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——side菊池百合——
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「お前、もう飽きたわ」と目の前の狂犬に突き放された日の事は、菊池の中で大きな転機となっていた。
昼休みに弓月のいるクラスへ赴き、大きな弁当を広げてみんなでそれを囲って食べる。まるで「同じ窯の飯」を食べているような気分になる。この充足感は、弓月がもたらしてくれた恩恵ともいえる結果だった。
竜ヶ崎からの拒絶は、たしかに菊池の自尊心を大きく傷つける言葉であった。だが、そこに恋慕の類の悲しみは一切ない。
あるのは、拒絶された怒りと、竜ヶ崎もまた、自分と同じように外側しか見ていないことへの諦めだった。
無論、菊池は打算的にS校へ編入し、数少ない女生徒として、男たちの歓喜で優位感に浸っていた。だからこそ、竜ヶ崎は完全に人選ミスだった。菊池と同様に外側しか見ない人間であったのだから。
——否、竜ヶ崎は外側さえも全く気にしていなかった。
以前、菊池の自慢の黒髪をおもむろに触っていた竜ヶ崎。この行動が菊池の人選ミス発覚を遅らせる原因となったわけだが、そう言えば、一緒に昼食をしている弓月も漆黒で綺麗な黒髪だ。
そして、弓月は竜ヶ崎の幼馴染味であり、ずっと一緒にいる友人。良くも悪くも、誰よりも近い距離にいる関係性だ。
菊池は弓月と仲良くなってから常に思う。菊池の髪をよく弄っていた竜ヶ崎は、一体、誰の髪を想像して触っていたのだろう、と。
大きな弁当箱から弓月の分を取り分ける際には、一番自信のあるおかずを他の人よりも一品多くよそう。その特別視に気付かない様子で紙皿を受け取る弓月に、「弓月君のはちょっとだけ特別」と直接的な表現にしておく。感謝の念と、好意を抱いた控えめなアピール。
——「化粧落ちた顔の方が、断然綺麗だよ」。
弓月があの日菊池に放った衝撃的な言葉は忘れられない。その後、お手洗いで鏡を見たが、自身の思う以上に化粧崩れが酷かった。寝不足パンダよりもおどろおどろしい顔だ。
だが、厚化粧であったことに気付いた瞬間でもあった。
見てくればかりを見て、そして見られていた菊池は、いつの間にか「厚化粧」という重武装で外を歩いていたらしい。
だから、弓月は化粧が崩れた菊池を見て、綺麗だ、などと言ったのだろう。
それから厚化粧を止め、ナチュラルメイクに変えて軽装すると、気持ちまで軽くなったような気がした。弓月には、武装した菊池ではなく、最初からそれを脱いだ菊池を綺麗だと言ってくれたのだ。
そして、「今のナチュラルな感じも、あの日に思ってた通りイイね」と言われた刹那、菊池は今度こそ正解を導いたのだ。
——この人を好きなのは、間違いなく、正解だ。
菊池は弓月と他クラスに馴染んで昼食を取っていると、背筋が凍りついた。周りは談笑に花を咲かせていて、外部の視線に全く気付いていない。
(私を睨んでる……? やっぱり、いつも私の髪を触ってたのは——)
昼休みに弓月のいるクラスへ赴き、大きな弁当を広げてみんなでそれを囲って食べる。まるで「同じ窯の飯」を食べているような気分になる。この充足感は、弓月がもたらしてくれた恩恵ともいえる結果だった。
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あるのは、拒絶された怒りと、竜ヶ崎もまた、自分と同じように外側しか見ていないことへの諦めだった。
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——否、竜ヶ崎は外側さえも全く気にしていなかった。
以前、菊池の自慢の黒髪をおもむろに触っていた竜ヶ崎。この行動が菊池の人選ミス発覚を遅らせる原因となったわけだが、そう言えば、一緒に昼食をしている弓月も漆黒で綺麗な黒髪だ。
そして、弓月は竜ヶ崎の幼馴染味であり、ずっと一緒にいる友人。良くも悪くも、誰よりも近い距離にいる関係性だ。
菊池は弓月と仲良くなってから常に思う。菊池の髪をよく弄っていた竜ヶ崎は、一体、誰の髪を想像して触っていたのだろう、と。
大きな弁当箱から弓月の分を取り分ける際には、一番自信のあるおかずを他の人よりも一品多くよそう。その特別視に気付かない様子で紙皿を受け取る弓月に、「弓月君のはちょっとだけ特別」と直接的な表現にしておく。感謝の念と、好意を抱いた控えめなアピール。
——「化粧落ちた顔の方が、断然綺麗だよ」。
弓月があの日菊池に放った衝撃的な言葉は忘れられない。その後、お手洗いで鏡を見たが、自身の思う以上に化粧崩れが酷かった。寝不足パンダよりもおどろおどろしい顔だ。
だが、厚化粧であったことに気付いた瞬間でもあった。
見てくればかりを見て、そして見られていた菊池は、いつの間にか「厚化粧」という重武装で外を歩いていたらしい。
だから、弓月は化粧が崩れた菊池を見て、綺麗だ、などと言ったのだろう。
それから厚化粧を止め、ナチュラルメイクに変えて軽装すると、気持ちまで軽くなったような気がした。弓月には、武装した菊池ではなく、最初からそれを脱いだ菊池を綺麗だと言ってくれたのだ。
そして、「今のナチュラルな感じも、あの日に思ってた通りイイね」と言われた刹那、菊池は今度こそ正解を導いたのだ。
——この人を好きなのは、間違いなく、正解だ。
菊池は弓月と他クラスに馴染んで昼食を取っていると、背筋が凍りついた。周りは談笑に花を咲かせていて、外部の視線に全く気付いていない。
(私を睨んでる……? やっぱり、いつも私の髪を触ってたのは——)
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