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第十七話:激動。
04激動。
しおりを挟む「そうじゃったか。紗紀が実際に会うて話しをしたと言うなら間違いは無いのじゃろう」
「ユウリくん、ムジナくん、マミちゃん、カイリくん。優一さんをよろしくね」
紗紀は一匹一匹頭を撫でる。
四匹は力強く頷いてくれた。
次に九重と雪音へ視線を送る。
「力を貸そう」
「妾もじゃ。頼ってくれてありがとな、紗紀」
こうして、九重、雪音をメンバーに加え、紗紀達はウカノミタマの居る稲荷神社へと舞い戻った。
◇◆◇
「おかえりなさい。メンバーも増えたみたいで」
黒い渦を通ると、待っていた春秋が笑顔で出迎えてくれた。
楓と神鳩も先に戻って来ていたようだ。
「俺らも狛犬の移動が終わった」
「お疲れ様」
楓にねぎらいの言葉を送る紗紀。
「ほう?アンタが春秋かえ?」
到着早々、春秋に詰め寄る雪音。
「はじめまして。君は雪女ですね。僕は萩原春秋。どうぞよろしくお願いします」
ぺこりと頭をさげる春秋。
「とりあえず、朝日が登るまで居間でお話をしませんか?」
「そうだな。詳しい経緯を話せ」
紗紀の提案に九重も同意する。
みんなで居間へと移り、今までの出来事、これからの事を話し合った。
◇◆◇
「なんだかとても疲れましたね」
朝焼けを無事に迎え、紗紀とミタマは部屋へと戻って来ていた。
「色々と起こり過ぎて肝が冷えたよ」
ミタマも紗紀も疲れ切った顔をして、障子戸を背に座り込んでいる。
ミタマは寄りかかるように、紗紀の頭に自分の頭を預けた。
紗紀がここに戻って来た現実を噛み締めているのだろう。
「……ミタマさん。本当に心配かけてすみません」
「……キミは何も悪くないよ。そうでしょ?だから謝らないで。謝らなきゃいけない事でもしたなら……話しはまた別だけど」
ミタマは紗紀の手に触れると、スルリと指を絡めた。
「随分、白狼と仲良くなったんだね。キミは本当に、誰とでも直ぐに仲良くなるし、酷い事だってされたのに、許しちゃうし……」
「怒ってますか?」
「怒ってはないよ。ただ……怖かった」
ポツリ、こぼれ落ちた言葉は小さく震えているように思えた。
「キミをあのまま、失うんじゃないかって。何度も、何度も後悔をした」
「……サグジ、さん……」
ミタマがどれ程不安だったのかが痛いほど伝わって来る。
紗紀は体勢を変えると、ミタマと向き合った。
彼の黄金色の瞳がゆらゆらと、不安を孕んで揺らめいていた。
そっと、彼の頬をなぞり、そのまんまるな後頭部ごとぎゅっと抱きしめる。
「帰るのが遅くなってごめんなさい。私、生きてます。ちゃんと、ここに居ます」
ミタマが恐る恐るその背に触れた。
細くて、少し力を入れただけでも折れてしまいそうだ。
「おかえり、紗紀。無事で良かった。キミが生きてるだけでいい。キミが他の誰と仲良くなろうと、キミを失う事に比べたらちっぽけな事だって思えたよ」
それで、白狼と話していても間に割って入って来なかったのだと納得する。
「キミも知ってる通り、俺も人間とは比べものにならないくらい脆いよ。今回改めて、互いがいつ消えるか分からない身なのだと実感させられた」
「……そう、ですね」
何も考えずに生きていた。
ずっとこのまま続くんじゃないかと思う錯覚。
「もう、後悔だけはしたくない」
その気持ちは紗紀も同じだ。
ミタマは体を離すと、紗紀の頬を両手で掴んで唇を寄せる。
一度唇を離すと、再度角度を変えて口づけを交わした。
深く求めて、そのまま畳へと雪崩れる。
そこで、はたとミタマは気づく。
紗紀の襟の合わせ目からころりと出てきた勾玉に。
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