イノセントキラー

ゴンザレス

文字の大きさ
18 / 33

しおりを挟む
 放課後、竜ヶ崎は生徒との接触を禁じられているが、構わずエントランスで人を待つ。それも一年の靴箱に寄り掛かって。

 それから暫くして、「竜ヶ崎さん、威圧的なんでここで待つのやめてもらっていいですか」と声のする方に顔を上げると、弓月と同じような漆黒の黒髪を持った男が竜ヶ崎に呆れた視線を送っている。

「何の話かは何となく理解してますけど、場所移動しましょう」

 竜ヶ崎の用件を聞かずに、革靴に履き替える男の背格好は弓月にクリソツだ。竜ヶ崎は乾いた笑いを飛ばして「どこまでも取り憑かれてんな」と一人ごちる。

 竜ヶ崎と男は学校を出て少ししたところから横並びになり、男から重苦しい空気を漂わせて口を開いた。「三浦先輩、どうなんすか」。

「今日から検査入院して、問題なければ明日明後日、退院らしい」
「……怪我の具合は?」
「頭部に10針以上縫ったが、それ以外の傷は無かった」
「……アンタが巻き込んだんな」

 これに無言で返すと、男は出し抜けに竜ヶ崎の胸ぐらを掴む。

 S校内外で最強と謳われる竜ヶ崎に、怒りの矛先を向ける年下の男は肝が据わっているらしい。胸ぐらを掴んでいる男の細っこい腕からは考えられない力で胸ぐらを掴み、眼光鋭く竜ヶ崎を睨め付ける。
 その様は、まるで竜ヶ崎の思惑と同じだ。

「アンタ。今まで負けなしじゃ無かったのかよ。この間まで三浦先輩を傷一つ付けてこなかったのに、なんで今回10針以上も縫う大怪我を負わせてんだよ!」

 竜ヶ崎は返す言葉もない。

「……何人相手だったんすか」
「覚えてない」
「——っはぁぁぁー。何で僕を加勢に呼ばないんすか! ぱっと見で数えらんない程いたんなら、そりゃ隙作られるでしょ!」

 胸ぐらを掴んでいた手を放し、頭を抱える男。「僕だって三浦先輩を守るためにそこそこ使えるようになったってのに」。

「呼ぶ暇なかった。昨日、弓月とは別行動だった——仕組まれてたが」
「三浦先輩は足止めされてて、どうしてか竜ヶ崎さんのいる場所まで来てしまった、と」

 竜ヶ崎がそれに頷いて肯定すれば、「だとすると、竜ヶ崎さんだけが狙いだとも取れるけど、実際は第三者が絡んでいて、ソイツが三浦先輩をその現場に近付けたくなかった、とも取れますね」と男は首を傾げた。

(コイツ……。ますます不愉快な男だ)

「お前が以前俺に接触してきた日、昨日の騒ぎの主犯だった岡田のとこの連中が、ちょっかいかけた後だったんだよ」
「あー……あそこは最近荒れてるって聞きます」
「今年そこから転校してきた奴が、ウチにいんだよ」

 「そんで弓月を誑かしてた」と言うと、男は目の色を変えてくる。それから、どんな奴だったのかと聞いてくる男と言葉を交わしていると、久々に弓月の純粋で可愛らしい表情と重なってしまう。

「じゃあ、三浦先輩を誑かしてたソイツが今回騒ぎを起こした張本人じゃないっすか! めちゃくちゃ簡単に見つかりましたね!」
「……ゆづがそれを否定した」

 詳しくは、弓月が菊池の存在を隠した、という方が正しい。情でも移ったのか、竜ヶ崎よりも菊池を庇ったのだ。回顧する度に沈痛な面持ちを隠せない。

「否定されたから何ですか。まさか、ウチの三浦先輩を信じねぇなんて馬鹿げたこと考えてないでしょうね」

 竜ヶ崎は年下の男に挑発、或いは煽られていると直感で感じた。そして、瞬間的に感じた怒りを気のままに男の胸ぐらを掴み返す。「ウチの? 誰にもやんねぇよ、オイ」。
 地を這うような低音ボイスが威嚇には丁度いい。

「……はいはい、やっと通常運転の竜ヶ崎さんに戻りましたね。じゃあ茶番はここまでにしときましょう」

 男は両手を上げて早々に降参ポーズをとる。呆気に取られる竜ヶ崎に「此処、まだ学校付近っス。騒ぎ起こすと、今度こそ退学っスよ」とため息を溢す。

「退学になれば、今回みたく臨時で僕を呼ぶだけに収まりませんよ」

 そういうと男は気軽に問う。「で? 耳まで垂らして、何をそんなにしょげてんすか。三浦先輩が否定しようが、ソイツが事の発端かもしれない可能性があるんすよ。問い詰めない理由がどこにあります?」。

「お前、やっぱり嫌いだ」
「あざーす! さっきから弱気な回答しかしないもんで、もしかしたら、狂犬の耳が珍しく垂れてると思って、喝を入れてやったまでっスよ!」

(珍しくって……いつも見てきた素振りを見せやがって)

 そう言って、「僕はただ、三浦先輩を敬愛しているだけなんで、安心してください」と男は屈託なく笑った。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

