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第二十話:最終決戦。
04最終決戦。
しおりを挟む「ぐぁああああああああああ!!」
唸り声をあげて駆け出して来る幸生を、再びミタマが薙ぎ払う。
「……ミタマ、さん?」
紗紀は幸生と戦闘を繰り広げるミタマの姿を呆然と眺めた。
何が起きているのか理解が出来なかった。
その時、突然窓ガラスがパリンと音を立てて派手に割れた。
けれど、ミタマと幸生は気にも止めないで攻撃を繰り広げている。
(今度は何!?)
そこに現れたのは翼をその背に生やした、春秋だった。
大きな満月に照らされて、見惚れてしまう程に妖艶で美しく見えた。
目を見開く紗紀。
「……春秋、さん!」
「すみません。遅くなってしまって。無事、じゃ無さそうですね。紗紀さん。おや、そちらは……味方ですか?」
「……彼は、一度死んだ身です。ミタマさんと戦っている人が章さんの魂の一部を入れ込んで今動けているみたいなんです」
紗紀の話を聞いて、春秋は言葉を失った。
その視線の先には優一がいる。
優一は相変わらず何を考えているのか分からない表情でギュッと紗紀にしがみついたまま、ぼんやりと春秋を見上げていた。
「……とりあえず、彼が敵では無い事は分かりました。紗紀さん、ミタマくんを頼んでもいいですか?僕はもう片方をなんとかします。あ、これ、約束の注射器。二本渡しておきますね」
春秋は口早にそう言うと、服の裾から注射器を二つ取り出して手渡してくれた。
「ありがとうございます!」
春秋が来てくれたからには心強い。
さっきまで不安でいっぱいだったのに、なんとかなる気がしてきた。
「優一さんは安全な場所に逃げてください!」
優一にそう指示を出して、紗紀はミタマの方へと向かう。
春秋は幸生を蹴り上げて、ミタマと距離を作った。
その隙きに紗紀は、ミタマの腕に繋がったままの鎖を握って止めに入る。
「ミタマさん!しっかりしてください!」
ミタマは未だに幸生に食ってかかろうとしていた。
紗紀はこちらを見向きもしないミタマの背にしがみつく。
「私は平気です!無事です!ミタマさんのおかげで……」
必死に言葉を紡げば、ミタマはピタリと動きを止めた。
「ミタマ、さん?」
振り返る彼は、未だに正気では無い。
「ぐぅおおおおおおおおおお!!!」
今度はミタマの標的が紗紀へと代わったようだ。
「紗紀さん!!」
春秋が叫ぶ。
春秋の方は、幸生に注射をいくつか打ち、彼の動きを封じていた。
幸生は、さっきまでの攻撃性はどこへやら、ただただ苦しげに浅く呼吸を繰り返している。
「春秋さん、ミタマさんは任せてください!方舟はあちらです!」
紗紀は大きな月に照らされている高台の方舟を指差した。
そう、春秋との予定では春秋側が方舟を壊す手はずとなっていた。
「……っ、分かりました!この人は僕が連れて行くから安心して!無事に生き残るんだよ、絶対!」
「はい!」
ミタマの攻撃を避けながら、紗紀は精一杯元気に返事を返した。
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