~巻き込まれ少女は妖怪と暮らす~【天命のまにまに。】

東雲ゆゆいち

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第十三話:灯と楓。

05灯と楓。

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ガラッと戸を開けて白狼の部屋へと足を踏み入れる。


「……お!なんだァ?どうした、雁首揃がんくびそろえて」

「白狼、命令です。みんなと一緒にこの神社を護ってください」

「!」


白狼は驚いた顔をして数回瞬きをしてみせた。

ミタマが白狼を縛るひもほどいて行く。


「……どこか、行くのかよ?」

「他の神社に大量の怪物が現れたの。ミタマさんと二人で救援に向かいます。時間が無いから、ここを任せてもいいかな?」


真剣に目を合わせ、思いの強さを伝える。


「……おい。マジで言ってんの?……バカだろ」

「頼んだよ」


ミタマまでもが白狼にここで戦力になるよう頼む。


「オマエは!俺様が信じられんのかよ?」

「信じるよ。私は、白狼を信じる」

「……」


白狼は何も言わずに押し黙る。


「ここを任せたよ。白狼」


紗紀は念押しをする。


「それじゃあ、行きましょう!ミタマさん」

「ああ」


紗紀が部屋を急ぎ足で出ていく。

その小さいのに判断力のある逞しい背を、ミタマは追いかけた。

白狼は胡座あぐらをかいて伸びをした。

久方ぶりに解放されてその自由を噛み締める。

事は刻一刻こくいっこくと前へ進んでいた。


◇◆◇


九尾狐の姿を借りて、転移装置で灯の元へと向かえば、紗紀は絶句した。

身の毛がよだつ妖気。

灯と楓、彼らの狛犬と、二人が使役したのだろう妖怪が二匹いて六人であの黒い手足がたくさん生えた妖と対峙たいじしていた。

黒い腕に弾かれて飛ばされて来た灯を狛犬に変化した紗紀が受け止める。


「……っ!……紗紀、ちゃん!?」

「助けに来ました!」


目を見開いて紗紀を見上げる灯に、紗紀は口元だけ笑ってみせた。

灯は目をせて不甲斐無さそうに呟く。


「アイツら……どんどん強くなってる」

「そう、みたいですね」

「毎回札を使ってたんだけど、効果ある札は使い切ったみたいで……」


灯の手がぶるぶると震えていた。

その気持ちは良く分かる。

御札の使用回数は限られている。

この戦いがいつ終わるともしれない。

御札が効かないとなれば肉弾戦になる。

そうなれば勝機は薄い。


「紗紀、来るよ」


ミタマが灯の背を撫でる紗紀を背に、立ちはだかった。

ミタマの声かけに紗紀も立ち上がる。

いつもは強気な灯は、ただ呆然とその場に座り込んで俯いていた。

どうやら戦意喪失しているようだ。


「灯!!戦う気無いなら隠れてなよ。邪魔!」

「……っ!」


楓は白い翼を羽ばたかせながらこちらへ来ると、座り込んだままの灯を抱き上げる。

そして紗紀を視界に映すとホッと安堵あんどしたような表情を浮かべた。


「……来てくれたんだ?助かる。コイツ奥に連れてくからその間だけ頼む」

「うん、分かった!」


楓の願いに紗紀は強く頷いて見せた。

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