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第十八話:一難去ってまた一難。
11一難去ってまた一難。
しおりを挟む「え?いっぱい?」
紗紀はミタマの言葉が引っかかり、そっと後ろを振り向く。
そこには紗紀の姿をした何かが、たくさん居た。
紗紀がその光景に鳥肌が立ち後退りながら困惑する。
「ミタマさんに問題です」
「本物の紗紀はどれでしょう?」
一人一人が別々の行動を取っているけれど、姿は全部紗紀と瓜二つ。
声までもおんなじだ。
これ程気持ちの悪いものは無いだろう。
「うわぁ……紗紀ちゃんだらけ」
灯もドン引きだ。
「……はぁ。何をしてるのだ。まったく。私は空の方が気になる。席を外しても良いか?」
「あ、はい。朱雀さん気を付けて」
紗紀が喋るのと同時に、全紗紀も同じタイミングで言葉を口にしてお辞儀をしてみせる。
「……存外に気持ちが悪いな。では行ってくる。何かあったら呼んでくれ」
「はい」
あまりの迫力に朱雀は少しばかり気圧されるが、そのまま翼を広げて空へと向かった。
ミタマが紗紀の手を握る。
「本物はキミでしょ?……目が、覚めたんだね?紗紀」
塞がったお腹をミタマが恐る恐る触れた。
紗紀に変化した上に分身したユウリが、面白く無さそうな顔をする。
「ミタマさんが送ってくれた偽物の世界に、ウカノミタマ様やウカノさんもいらっしゃいました」
「ウカノミタマ様が!?」
まさかの出来事に、ミタマは声を張り上げた。
紗紀は懐からそっとウカノミタマを取り出し、手の平に乗せるとミタマの視線まで持ち上げて見せる。
ウカノミタマは疲労困憊中でぐったりしていた。
「妾は疲れておる」
「ウカノミタマ様!!……なんでこんなお姿に……」
「私がここに戻るのに、力を分けてくださったんです。すみません」
ミタマは小さくなってしまったウカノミタマをそっと両手で包んだ。
紗紀は申し訳なくなって頭を下げる。
「いや、ウカノミタマ様がそうされたかったんだろうし……。ウカノは?」
「ここにおりますよ、兄様」
灯の腕からぴょんと飛び出ると、そのまま姿を人の形へと戻した。
「紗紀さんに力を与えただけでは無いの。あの偽りの神社に入った途端、力を吸い上げられたのよ」
ウカノの言葉にミタマは眉間に深くシワを刻んだ。
「……やはり、本当の敵は向こうか……」
その瞳には怒りの色が浮かんでいた。
「紗紀ちゃん!」
「紗紀!」
遠くから七曲、雪音が声を上げて駆け寄って来るのが見えた。
その後ろには九重の姿も見受けられる。
そしてその紗紀の数に驚愕していた。
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