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第十四話:ウカノミタマ。
13ウカノミタマ。
しおりを挟むどうしてこんな場面で圧力をかけてくるのか。
紗紀が前に出ようとすれば、サッとミタマが立ち上がりウカノミタマの前へと座った。
「いただきます。……紗紀の分も俺が飲みます。よろしいですか?」
「……ふふっ。良いぞ」
「え、ミタマさん!?」
(大丈夫なのかな?)
ざわざわと胸の内で嫌な予感がする。
ミタマがお酒に強いのか、紗紀は何も知らない。
ウカノミタマは彼の願いを聞き入れ承諾した。
心底楽しげにニヤリと笑っている。
「あ、あの!せめて食事も一緒に!お酒だけでは体に良く無いって聞きますし!!」
紗紀が必死に懇願して、それもそうだとウカノミタマは綺麗に盛り付けられた御膳を眺めた。
「善を持って近う寄れ」
「はい!」
紗紀はホッと安堵してミタマの膳も持ってウカノミタマの元へと寄った。
食事と共に、けれどどこと無くハイペースに酒を煽られて、紗紀は見るだけでハラハラしてしまう。
何よりこの酒臭さで既に酔いそうだ。
ふと、これでは紗紀がつまらんだろうと察したウカノミタマが、ウカノへと視線を向けて何やら合図をした。
ウカノは頷き返すとそっと部屋を出て行く。
「ウカノミタマ様、今後について気になる点があります」
「なんだ?」
「紗紀の存在はここの宮司には知られておりません。経緯を話してしまえば人間界は大騒ぎになります。どういたしましょう?」
ミタマの最もな意見に、ウカノミタマは考え込む。
「そうじゃな。ならば、術をかけよう。この境内の中で紗紀は人には見えぬようにする。妖や神に近い存在だ。近う寄れ」
ミタマに視線を向ければ、頷かれて、紗紀はウカノミタマの目の前に座した。
ウカノミタマは紗紀の額に唇を落とす。
それはお酒を口にしていたからか、どこか熱を孕んでいた。
「……っ」
あげそうになる悲鳴を必死での飲み込む紗紀。
「これで問題なかろう。声も聞こえはしない。ぶつかっても存在を感知される事もない」
それはまるで幽霊のようだと紗紀は思った。
「ミタマよ、それで紗紀とはもうまぐわったのか?」
(まぐ……?なんか前にも似たような話しを誰かがしていたような気がする)
「なっ、なんて事を紗紀の前で聞くんですか……!」
酔いのせいなのか、赤く頬が上気しているように見える。
「なんだまだか、つまらん」
「つまるつまらないの問題じゃないんです」
物をポイっと投げるように言葉を吐き捨てるウカノミタマに、ミタマは食って掛かった。
いつも大人のように見えていたミタマが、神の前では子供扱いだ。
それがとても新鮮に見えた。
「紗紀は随分妖力が馴染んでおるように見受けられるが、ここまで来たならばまぐわえば一発で完全なモノになるだろう?恋仲ならば何を躊躇う必要があるのだ?」
心底不思議そうに首を捻るウカノミタマに、ミタマは怒る元気すら無くなった。
「色々とあるんですよ。こっちにも。やっと振り向いてもらえたところなんです」
ミタマが俯けば、その額をウカノミタマが手の平で弾いた。
パシンと小気味よい音が響く。
「痛っ!」
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