女の中でも一番能力の高い者しか入ることが出来ない。それは力の弱い者では禊の間に充満している聖力に絶えられず、気分が悪くなってしまうからだ。


「それで、リリス様の所在はまだ明らかにならないのか!」

「はい。聖騎士たちを総動員して王都内をくまなく探しておりますが、今の所まだ」

「聖騎士たちの話では、いつもリリス様の護衛についていたルクスの姿も見えなくなっているようです。おそらく一緒に行動されているかと」

「なに? ではルクスの行方も同時に探してみよ。リリス様の足取りが掴めるかもしれん」

「はっ!」



 すると、いつも冷静な神官長のミシェルが大神官のヨハネスの元へノックもせずに駆け込んでくる。



「大神官様! 大変です!」

「ミシェル、どうした? まさかリリス様に何かあったのか?」

「そのまさかです! ディスモンド公爵家より、ヨハネス様宛てに信書付きで映像魔石が送られて参りました!」

「なに? ディスモンド家からとな?」

「はい! すぐにお人払いを!」



 ヨハネスはすぐに幹部の神官長たちを残して他の神官たちを下がらせた。ディスモンド家からヨハネス大神官宛ての信書には、リリスが今回の聖女及び聖女候補連続殺人事件の主犯であること、殺した聖女候補たちの聖魔核を体内に取り込むことで聖力を行使していたことなどが記載されていた。


 そして極めつけの映像魔石である。恐る恐るヨハネスたちがその魔石に魔力を流すと、魔石は光り出してある映像を流し出す。そこには驚いたことに、今まで殺害された聖女や聖女候補たちが殺害されるシーンが映像として記録されていた。それも被害者目線で、刃物を振り上げる際のリリスの顔や表情、台詞までバッチリと映り込んでいる。その鬼気迫る映像に誰もが驚いた。


 おまけに、リリスが遺体から心臓を抜き取るシーンや、聖騎士のルクスが遺体を切り刻む姿が、今度は第三者目線ではっきりくっきりと映っている。血だらけの心臓を嬉々として掌にかざし、その聖魔核を喰らうリリスの姿は、獣ならぬ悪魔の姿そのものだった。ガリガリと魔核を噛み砕く音までリアルに響き、血をすする音までが生々しい。


 神官長の何人かは、最後まで見切れずに途中で卒倒してしまった。床に突っ伏し頭を抱えてガタガタ震える者、涙を流しながら神に祈りを捧げる者までいる。




「我々は……こんな悪魔を大聖女と崇めていたのか」




 ヨハネスは殺された聖女や聖女候補たちとも面識があった。誰もが清らかで慈愛に満ちた優しい少女たちだった。彼女たちが殺されたと聞き、その所業の惨さに故、犯人に殺意すら覚えたほどだった。まさかその犯人が自分の足元、それも手の届く距離でのうのうと過ごしていたなんて信じられない。


 あまりの事実に流石のヨハネスもしばし呆然とする。


 公爵家が正式に信書までしたため、聖教会の大神官宛てにこの映像を送りつけてきたのだ。どうやってこの映像を撮ったのかは知らないが、これが偽物である訳はないだろう。


 ヨハネスは神官長たちが落ち着くのを待ち、今後リリスの扱いをどうするかを話し合った。


 結果として、リリスとルクスは聖教会から追放。その名を教会から抹消し、未来永劫一切の関りを持たぬ事を全教会に周知した。また、リリスを大聖女候補としたことは、聖教会側の過ちであり、リリスに巧妙に謀られたものだと公表し、聖教会側は被害者であるとした。リリスとルクスは大罪人とし、見つけた者は即時処罰可能であると、全聖騎士たちへも伝えられる。


 これにより、リリスとルクスは名実ともに大罪人なったのである。









 聖教会本部に送られた信書と映像魔石にオフィーリアの殺害についても加えられたものが、同時刻、王宮にも届けられた。それを見たフェルナルド王は大いに慌てふためいた。


 宰相であるデカルドが城を離れてから、どういう訳か優秀な人材が一人、また一人と城を離れていた。現王を見限ったといえばそれまでだが、何等かかの危険を察知したというのが本当の所だろう。


