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第十話:疑念。
04疑念。
しおりを挟むさっきまでのデレデレとした態度は何処へやら、シャキッとした灯が話を始める。
マミはお盆を持って居間へと戻って行った。
紗紀もそれに合わせて居住まいを正す。
「で?思いの外元気そうだけど……何が無事じゃないの?」
「……それが……」
紗紀は灯達に話すべきか一瞬迷ったが、意を決して相談する事にした。
自分の生い立ちも含めて、ミタマの事も。
「……紗紀ちゃん、さてはモテ期到来!?」
「割とシリアスな話ししてんのにぶっ壊すなよ」
「だ、だって……なんか凄い事になってるし……。にしても両方とも段階ぶっ超えてて笑う~」
「……笑ってんなよ」
楽しげにケラケラと笑う灯に、ジト目で彼女を見やり溜め息を吐き出す楓。
「つーか、そういう話は相手選んだ方がいいよ。コイツこの年齢になっても未だ彼氏の一人もいないから」
「うるさいわ!……今は晩婚化してるのよ」
「彼氏がいるのと晩婚化は別問題だけどな」
顔色変えずに淡々と指摘をする楓に、キ――――ッ!と怒りを顕にする灯。
(灯さんに彼氏がいないなんて不思議だ……。いてもおかしくないのに)
「柳瀬優一、だっけ?まぁ、気は早いけど、紗紀ちゃんと同じ境遇ならその人が紗紀ちゃんとの未来を考えるのも分かる気がするなぁ。やっぱさ、自分と違う人生歩んでる人だと解釈がズレるっていうか……。分かって貰えない部分とかあるよね、やっぱ」
(灯さんもきっと何かあったに違いない)
心無い言葉も、対応も、全く無い人生なんてきっと有り得はしない。
不意に何かを感じたように楓が口を開いた。
「なんか違和感ない?」
楓のその一言に紗紀と灯は楓へと視線を向けた。
(そうだ。もう一つ話さなきゃいけない事があった)
「もしかしてさ、ここに集められた七人って……みんな身内とか居ないんじゃねーの?」
「……あ……」
紗紀は拳をギュッと握りしめて二人を見る。
「その事なんだけど……。昨日、木葉天狗が現れて……。彼からそう知らされたの……、その言葉が本当かは全然分からないし、彼を信用していいのかも正直分からない。だけど……狛犬のミタマさんも知ってたから信憑性は高いと思う」
「……」
「……やっぱり」
そんな紗紀の様子を見ながら楓は納得した。
「まぁ、そうじゃなきゃ普通にテレビとかで募集しそうだよな。命懸けでもやってくれるヤツを。でも俺らみたいに身内居なきゃさ、ぶっちゃけ楽だよな。しかも一生涯保証なんて甘い話にも程がある」
灯は押し黙っていたけれど、どこか吹っ切れたように言葉を紡いだ。
「死んだところで保証はされないしね。例え生き残れても、今後ずっと神社を守るって名目でこの世界に留まる羽目になるんじゃないかな」
紗紀が感じた事を二人が口々に零す。
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