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1章
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しおりを挟む翌日は淀んだ曇り空が、新学期の朝を迎える。
立野は昨日自分を庇い、会長をもフォローしていった気に食わない人物について調べていた。そう、朝6時。挨拶運動はせずにただひたすらにエントランスの壁にもたれかかり、彼がいつ来てもすれ違わない時間に登校する。
朝練に向かう部活生を横目に、立野はぽつぽつとやってくる生徒を吟味する。
見つからないことに、ため息を一つ溢す。しかし、昨日、学校へ登校してきたのは本鈴が鳴るギリギリだったのを思い出す。もしかすると、今日早くに此処へ来たのは無駄足だったのかもしれない。その危惧は的中する。
待てども待てども奴は来ない。結局一般生徒がごった返してくる時間帯になっても現れず、本鈴が鳴る5分前に、ようやく奴と思しき人物が校門前まで歩いてきた。
近づけばより目立つちかちかする金髪は、教師の目を掻い潜ってエントランスに入ってくるでもなく、堂々と前を歩き、その検問を通り抜けてくるのだ。
目を疑った。制服の着崩しは絶妙に口をだすほどでもない程度である。だが、一番に口出すべき頭髪に、遠目からでも多少の言葉を交わしたのは見えるがそれ以上の接触も会話も見受けられない。
悠々に検問を通過したのを見て、目を疑うほかない。
こんなのが一条会長のことを一般生徒と同じように悪い感情を抱いていない。
それどころか、どこか理解者であるような、達観した物言いが立野の癪に障る。
これ以上の長居は自身も遅刻の心配が出てきた。マイペースにエントランスに向かってくる奴を尻目に、足音を消して教室へ戻った。
HRが始まり教師のくだらない戯言が続く。進学してまだ少ししか経っていないが、テストは来月にあり頑張るように、と。誰でも進学して一発目の試験くらいは真面目にやるものなのだ、おそらく担任は話すネタもボキャブラリーも乏しいのだろう。
「以前は学校全体が試験に対して、重く捉えて死にものぐるいでみんな点を取りに行ってたものだ。なぜなら、成績が悪い者は生徒会からのペナルティーが課せられるからだ。そのペナルティーも生徒会からだから、同じ学生に課せられる恥辱や屈辱がのしかかってくる。頑張らざるを得なかった時代が去年まではあったんだ。学生主体のいい制度だと思っていたんだけど今はそれが存在していない! その分お前らの自主性が大事だ。気を抜くなよ」
戯言が立野の耳につんざくように脳裏まで情報が伝達される。少なくとも、担任はカースト制度に賛成派の人間らしい。ここの学校のカースト制度の歴史は割と長いことを知っている。だからこそ、簡単に取り除けるものではないことも、勿論知っている。
それをたった1年で、完全に学生が怯えない自由な校風へと進化を遂げるにまで貢献した一条会長。彼の功績は讃えられるべきことであるのは確かだ。
しかし、なぜ彼がここまで旗を上げて、学校のために尽力したのか、その動機が知りたい。知った上で、一条にはカースト制度を復活させるべきだと口を大にして伝えたい。
一条の手で作り上げた学校は素晴らしいが、そのせいで一条自身がさらに手を煩わせる状況は作りたくないのだ。
それを鑑みると、立野の担任は現状の制度に不満があるらしい。
そういう教師は少なからず絶対に存在する。カースト制度は学生同士で牽制しあい見張り合う制度だ、教師の授業以外の雑務が減っていたのを裏付ける、「挨拶運動」。これは以前は学生のみで行われていた検問だ。しかし、今は生徒会という絶対的な地位も名誉もある役職に就きながら、教師の同伴も義務付けている。一条会長自ら提案したのだが、会長の尊厳を損ない兼ねないやり方だ。
立野がいくら朝早くから教師の居ない間に生徒を見張っていても、生徒の多くが登校する時間帯には教師が現れるし、風紀を乱した生徒が平気で教師の前でも歩いて行く。柳瀬も同様に。
――奴は狸のような不良だ――。
落ち着き払った振る舞いは、狡猾さをもひた隠しにする賢さをもっているように思わせる。さながら、ヤクザや極道の長を務めるような賢さだ。
奴と一条会長を鉢合わせてはいけない。そう思うと焦燥感に駆られて、じっとしていられない。
HRが終わって、すぐ離席する。
奴の名前から情報を集めなければ。
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