儚げ社長は一途な年下秘書に密やかに溺愛される

椿綾あこ

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6 わがまま秘書からの報告

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 こうして始まった茉乃ちゃんとのディナー。次々と運ばれてくる料理は相変わらずどれも美味しくて、久しぶりの味に仕事の疲れが癒されていくのを感じる。

 立場上、ビジネス会食で高級店に行くこともある。だけどビジネスの場だと気を遣って料理の味を楽しめないことだって多い。だからこうやって心からおしゃべりと料理を楽しめる機会は私にとって大切な時間。

 茉乃ちゃんとの話は仕事のこともあるけど、それ以外の話もよくする。美容やファッション、芸能人の話、最近お気に入りのドラマまで――まさに女子会のようだ。

 次々と話題を振ってくれるのはいつも茉乃ちゃんの方。

 そんな茉乃ちゃんが“本題”について口を開いたのはメインの肉料理が運ばれて来た頃だった。
 
「それで……言ってた話なんですけど……」
「あ、うん。話があるんだったよね?」

 本当はずっと気になっていた。一体何の話なんだろう、と。

 だけどいきなり「何の話?」と聞くことなんてできないから、ずっと茉乃ちゃんが切り出してくれるのを待っていた。何度か切り出しそうな気配はあったけど、その度に料理が運ばれてきてタイミングをずっと逃していたのには気づいてたから、ようやくと、いうところだろうか。

「報告したいことがあるんです」

 じわりと茉乃ちゃんの頬が赤くなる。ワインのせいかもしれない。けれど、それだけじゃなさそう。
 この表情――知ってる。もしかして、と頭を過る小さな勘。

 頬を染め、照れたような表情。ここ最近でこんな茉乃ちゃんを見たのは2回。一度目は恋の相談をされた時で、二度目は好きな人と付き合うと報告してくれた時。

 ――恋の相談かもしれない。

 だけど口には出さず、茉乃ちゃんの言葉を待つ。

「この前、例の人と付き合うことになったって報告したと思うんですけど……」
「うん。……何かあったとか?」

 困ってる感じには見えないから、喧嘩したとかそういうのではなさそう。だったら――嬉しい報告かな?

 どこか落ち着かないのは、茉乃ちゃんがこうして私に話をしてくれるのが、ただ嬉しいからだ。それだけ茉乃ちゃんが私に心を開いてくれてるってことだから――私としては、こんなに嬉しいことはない。


「いえ、何かあったんじゃないです。ただ、相手をお伝えしたくて……」
「相手?」
「はい。いずれお伝えしたいと思っていたので……」

 また茉乃ちゃんが頬を染めて、気まずそうに視線をそらす。
 茉乃ちゃんが好きになった相手……一体どんな人なんだろうと、気になってはいた。

 最初は苦手だった人で、確か……肝心な言葉をくれない人って茉乃ちゃんは言ってた。それでも無事に両想いで付き合うようになったことは嬉しい。

 だけど――。

「――久世社長です」
「……え?」
「私が付き合ってる人……LUNARIAの久世社長です」

 茉乃ちゃんがゆっくりと紡いだ秘密の告白。

 さすがにこれは予想外だ。
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