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第九話:木葉天狗
02木葉天狗
しおりを挟む「タマちゃん今日も酷い落ち込みようだねぇ」
居間のテーブルに突っ伏してるミタマを見かけた七曲が、困り顔で彼を見下ろす。
「さっきからずっとこうなんだよ?……いや、ここ最近ずっとこんな感じだよね。何かあったの?ミタマお兄ちゃん」
マミが雪音にご飯の下拵えを習いながら話す。
「いつまでもウダウダしてんじゃないよ。袖にされたならされたでさっさと切り替えな」
「ちょっと姐さんやめたげて!?タマちゃん死んじゃうから!!」
ザックリ言い捨てる雪音に瀕死の状態のミタマ。
それを必死に庇う七曲。
雪音はやれやれと首を左右に振った。
それにしても、と七曲は思う。
(どうしてこうも、すんなりいかないのかねぇ)
七曲の目に映る二人はとても良い雰囲気だった。
しっかり話せばきっと直ぐにでも結ばれると思っていたのだ。
「廊下の掃除終わったよー」
「終わったぜ!ってミタマまた落ち込んでんの?」
「痛い痛いなのー?」
居間へ入って来たのは化け狸のユウリにムジナ、そしてカイリだ。
カイリはトコトコと歩みを寄せるとそんなミタマの背をさする。
「そーねぇ、心が痛い痛いかな?」
七曲の言葉に首を傾げるカイリ。
「タマちゃんってこう、何があっても動じない。むしろ相手を動揺させるぜ!みたいなタイプかと思ったのに。割と繊細さひけらかすタイプなんだねぇ」
「……何とでも言えばいい」
ミタマの隣に座った七曲はミタマの頬をツンツンとつつく。
もはやされるがままである。
「……おはようございます」
不意に聞こえて来た紗紀の声音に思わずシャキッと背筋を正すミタマ。
「紗紀お姉ちゃんだ!おはよう!今日は起きれたんだね」
「紗紀、身体は大丈夫かえ?」
マミが元気に挨拶したその隣から、雪音が心配そうに声をかける。
「はい、何とか……」
「妖力が必要なら妾がやるよ?いつでも言いな?」
「……それが、今ミタマさんの妖力で定着しつつあるみたいなので、あまり他の方の妖力を得ない方が良いと九重さんからアドバイス頂きまして……」
紗紀と雪音の会話に、ピクリと耳が反応するミタマ。
尻尾も微かながらに揺れている。
誰もが一目で喜んでいると察した。
「そういえばタマちゃん、ヤナちゃんもう帰っちゃったよ」
「……ヤナちゃん?」
ミタマと紗紀が小首を傾げる。
(こっちもか……!)
ミタマと紗紀、それからたぶん優一も首を傾げるタイミングが似ているのかもしれない。
(もう三人一緒でいいんじゃない……?)
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