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第六話:九尾狐。
11九尾狐。
しおりを挟む自分より何倍も年の離れた紗紀も、あの子狸達さえも勇猛果敢に立ち向かったと言うのに、ここぞという時に尻込みをした自分が情けなくて仕方がない。
紗紀は本当にどんどん強くなっている。
それが嬉しい事のはずなのに、どんどん置いていかれそうな気がして無性に寂しくなった。
「み……たまさん?」
ふと気付けば紗紀の腕を掴んでいた。
慌てて引っ込めようとすれば逆に掴み返されて狼狽える。
「……良かった。綺麗に治って」
「……あ、ああ。すまなかった」
「それはこちらこそです。……あの」
紗紀が手を離し何かを言いかけた時、目の前に倒れていた九尾狐がむくりと身を起こした。
キョロキョロと辺りを見渡して目の前のミタマを凝視する。
「貴様は何故に九尾を装っている?」
しん、と辺りが静まり返った。
(え?)
ざわざわと木々が揺らめき、とても耳障りだ。
「狛犬は尾が一つ。見た目だけ取り繕ったところで何になる?」
紗紀はミタマへ視線を向ける。
そう、ずっと気になっていたのだ。
なぜ御札の絵柄は尻尾が一つなのかを。
紗紀はやはりミタマの本来の姿は尻尾が一つなのだと確信した。
けれどなぜそんな嘘をつく必要性があるのか検討がつかない。
ミタマは何も言い返せずにいた。
全てが図星だった。
強くありたいと願うその心はあっても、生まれ持った力はどうする事も出来ない。
だから会いたく無かったのだ。
(知りたく無かった。知られたく無かった。自分の事なんて誰にも……)
「あの!」
そう言って険悪な空気を壊したのは紗紀だった。
九尾狐とミタマの間に割って入る。
「どう言う事かは良く分かりませんが、……そんな威圧的な態度をされてはミタマさんだって言いたい事が言えません」
「自分よりも程度の低いモノに威圧的になって何が悪い?然程の力も持たず、神使に迎えられるとは、……余りに不憫ではあるが。相容れぬ」
腕組みしてそっぽを向く九尾狐に紗紀は小さく溜め息を溢す。
要は自分より力の弱いモノが神使として迎えられた事が余程気に食わないらしい。
「……それはそうと、ミタマと言ったな?あの"ウカノミタマ"の神使か?……いや、だがあの御方の神使は確か葛の葉では無かったか?」
九尾狐は拳に顎を乗せて考え込む。その言葉にピクリとミタマの耳が反応を示した。
(くずのは?)
ウカノミタマ様は確かにミタマの主だと本人から聞いている。
(どう言う事だろう?)
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