~巻き込まれ少女は妖怪と暮らす~【天命のまにまに。】

東雲ゆゆいち

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第十一話:七曲。

02七曲。

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七曲に吸われた首筋を片手で押さえ走り続ける。

自分の部屋の前まで行くと、バッタリと運悪くミタマと出くわしてしまった。


「紗紀?どうしたんだい?」


ミタマの問いかけに答える言葉が見つからずうつむいてしまう。


「少し、体調が悪いので横になります。妖怪が出たら呼んでください……」


そそくさと部屋へ入ろうとすれば、ぱしっと腕を掴まれて引き止められてしまった。

紗紀は狼狽うろたえてしまう。

大きく見開いた瞳には、不安げに顔を歪めたミタマが映っていた。


「大丈夫かい?……首が痛む?」

「……大丈夫です。少し横になれば治るので」


さっと視線を逸らしてそれだけ告げると、紗紀は自室へとこもった。

一人になった途端ドクドクと嫌な音が全身を支配する。


(怖かった。とても)


豹変ひょうへんした七曲が、どこか傷付いた顔をしたように見えたから。

きっと原因は自分にあるのだとそう思う。

そう思えばそれに対するこの仕打ちも致し方ないのかもしれない。

だからミタマにはバレる訳にはいかなかった。

知ればきっと七曲を責めてしまう。

そうは思うのに、上手くかわせずにきっと不信感を抱かせたに違いない。

溜め息と共にその場にうずくまれば、突然障子越しに声が聴こえて来た。


「おーい、ご主人サマ?ここに居んだろー?開けるぞ~」

「へっ!?ちょっ、ちょっと待ってください!!」


その声の持ち主は白狼で、思わず障子が開かないようにと障子を押さえて力を込める。

これ以上何かがあればキャパオーバーだ。

勘弁して欲しい。

そう思う紗紀に反して、白狼はどこか愉快ゆかいげだ。


「なんだなんだぁ?お着替え中かよ?手伝おうか?ご主人サ、マ!」


わざとらしい様付けに、今このテンションに付いていく余裕が無いと本当に思う。

けれど制止の声もむなしくガコッと外される障子。


(え)


目を見開けば障子を持ち上げた白狼と目が合った。


「ちょっと井戸端会議しよーぜ?オマエ、俺様に聞きたいコトたくさんあんだろ?」

「……へ」


(いやいや待って欲しい)


今先程、ミタマに体調が悪いと告げたのだ。

それなのに今度は別の男と外でやり取りなんかしたらそれこそ信頼関係に関わる。

断ろうと言葉を発する前に白狼が続ける。


「オマエが出てきたら障子戻してやるよ。けど出て来ないならこのまま障子を破壊する」

「出ます出ます!!」


そのおどしにまんまとやられ、勢い良く廊下に出れば白狼は満足そうに笑って障子を戻してくれた。


(してやられた)


壊すなら壊すでそれでも良かったのかもしれない。

そうすればきっとミタマ達が助けにでも来て、この現状を打破だは出来た事だろう。


「おら、来いよ。ご主人サマ」

「うわあっ!?ちょっ、待っ!!」


ひょいと担ぎ上げられて、驚きのあまりワタワタと手足をばたつかせる。

けれど白狼は気にした素振そぶりも無くそのまま庭へと降り立った。

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