もう一つの凶器

深海雄一郎

文字の大きさ
2 / 33

臨場

しおりを挟む
警視庁捜査一課が、通報を受けて、藤木荘に急行した。刑事たちは、通報者の、管理人の谷合によって、三階にある、被害者の部屋まで案内された。

捜査を担当することになった、主任警部補の、矢口は、玄関に入ってすぐの、畳の上で刺殺されている被害者の遺体を見下ろした。木嶋修一、年齢は45歳、無職。遺体のすぐ隣には、使用された凶器の刃物が残されていた。検視官の報告によれば、死因は、ナイフによる腹部の出血死である。死亡推定時刻は、午前七時から午前8時ごろの可能性が高いということである。発見者の管理人の証言によれば、発見した際に、部屋のドアには鍵がかかっていなかったらしい。鍵穴に細工した跡がないことから、インターホンの音で、被害者がドアを開けて犯人と鉢合わせをしたということになる。その犯人は、被害者の知人の可能性が高いだろうと、矢口は思った。もし、これが強盗目的の犯行なのであれば、部屋は荒らされて、金品が強奪されているはずである。だが、室内には荒らされた形跡がない。また、部屋の机の引き出しには、現金数千円の入った財布と通帳、身分証明書などが入っていた。

『主任、ちょっと来てください』部屋の押入れの方を調べていた若い刑事が興奮した口調で言った。『どうした』矢口が行くと、若い刑事は、新聞紙に包まれた、血が乾いてべっとりとした古びたナイフを、上司に見せた。

『これが押入れの中に入っていました。』
『随分と前に使用された凶器だな。この部屋に住んでいた被害者が、隠し持っていたということになるが、問題はなぜ、被害者が隠し持っていたか』
この部屋の被害者を殺した犯人が、室内の押し入れに、もう一つの凶器を、わざわざ入れる訳はない。そうする理由が見つからない。当然、この凶器を使用した犯人は、今回の犯人とは、別人ということになる。

遺体は、大学病院に運ばれて、二つの凶器は、それぞれ科捜研に送られた。

しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

ある辺境伯の後悔

だましだまし
恋愛
妻セディナを愛する辺境伯ルブラン・レイナーラ。 父親似だが目元が妻によく似た長女と 目元は自分譲りだが母親似の長男。 愛する妻と妻の容姿を受け継いだ可愛い子供たちに囲まれ彼は誰よりも幸せだと思っていた。 愛しい妻が次女を産んで亡くなるまでは…。

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

三十年後に届いた白い手紙

RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。 彼は最後まで、何も語らなかった。 その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。 戴冠舞踏会の夜。 公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。 それは復讐でも、告発でもない。 三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、 「渡されなかった約束」のための手紙だった。 沈黙のまま命を捨てた男と、 三十年、ただ待ち続けた女。 そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。 これは、 遅れて届いた手紙が、 人生と運命を静かに書き換えていく物語。

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

【1話完結】あなたの恋人は毎夜わたしのベッドで寝てますよ。

ariya
ファンタジー
ソフィア・ラテットは、婚約者アレックスから疎まれていた。 彼の傍らには、いつも愛らしい恋人リリアンヌ。 婚約者の立場として注意しても、アレックスは聞く耳を持たない。 そして迎えた学園卒業パーティー。 ソフィアは公衆の面前で婚約破棄を言い渡される。 ガッツポーズを決めるリリアンヌ。 そのままアレックスに飛び込むかと思いきや―― 彼女が抱きついた先は、ソフィアだった。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

処理中です...