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4話 理斗
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「でもさ、僕、小学生の時とかさ、髪の毛も目も真っ黒でカラスみたいっていじめられてたんだ。だから、その、アルビノに憧れてたっていうか…」
自分が何を言いたいのかよくわからないけど、からかってるわけじゃない事を伝えないと…
『…そう。私は黒﨑君のような漆黒の髪と瞳に憧れるわ。』
ドキッ
僕に憧れてるわけじゃない。黒い髪と目に憧れてるんだ。でも、誤解してしまう…
『私のこの体質は、人種差別とかそういうのではないのだけれど、迫害の目からは逃れられないの。理解がある人だって多くないから。だから私は普通に生まれたかった。』
「そ、そうなんだ…」
相づちをうつことしかできない。“普通”に生まれた僕にはわからない苦悩を抱えているのだ。
「で、でもさ。黒ってどんな色も黒に変えてしまうけど、白は濃い色を淡くする事ができるし、何色に染まる事もできるでしょ?そういうのが外見に現れているような気がするから、僕は、アルビノの人は、なんていうか…羨ましい、かな。」
『…』
宮澤さんが、微妙な表情でいることに気がついたのは、そう言い終わった後だった。
(やば、なんか、変なこと言ったかも…!)
「あ、あの、やっぱ忘れて。変なこと言って…ごめん…」
沈黙。あ、嫌われたな。なんだこいつって思われたな。
そう思ったけど、かえってきたのは思いもよらない一言だった。
『ううん。むしろ、有り難う。』
“アリガトウ”?
「え?僕、なんか…した…?」
思わず問いかけてしまった。
『ええ。私に、はじめてアルビノに生まれて良かったかも、って。思わせてくれたわ。』
そういって、彼女は、少し恥ずかしそうにはにかんだ。
僕は、
彼女に惚れ直した。
それから、宮澤さんは自分の過去についてぽつりぽつりと話してくれた。
体質のせいで外で遊べなかったこと。“ある事件”をきっかけに友達と遊ぶことを禁じられたこと。友達との間に深い溝が生まれたこと。それがきっかけでいじめられるようになったこと。誰も信じられなくなったこと。
___自分が嫌いになったこと。
それらは全て、とても心が痛むものだった。感情移入して泣きそうになる。
『なんか、嫌な話をしてしまって、ごめんなさいね。不快な思いをさせてしまったかしら…』
困ったような表情で見つめてくる。
「あ、ううん。大丈夫だよ。ただ、すごく、大変だったんだなって。それなのに憧れるとか、軽率だったなって…」
猛反省中である。僕の過去とはくらべものにならないくらい、辛い思いをしてきたんだな。
『いいのよ。今まで誰にも話したこと無かったのだけれど、黒﨑君に話せて、気持ちが軽くなった気がするわ。色々ありがとう。』
「え!?そ、そんな、お礼なんて…大丈夫だよ…」
僕にだけ話してくれた、ということに優越感を覚えたところでチャイムがなった。
『そろそろ、戻りましょうか。』
「そ、そうだね…」
あれ?なんか、僕、普通に話せてる?
なんか、宮澤さんと話してると、緊張がほぐれるっていうか…
「落ち着くんだよなぁ…」
『え?なにか、言ったかしら?』
(やべっ口に出してた!)
「いや、あの、宮澤さんて、いつもここで食べてるの?」
できれば、これからも一緒に昼休みを過ごしたい。一緒にいる時間が長いほど恋に発展するものだ。
『ええ、まあ大体…ここね。』
「そうなんだ。あの、もしよかったらなんだけど、これからも僕、ここで食べても…良い、かな…」
お願い。OKしてくれ。メンタルが崩れ落ちてしまう。
『別に、良いんじゃない?』
(よしっ!)
「あ、ありがとう…」
前途は…多難だけど…
一歩前進!
ここからだ。ここからが勝負時だ。慎重に、慎重に、この関係を、特別なものにするんだ。
自分が何を言いたいのかよくわからないけど、からかってるわけじゃない事を伝えないと…
『…そう。私は黒﨑君のような漆黒の髪と瞳に憧れるわ。』
ドキッ
僕に憧れてるわけじゃない。黒い髪と目に憧れてるんだ。でも、誤解してしまう…
『私のこの体質は、人種差別とかそういうのではないのだけれど、迫害の目からは逃れられないの。理解がある人だって多くないから。だから私は普通に生まれたかった。』
「そ、そうなんだ…」
相づちをうつことしかできない。“普通”に生まれた僕にはわからない苦悩を抱えているのだ。
「で、でもさ。黒ってどんな色も黒に変えてしまうけど、白は濃い色を淡くする事ができるし、何色に染まる事もできるでしょ?そういうのが外見に現れているような気がするから、僕は、アルビノの人は、なんていうか…羨ましい、かな。」
『…』
宮澤さんが、微妙な表情でいることに気がついたのは、そう言い終わった後だった。
(やば、なんか、変なこと言ったかも…!)
「あ、あの、やっぱ忘れて。変なこと言って…ごめん…」
沈黙。あ、嫌われたな。なんだこいつって思われたな。
そう思ったけど、かえってきたのは思いもよらない一言だった。
『ううん。むしろ、有り難う。』
“アリガトウ”?
「え?僕、なんか…した…?」
思わず問いかけてしまった。
『ええ。私に、はじめてアルビノに生まれて良かったかも、って。思わせてくれたわ。』
そういって、彼女は、少し恥ずかしそうにはにかんだ。
僕は、
彼女に惚れ直した。
それから、宮澤さんは自分の過去についてぽつりぽつりと話してくれた。
体質のせいで外で遊べなかったこと。“ある事件”をきっかけに友達と遊ぶことを禁じられたこと。友達との間に深い溝が生まれたこと。それがきっかけでいじめられるようになったこと。誰も信じられなくなったこと。
___自分が嫌いになったこと。
それらは全て、とても心が痛むものだった。感情移入して泣きそうになる。
『なんか、嫌な話をしてしまって、ごめんなさいね。不快な思いをさせてしまったかしら…』
困ったような表情で見つめてくる。
「あ、ううん。大丈夫だよ。ただ、すごく、大変だったんだなって。それなのに憧れるとか、軽率だったなって…」
猛反省中である。僕の過去とはくらべものにならないくらい、辛い思いをしてきたんだな。
『いいのよ。今まで誰にも話したこと無かったのだけれど、黒﨑君に話せて、気持ちが軽くなった気がするわ。色々ありがとう。』
「え!?そ、そんな、お礼なんて…大丈夫だよ…」
僕にだけ話してくれた、ということに優越感を覚えたところでチャイムがなった。
『そろそろ、戻りましょうか。』
「そ、そうだね…」
あれ?なんか、僕、普通に話せてる?
なんか、宮澤さんと話してると、緊張がほぐれるっていうか…
「落ち着くんだよなぁ…」
『え?なにか、言ったかしら?』
(やべっ口に出してた!)
「いや、あの、宮澤さんて、いつもここで食べてるの?」
できれば、これからも一緒に昼休みを過ごしたい。一緒にいる時間が長いほど恋に発展するものだ。
『ええ、まあ大体…ここね。』
「そうなんだ。あの、もしよかったらなんだけど、これからも僕、ここで食べても…良い、かな…」
お願い。OKしてくれ。メンタルが崩れ落ちてしまう。
『別に、良いんじゃない?』
(よしっ!)
「あ、ありがとう…」
前途は…多難だけど…
一歩前進!
ここからだ。ここからが勝負時だ。慎重に、慎重に、この関係を、特別なものにするんだ。
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