~巻き込まれ少女は妖怪と暮らす~【天命のまにまに。】

東雲ゆゆいち

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第十三話:灯と楓。

12灯と楓。

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突然かけられた声にビクリと肩が跳ね上がった。

部屋を出た先でまさかのミタマとバッタリ遭遇するとは不運にも程がある。

ミタマが白狼が出てきた部屋に対して怪訝けげんに思い殺気を放った。
      
それに対して白狼は開き直ったようにニヤニヤと愉快そうな笑みを浮かべる。


「ふっはははっ!そんな大事なら片時も離れんじゃねーよ」


高笑いしたかと思えば地をうような低い声でうなる。

ミタマはそんな彼の声音に、かすかにひるんだ。

じっとりと嫌な汗が背筋を滑るのが分かった。


「鬼の居ぬ間に楽しませて貰ったぜ?ハッ!どうする?殺したいか?俺様を」

「ああ。殺したいね。とっても」

「だが残念だ。俺様には時間が無い。また遊びに来るって伝えてやってくれ。テメェのご主人サマにな」

「……なにを……」


聞き返す間も無く白狼は己のそのトンビのような翼を広げる。

ミタマが手を伸ばし捕まえようとするけれど、その手は空を切り白狼は逃げるが勝ちと言わんばかりにバサバサと羽を羽ばたかせ空高く飛んだ。


「白狼……!!」


叫ぶけれど彼は素知らぬ顔をして、まん丸の月へと向かって行く。

残されたミタマはただただ白狼を見送ることしか出来なかった。

その手をギリギリと力いっぱいに握り締められる。


(やっぱり早い内に殺しておくんだった)


不穏な事を心内で思考しながら、思い出したように慌てて戸を開けて紗紀の様子を確認した。

部屋ではすぅすぅと穏やかに寝息を立てている紗紀の姿が目に入った。

そんな彼女の姿にホッと安堵あんどの息を吐く。

けれど彼女の上にかけてあるその上着に、ミタマは見覚えがあった。

白狼の物だ。

瞬時に気持ちがひんやりと冷めきる。

上着を取り払うと掛け布団の上でうずくまる紗紀が目に入った。

そこでふと思う。

白狼はもしかしたら何もかけずに寝ている紗紀の身を案じて上着をかけただけなのかもしれない。

以前もそうだ。

紗紀の首筋のあと

あれも白狼だと思わなければ周りに対して不信感を抱いて居た。

白狼だとあらかじめ知っていたから後々七曲もと知っても白狼の時以上の嫌悪感は抱かずに済んだ。


(白狼は一体何を考えているんだ?)


ただ掻き回したいだけには思えない。

本当は悪いヤツでは無いのかもしれない。

ミタマは紗紀を抱き上げると、掛け布団を足先でそっとずらして布団に紗紀を降ろした。

そしてどかした掛け布団を紗紀の上へと掛け直す。

本当にぐっすりと眠っていた。

動かしても目覚めない程に。

そんな紗紀の頬を撫で、ミタマも彼女の隣に潜るとそっと目を閉じた。


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