百合豚、男子校に入る。

BL
百合をこよなく愛する男子高校生・眞辺恵。 母の歪んだ価値観により共学への進学を断たれ、彼が入学させられたのは―― 男同士の恋愛が“文化”として成立している、全寮制男子校《私立瑞嶺学園》だった。 この学園では、生徒会長は「抱かれたいランキング」で選ばれ、美貌こそが正義とされる世界。 それでも眞辺は決意する。 生徒会長になり、この学校を“共学”に変え、間近で百合を拝むことを。 立ちはだかるのは、顔面至上主義の学園制度、性に奔放すぎるイケメンな幼馴染、そして彼らに憧れ恋をする生徒たち。 さらに何故か、学園の人気者たちに次々と目をつけられてしまい――。 百合を拝むため男子校を変えようとする異端者が、歪んだ王道学園を改革する物語。

【完結・BL】春樹の隣は、この先もずっと俺が良い【幼馴染】

彩華
BL
俺の名前は綾瀬葵。 高校デビューをすることもなく入学したと思えば、あっという間に高校最後の年になった。周囲にはカップル成立していく中、俺は変わらず彼女はいない。いわく、DTのまま。それにも理由がある。俺は、幼馴染の春樹が好きだから。だが同性相手に「好きだ」なんて言えるはずもなく、かといって気持ちを諦めることも出来ずにダラダラと片思いを続けること早数年なわけで……。 (これが最後のチャンスかもしれない) 流石に高校最後の年。進路によっては、もう春樹と一緒にいられる時間が少ないと思うと焦りが出る。だが、かといって長年幼馴染という一番近い距離でいた関係を壊したいかと問われれば、それは……と踏み込めない俺もいるわけで。 (できれば、春樹に彼女が出来ませんように) そんなことを、ずっと思ってしまう俺だが……────。 ********* 久しぶりに始めてみました お気軽にコメント頂けると嬉しいです ■表紙お借りしました

隣の番は、俺だけを見ている

雪兎
BL
Ωである高校生の湊(みなと)は、幼いころから体が弱く、友人も少ない。そんな湊の隣に住んでいるのは、幼馴染で幼少期から湊に執着してきたαの律(りつ)。律は湊の護衛のように常にそばにいて、彼に近づく人間を片っ端から遠ざけてしまう。 ある日、湊は学校で軽い発情期の前触れに襲われ、助けてくれたのもやはり律だった。逃れられない幼馴染との関係に戸惑う湊だが、律は静かに囁く。「もう、俺からは逃げられない」――。 執着愛が静かに絡みつく、オメガバース・あまあま系BL。 【キャラクター設定】 ■主人公(受け) 名前:湊(みなと) 属性:Ω(オメガ) 年齢:17歳 性格:引っ込み思案でおとなしいが、内面は芯が強い。幼少期から体が弱く、他人に頼ることが多かったため、律に守られるのが当たり前になっている。 特徴:小柄で華奢。淡い茶髪で色白。表情はおだやかだが、感情が表に出やすい。 ■相手(攻め) 名前:律(りつ) 属性:α(アルファ) 年齢:18歳 性格:独占欲が非常に強く、湊に対してのみ甘く、他人には冷たい。基本的に無表情だが、湊のこととなると感情的になる。 特徴:長身で整った顔立ち。黒髪でクールな雰囲気。幼少期に湊を助けたことをきっかけに執着心が芽生え、彼を「俺の番」と心に決めている。

人族は一人で生きられないらしい――獣人公爵に拾われ、溺愛されて家族になりました

よっちゃん
BL
人族がほとんど存在しない世界に、 前世の記憶を持ったまま転生した少年・レオン。 獣人が支配する貴族社会。 魔力こそが価値とされ、 「弱い人族」は守られるべき存在として扱われる世界で、 レオンは常識の違いに戸惑いながらも必死に生きようとする。 そんな彼を拾ったのは、 辺境を治める獣人公爵アルト。 寡黙で冷静、しかし一度守ると決めたものは決して手放さない男だった。 溺愛され、守られ、育てられる日々。 だが、レオンはただ守られるだけの存在で終わることを選ばない。 学院での出会い。 貴族社会に潜む差別と陰謀。 そして「番」という、深く重い絆。 レオンは学び、考え、 自分にしかできない魔法理論を武器に、 少しずつ“並び立つ覚悟”を身につけていく。 獣人と人族。 価値観も、立場も、すべてが違う二人が、 それでも選び合い、家族になるまでの物語。 溺愛×成長×異世界BL。 読後に残るのは、 「ここに居場所があっていい」と思える、あたたかな幸福。

陰キャ系腐男子はキラキラ王子様とイケメン幼馴染に溺愛されています!

はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。 まったり書いていきます。 2024.05.14 閲覧ありがとうございます。 午後4時に更新します。 よろしくお願いします。 栞、お気に入り嬉しいです。 いつもありがとうございます。 2024.05.29 閲覧ありがとうございます。 m(_ _)m 明日のおまけで完結します。 反応ありがとうございます。 とても嬉しいです。 明後日より新作が始まります。 良かったら覗いてみてください。 (^O^)

ある日、友達とキスをした

Kokonuca.
BL
ゲームで親友とキスをした…のはいいけれど、次の日から親友からの連絡は途切れ、会えた時にはいつも僕がいた場所には違う子がいた

「短冊に秘めた願い事」

星井 悠里
BL
何年も片思いしてきた幼馴染が、昨日可愛い女の子に告白されて、七夕の今日、多分、初デート中。 落ち込みながら空を見上げて、彦星と織姫をちょっと想像。  ……いいなあ、一年に一日でも、好きな人と、恋人になれるなら。   残りの日はずっと、その一日を楽しみに生きるのに。 なんて思っていたら、片思いの相手が突然訪ねてきた。 あれ? デート中じゃないの?  高校生同士の可愛い七夕🎋話です(*'ω'*)♡ 本編は4ページで完結。 その後、おまけの番外編があります♡

処理中です...