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12話:最愛との別れ(レティシア視点)
しおりを挟むライルが魔物討伐に出発した日、私は一人寂しく眠りについた。
私は夢の中で、双子の母親になっていた。
二卵性のようだった。
金の髪の女の子たちだった。
一人は、私に似ていた。
もう一人は、誰に似たのかわからなかったけれども、綺麗な顔立ちの赤子だった。
翌日、邸内が騒がしくなった。
何事かと階下へ降りていくと、お父様が血相を変えて私に部屋へ戻りなさい、と言った。
あんなお父様は、初めて、どうしたのかしら。
リリー姉様に促されて部屋に戻ろうとすると、「あなた様がレティシア様ですね?」と声がかかった。
振り返ると、知らない男の人が私に話があると言う。
「レティシア、聞かなくていい!部屋に戻りなさい!」とまたお父様の声が響く。
まさか、ライルに何か?
「ライルに何かあったのですか?」
「あなた様のご夫君でしたな。関係のあることです。お話を?」
「聞きます。」
お父様がまだ何か言っていたけれど、もう私は、心臓がバクバクして気が気でなかった。
そして、男の仲間たちが、お父様を制しているのが見えた。
「お父様に手荒なことはなさらないで。」
「勿論でございます。」
「では、こちらへ。」
私たちは、応接室で話すことにした。
「まずはこちらをご覧ください。」
ドキドキしながらその書面に目を通すと、借用書だった。
「こ、これは?」
「子爵、あなたのお父上の借財です。」
「え?」
「早い話が、お父上の借金をアーデン侯爵が立替ました。そして、アーデン侯爵からお父上に借金の返済要求をした、ということです。」
「!! き、期日は・・。」
「今日にでもお支払いただきたいところですが、5日待ちましょう。」
(5日、この金額をたった5日で?)
「あ、あなたは?」
「アーデン侯爵から依頼された借金の取り立て人です。」
「!・・わ、私に話とは、いえ、それよりもライルのことを・・。」
「この借金は、あなた様のためにしたものです。」
「私の為・・、あ!」
「そうです、心の臓の薬は高価なのですよ。」
「そ、それが、ライルとどのような関係が・・。」
(この時の私は、情けなくも震えていた・・。)
「あなた様がアーデン侯爵のものになるのなら、借金は帳消しにしてもよいと仰っています。」
「わ、私は既にライルの妻です。」
「はい、ですから、ご夫君にも関係があると申しました。どうなさいますか。
期日までに全額を返していただけない場合は、子爵位を売っていただくことになります。」
「な!・・・。す、少し、か、考える時間を・・。」
「では、明日また来ます。」
「き、期日は5日と。」
「そう申し上げましたが、明日でも5日後でも同じだと思いますが?」
「・・・。」
「では、明日お迎えに参ります。」
「!レティシア様は、行くとは申されておりません!」
男はチラリとミリーを見て、フッと皮肉げに笑い帰っていった。
お父様もお兄様も、爵位などなくしてもよいと仰った。
そんなわけないのに・・・。
・・家族には、大切に愛情深く育ててもらった。
その上、はじめて好きになった人と両想いになれ、結婚できた。
大切にしてくれ、愛されていると心から感じた。
妻となって、街へ出かけ、森も散策した。
人はたった1週間と言うだろうが、私には、とても濃密な充実した1週間だった。
あ・・・、お兄様に婚約者がいないのは・・。
お母様は、新しいドレスを何年も仕立てていない、わ。
私は愛してもらってばかりね・・・。
・・・死ぬこともできない。
家族を悲しませるだけ。そして家族は路頭に迷う。
今後、会うこともできない。私に会えば、苦しませるだけだろう。
私のために負った借金で、私がそのカタになるのは至極当然だ。
借金が無くなれば、暮らし向きも楽になるはず。お兄様も結婚できるわ。
ああ、でもライル、本当にごめんなさい。死が私たちを別つのではなく、このような形であなたの前から消えることになって。
あなたに何も告げることができない私を許さなくていいわ。憎んで。だから、忘れないで。
ライルがここにいなくて、よかったわ。
彼なら私を連れて逃げようとしたかもしれない。
家族も賛成したでしょう、きっと。ふふ。
・・ううっ、今は泣いちゃダメ、しっかりするのよレティシア!
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