深海雄一郎

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とうとう殺してしまった。床に横たわっている、妻の死体を見ながら夫はこう思った。この女と結婚したのは、金目当てであった。女の実家は大変な資産家で、その資金の援助で、自分の会社を作って成功を収めた。成功して、金が手に入れば、もう女は用済みであった。離婚話を切り出したが、女はなかなか了承しなかった。もし離婚するなら、多額の慰謝料を請求したり、株主総会で自分を社長の地位から解任すると言い出した。株の大半は、女とその一族で占めていた。だから、鈍器で頭を殴って殺した。殺したことについては、仕方がないとして、問題はこの死体をどうするかであった。死体さえなくせば、自分が殺人罪に問われることはないのだ。男は、考えるのは一旦やめて、顔に血がついてないか、確認しようと、手洗いの近くにある鏡を覗いた。だが、映ったのは自分の顔ではなく、鬼の形相をしている妻の顔であった。
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