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第十八話:一難去ってまた一難。
18一難去ってまた一難。
しおりを挟む「……なッ……!!」
「随分な挨拶だ。なんだ?殺されたいのか?」
恰幅の良い政府の男が、ギロリと白狼を睨み付けると御札を手に取り何かを呟いた。
「我が魂に応えよ。十二天将」
「何!?」
その男が口にした言葉に、空から降りてきた朱雀と春秋が反応を示す。
(十二天将……)
紗紀もゴクリと生唾を飲み込んだ。
御札が邪悪に光り、黒い影のようなものが次第に姿形を表す。
その姿は真っ黒い龍に見えた。
よくよく見れば、青い龍の周りに黒く淀んだ空気が渦巻いている。
「グォオオオオオ!!!」
「青龍!!」
朱雀が名を叫んだ。
けれど、彼は唸るばかりでどうにも様子がおかしい。
苦しみもがいているようにも見て取れる。
「兄さん、兄さんが生み出そうとしてるモノはそんなに禍々しいものだった?この青龍の纏う淀んだオーラ。兄さんの心に比例しているんだよ」
春秋は語りかけるように政府の男を見た。
「……フッ、貴様も居たのか。……春秋、だな。随分久しいな」
「……兄さんは何がしたいんだ?」
「何が、か。平等な世界を作るためにはまず破壊が必要だ。全てを破壊し、一から作り上げる。既に腐り切ったこの世界を中途半端なまま新しくする事は不可能だ。違うか?」
まさか二人が兄弟だとは思いもしなかった。
春秋を知っている者達が唖然として二人の兄弟を交互に見やった。
「……兄弟!?ってか似て無さ過ぎだろ!?」
みんなの心の声を代弁してくれたのは白狼だ。
「……兄さんがやろうとしている事には賛同しかねるよ。話し合いをしたい。時間をちょうだい」
「残念だが既に時間は無い。紗紀くんの決断によっては……貴様も消えてもらうぞ春秋」
春秋に兄と呼ばれるその男の言葉に、紗紀は狼狽える。
なんせ十二天将を呼び出せるほどの力を持っているのだ。
そして、あの春秋ですら朱雀に抱えられ、疲れきっているのが分かる。
(今ここから、もう一度戦うの?この人数を相手に?)
握り締める手が汗ばむ。
そんな紗紀をよそに、紗紀に変化をしたユウリが七曲に何やらこそこそと話をした。
七曲は一瞬驚き目を見開いたが、その真剣な眼差しに小さく頷く事しか出来なかった。
「……その取引、お受けします!」
そう大きな声で断言したのは紗紀だった。
正確に言えば、紗紀の姿に変けたユウリだ。
え、と紗紀が口を開く前に七曲が紗紀を囲った。
それと同時に紗紀の姿をしたユウリだけを残して分身した紗紀が姿を消す。
まるでそこには紗紀本人が立っていると言わんばかりだ。
「ほう……」
予想外だと言いたげに、恰幅の良いその男は自分の顎を撫でる。
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