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第十二話:戦友の死。

05戦友の死。

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「あまり調子にのらないでくれるかい?」

「ゴメンナシャイ」


しゅんとした七曲から手を離すと、ミタマは手をこまねく。


「タマちゃんの独占欲の塊~。タマちゃんは紗紀ちゃんの血を飲めばボクが強くなれるって分かってて黙ってたんでしょー?」


ジト目で七曲がミタマを見やる。


「確信が持ててたわけじゃないよ。だから少し悩んだんだ。でもキミが怪物になった時、浄化は出来ると知ってたからね。こっちは実績もあるし。まぁ、浄化目的なら紗紀じゃなく俺の血でも良かったわけだけど……。紗紀に妖力が馴染んでるならちぎりを交わす事も出来るかもしれないと思ったんだ」


ミタマはどこか気まずそうに視線をらす。


(それで珍しく血を与える許可をくれたんだ……)


いつもなら全力で阻止そししに来るのに、と紗紀は今までのミタマの行動を思い出す。


「じゃあ、予想通り紗紀ちゃんは妖力と馴染んでるんだね?」

「うん。そうなる」

「良かったね!紗紀ちゃん。妖力が定着すればタマちゃんからセクハラ受けなくても自由に動けるね!」

「せく……?」


単語の意味が分からず、小首を傾げるミタマ。

紗紀は七曲の言葉に苦笑いを浮かべた。


「それにしても……その説はお騒がせしました。えーっと、紗紀ちゃんにもタマちゃんにも不愉快な思いをさせて本当にごめんね」


丁寧に頭を下げて謝罪をする七曲にミタマは深い溜め息を吐き出す。


「まぁ、気持ちも分からなくはないからね」


ミタマは視線を床へと落とすとそうつぶやいた。

紗紀と七曲は驚いてミタマを見やる。

まさかミタマも同じ気持ちだったとは思いもしなかったからだ。


「え、な、タマちゃんも!?だってタマちゃん強いじゃん!」

「七曲はともかく紗紀には以前にも話しはしたけれど、俺は狐の狛犬の付喪神つくもがみだからね。こんな形はしていても所詮しょせん本物の九尾にはまるで及ばないよ」


ミタマの言葉に七曲は何かを言いかけてやめる。


「それでも充分強いですし頼りにしてます。七曲さんも今後より一層の活躍を見せてくださいね!」

「うんうん!頑張っちゃう。って言うかさ。タマちゃんも紗紀ちゃんから血を分けて貰ったらボクみたいに強くなるんじゃないの?」


七曲は人差し指を口元に当てて不思議そうにそう聞く。

それを聞いて紗紀も確かにと頷いた。

全員に分け与えればみんなもっと強くなれるのではないだろうか。


「そうだね……。でも紗紀の血は限りあるから時間を置いてからとしよう」


(あ、そっか……)


確かに頻繁に血を与えてたら身がもたない。

当たり前な事をミタマに言われて納得する。


「なにより、紗紀の血を他の者にも分け与えるとか気分が悪い」

「アッハハ。えらく素直になったようで。イイんじゃないのー。独占欲」


七曲が楽しそうにそう笑う。

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