～巻き込まれ少女は妖怪と暮らす～【天命のまにまに。】

第七話：救援に来た男。

13救援に来た男。

ずっと自分の内にあった本心。

本当は誰かに聞いてほしかったのかもしれない。

気がつけば別に話さなくても良いような事まで口をついて出てしまっていた。

自分というものがいかに空っぽなのか、口に出してしまえば更に明白になって落ち込む。

俯く紗紀の手の甲こうに優一は自分の手を重ねた。

すっぽりと見えなくなってしまう程に小さい紗紀の手。

びくりとこわばったのが感じ取れる。


「気持ち、分かるよ」

「え？」

「俺の両親は俺が就職した頃に離婚してね。熟年離婚。元々親戚付き合いもして無かったし、兄弟も居なかったからさ。……これから一人でこの社会で生きて行くのかと思うと俺も不安だ」


その言葉に紗紀は優一を見上げる。

その表情は今にも泣きそうな程に歪んでいて、けれど口元で必死に笑顔を作っていた。


（同じだ）


「俺には夢があってね」

「夢、ですか……？」


そう話し出す優一は、紗紀から視線を逸そらすと少し遠くを見た。

そんな優一を紗紀はただただ見つめる。

こんなに大人に見えても一人は不安だと感じる彼に、勝手ながら仲間意識が芽生えていた。


「そう、夢。俺は両親みたいに離婚せず、ずっと余生まで添い遂げてくれる相手を探して居るんだ」

「……え？」


優一はゆっくりと紗紀の手を取り握る。


「きみとなら同じ境遇だから分かり合えると思う。……俺と一緒に生きてほしい」

「え？」


声にならない声が口の端から溢れた。

驚いた。

心が打ち震えるのを感じる。

逃げ出したい程に恥ずかしい。

けれど、真剣な彼の顔を見てしまえばそれが出来ない。

独りぼっちの寂しさを、彼は知っている。


「焦あせらなくていいから、心の隅っこにとどめて置いて？」


そう優一は優しく笑うと去っていってしまった。

紗紀はただただ呆然ぼうぜんとその背中を見送った。


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