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第五話:友達と雪女。
06友達と雪女。
しおりを挟む「そういえば、あんたの狛犬は狐だったね。あたしの方は蛇でさ」
「キシマです。お見知り置きを」
艶やかな真っ白い髪に真っ赤な瞳。
そして黒いスカートから見える蛇の身体。
キシマと名乗る女性も灯と同じく姿勢がピンとしていて綺麗な佇まいだ。
そして紗紀は思い出す。
そうだ、彼女は後から男の子と部屋に入って来て、良く質問をしていて、仮想世界へ飛ばされる時に声をかけてくれた人だ。
「私は白花紗紀と言います。そしてこちらが」
「紗紀の狛犬、ミタマだよ」
「紗紀ちゃんとミタマね。よろしく。って言うかさ、あんた……髪切った?前は結構長かったわよね?腰まであったような……」
自分を認識してくれていた事に、紗紀は正直驚いた。
「実は色々あって、覚悟を決める為にざっくりと。後、戦闘中邪魔かなぁって……」
紗紀の思い切りの良さに、灯は声を上げて笑った。
「あはは!あんた、見かけに寄らず男らしいのね」
(男らしい……)
未だ言われた事の無い言葉に目をまんまるくしたまま灯を見る。
そんな紗紀の肩を叩いて、灯は話しを進めた。
「席の指定は特に無いみたいなんだ。せっかくだし一緒に座ろう!ほら、あの少年が座ってるとこ」
そうして向けられた視線の先には、これまた見覚えのある男の子とその後ろには真っ白な翼を持った人が立っていた。
「……鳥?」
「鳩らしいよ」
紗紀の疑問にいち早く答えたのは灯だった。
(鳩なんだ……)
誘導されるがままに紗紀は灯の後をついて行く。
「紗紀ちゃん来たよ。後来てないメンバーは……」
灯は紗紀の椅子を引いて座るよう促すと立ったまま辺りを見渡した。
目で人数を確認しているようだった。
会議用の机と折りたたみ式のパイプイス椅子が四角を描くように並んでいる。
「初めまして。私、白花紗紀です。よろしくお願いします」
「ああ」
少年は頬杖をついたまま視線だけこちらへと向けると、一言そう言ってまた視線を戻す。
割と素っ気ない対応に紗紀は何か気に入らない事をしてしまったのだろうかと悶々としてしまう。
「ああ、じゃないから。ほらちゃんと挨拶くらいしな!」
「痛ッ!?」
少年の背後から灯は両手で彼の頬を掴むとぐいっと紗紀の方へと向けた。
かなり痛そうだ。
苦痛の声が聞こえる。
「痛ってぇんだよ!!」
「あんたが挨拶もまともに出来ないからじゃない」
「あの、お二人はお知り合いなんですか?」
紗紀の問いかけに二人は顔を見合わせて瞬きをした。
灯が少年を指差して笑う。
「あぁ~。そうそう!こいつとあたしは同じ施設育ちだからさ。割と小さい時から同じ屋根の下で暮らしてたんだよね」
その過去形に今は一緒では無いのだと伺えた。
それはそうと"施設"、その言葉に紗紀はどう反応していいか分からなかった。
それはつまり親と何かあったとか親に捨てられたか、とにかく親と過ごしていない事を指し示していた。
「あ、ごめんよ!突然重い話ぶっ込んで。……幼馴染みって言うか弟って言うかさ!ね!」
「弟じゃねぇから」
頭を撫でる灯の手を払い除ける少年。
けれど灯は気にした風もなくさらに撫で回す。
「おいやめろって!」
「この子は秋山楓。可愛いでしょ?」
「その可愛いもやめてくれ」
楓と紹介された男の子は怒った顔をして灯を睨んだ。
けれど灯は慣れているのか全然気にした素振りもなく笑っている。
仲が良いな、と紗紀は少し羨ましく思った。
こんなに仲の良い友人も紗紀には居ない。
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