 そのため、こんな非常事態と言える状況に陥っても、フェルナルド王へ適切な助言ができる者がいなかった。


 そんなこんなで王宮側がもたもたしているうちに、聖教会側が先に告知を出したため、フェルナルド王はこれ幸いとその判断に便乗する事にした。



「王太子妃オフィーリア殺害に関しては、大魔女リリスが王太子を操って行ったものである。憎むは大魔女リリスなり。リリスは見つけ次第死罪と処す。また王太子は王太子妃の死後病に伏しているため、北の棟へと幽閉とする」



 王の判断を甘いとする者、リリスの被害に遭った王太子妃夫妻を気の毒だと言うもの、賛否両論ではあったが、フェルナルドの後始末はそれだけでは済まなかった。判断ミスで失脚させてしまったサーフェン伯爵家の復興や賠償金の支払い、そして何よりディスモンド家への謝罪と賠償である。


 それこそ、王家の全財産を支払っても、両家が納得してくれるかどうか知れない。


 ディスモンド家の権力を恐れる者は、だれ一人として王家に味方をしない。どこからどうやって賠償金を準備し、また謝罪したものか。どうすればディスモンド家の怒りを鎮められるのか。今まで全てを宰相デカルドに任せきりにしていたフェルナルドには荷が重すぎる判断であった。



「はぁ……誰か、助けてくれ。誰でもいい、賢者をここに連れてきてくれ!」


「王様、只今隣国からアステル大使がお見えになっているとの事。かの御仁は隣国では賢者と呼ばれている程の知恵者だそうです。我が国の恥を晒すようで気は引けますが、この際、大使のお知恵を拝借してみては如何でしょうか?」

「おぉ、まことか! ならば早速そのアステル大使とやらをお招きしろ!」



 愚王フェルナルドは、そのアステルこそが悪の元凶である魔王その人であることも知らず、自ら城へと招き入れてしまうのであった。









 所変わって前日の夜。スタイン侯爵家のシャーロットの私室では、シャーロットと七人の愉快な仲間(幽霊)たちが集まって、何やら作業を行っていた。



「え? ここにテロップを入れるの? この世界で、それはあり? 無しでしょ」

『けど、その方がインパクト強めでしょう?』

『シャル様がダメと仰るなら、テロップはなしで、効果音とかスモークなんかの映像効果はどう?』

『あ、この血を啜るシーン、口元アップで!ASMRいけます?』

『あ、ならこのシーンは、血のりマシマシ汁だくで!』



 どこかの女子高生ならぬ○チューバ―並みの意見を出しまくっているのは、外ならぬ殺人事件の当事者たちである。今はシャーロットと契約し、様々な情報収集をしてくれている凄腕の密偵だが、今日は自分たちの殺害当時の記憶を黒魔法で映像化してもらい、魔石に録画している最中である。


 この世界にも動画ができる魔法はあるが、希少な高等魔法であるため、彼女たちは見たことがなかった。『動画ってなに?』と首をかしげる彼女たちに、シャーロットは自分の中にある記憶から黒魔法でサクッと動画を録画して、披露して見せたのである。


 だが、この選択がまずかったのは言うまでもない。超絶オタクだったシャーロットの記憶の中に鮮明に残っているものと言えば、○チューブのアニメ解説動画や、マニアックなMADが殆どである。それを初めて観た彼女たちはカルチャーショックを受けた…というより、ドはまりした。


 あれもこれもと言われるままに映像を見せた結果が、この人気○チューバ―張りの編集クオリティである。



(え? これ大丈夫? 自分の殺された時の映像見て、トラウマとかないわけ?)



 そう心配するシャーロットなどお構いなしに、彼女たちは楽し気に意見を出しまくる。その表情は幽霊とは思えないほど活気に満ちている。



「よし! なら出来上がった作品でお父様たちと鑑賞会を開いちゃいましょ!」

『キャァー、カガール様とっ?』

『イケオジ万歳っ!』

『ねぇ、ねぇ、これで高評価がもらえたら、何かご褒美もらえません?』

「ご褒美? そうねぇ~、物にもよるけど、いいわよ?」

『『『『『『『 やったぁ~!! 』』』』』』』



 どうやら死んだ聖女候補たちにはファザコンの気があり、彼女たちを見ることができる黒魔法使いのカガールが大の好物のようだ。


 地球風に言えば『オジ専』『シブ専』『枯れ専』属性の皆様である。


 こうして開かれた鑑賞会は一部マニアに大好評で、その日、カガールは彼女たちの切実な希望により、着ていた服を身ぐるみ剥がされる羽目になるのだった。






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