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第二十話:最終決戦。
34最終決戦。
しおりを挟む紗紀とミタマはお互いに頷きあった。
「変化!舞え!乱れ吹雪!!」
雪女の姿に変化した紗紀が吹雪を章に向けて放つ。
「滅!」
章は片手をかざしてそれを無に返した。
「攻撃が……!」
「消えた……?」
紗紀とミタマは驚いて目を見張った。
まさか攻撃が章に届くどころか綺麗に消失してしまうとは思いもしなかった。
(彼に攻撃する隙きを与えては駄目!)
「舞え、乱れ吹雪!!」
「狐火!!」
紗紀とミタマ、交互に技を繰り出すけれど、全て章の前で消え失せる。
(どうしたら……)
圧倒的な力の差に、次の一手が見当たらない。
紗紀は自分が出来る最大の事を脳内で考えを巡らせる。
「変化!増殖!」
化け狸へ姿を変えて、分身を生み出す。
以前、九重の時に使った手段だ。
「変化!舞え、乱れ吹雪!!」
一斉攻撃を仕掛ける。
「滅!」
けれどもまた、一瞬で消されてしまった。
「狐火!!」
「効かんわ!滅せよ、雷神。力の限り!!」
天にかざされた手。
その先に淀んだ雲が集まり、稲光と共に凄まじい落雷が落ちてきた。
「紗紀!!」
ミタマが紗紀を抱き寄せ、その場にうずくまる。
地面を揺るがす稲妻がミタマの身体に落ち、半径数メートルまで電流が走った。
雷を呼んだ章には衝撃は無い。
「ミタマさん!!」
ミタマに庇われたおかげか、ウカノミタマの加護か、紗紀は無事だ。
紗紀に体重を預けたまま動かなくなったミタマの下から這い出る。
ミタマの頬にはまるで陶器にヒビでも入ったかのように亀裂が出来ていた。
言葉が、出ない。
「……ッ」
「フハハハハ!!そうか。……そうか。ミタマを殺せば、もう未練は無いな、紗紀くん」
その章の言葉に、ゾクリと背筋が凍てつく。
震えだす手を、ミタマのひんやりと冷たい手が触れた。
力強く握られて、紗紀は我にかえる。
「あまり、神使を舐めないでもらおうか」
ゆっくりと立ち上がるミタマは服もあちこち焦げていた。
それでも尚、その背で紗紀を庇うように立つ。
「……本当に、邪魔だな。貴様は」
「それはこちらのセリフだと思うけれど?」
こんなにボロボロに傷つけられて、力の差も目に見えているのに、ミタマは一歩も引く気がない。
紗紀は自分の頬を力いっぱい叩いた。
痛みで震えが治まる。
(ミタマさんを一人で戦わせたり、しない)
覚悟を新たにミタマの隣に立った。
「勝機がないと分かっていながら、尚も立ちはだかるか。考え無しも良いところだな。覚悟して、死ね!」
「変化!業火に身を焦がせ、狐火!!」
紗紀は九尾狐の姿へ変わり、炎の渦を放つ。
木で出来た方舟が勢いよく燃え上がった。
章が苦々しい顔をして舌打ちしたのが分かった。
「滅せよ、水神。力の限り!!」
空から土砂降りの雨が降り、炎を鎮火する。
「貴様!この舟を燃やせば、まだ中に居る者達が焼死すると考えんのか!」
まさか章からそんな正論を叫ばれるとは思いもしなかった。
「す、すみません……!」
紗紀もまた、バカ正直に謝ってしまう。
ミタマは思う。
彼自身、最早誰がどうなろうがどうでもいいはずだ。
ならば、わざわざそう言葉にしたのは紗紀に攻撃を緩めさせようという魂胆に違いない、と。
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