6 / 6
火種
6
しおりを挟む
朝食を済ませた悦子は
「なずなさん、私もちょっと出かけるから鍵を渡しておくわ。こっちがシャッター、こっちは玄関。夕飯は翔くんに美味しいものをご馳走してもらってね」
「悦ちゃん、いってきま~す」
「悦ちゃんも出かけるなら車でどこでも送っていくけど……」
翔が悦子に声を掛けたが
「私は大丈夫よ。2人で仲良くいってらっしゃい」
翔とペンペンは軽のワンボックスに乗り込んで雨の天六商店街を西に向かって走った。
「とりあえず西の端まで案内するよ、こんな小さな町だけど商店街は1.2kmもあって、昔はたくさんの店があったんだぜ」
「今はシャッターが閉まってるお店が多いのね」
「水曜日が休みの店も多いから……。この右側が駅。ちょうど商店街の真ん中、権兵衛食堂から駅までが天六東商店街、駅から先が天六西商店街って呼ばれてたけど、もう店の数も少ないから全部まとめて天六商店街」
「旧街道って感じの建物もたくさん残っているのね。屋根瓦の色がとってもいい雰囲気」
「ああ~、ずっとここに住んでるとただのボロ家が並んでるだけにしか見えないけど、そう言われるとなんだか嬉しいな」
「空き家が取り壊されてどんどん駐車場に変わっていくけど、車で買い物に出るなら商店街よりバイパス沿のショッピングセンターに行くよな。何でも揃ってるし広い無料駐車場もあるから」
「商店街の会長がそんなに弱気でどうするの!」
「そこがアウトレット。俺の服から靴まで全部ここで買ったんだ。全部でいくらすると思う?」
「う~ん、ビシッと決まってるから靴まで入れたら3万円は超えるかな?」
「ざんね~ん、全部で5千円でお釣りがくる」
「げ、激安!本当にアウトレットなのね」
翔は商店街の駐車場に車を停めた。
車から降りたペンペンが見上げると、そこには
【田舎のアウトレット 水口洋品店】と書かれた毒々しいピンクの看板が出ていた。店先にはこれまた毒々しいキラキラが付いたワンピースを着たおばちゃんが立っている。この店の経営者、水口裕子である。
「裕子さん、こんちわ~。お客さん連れてきたからお店の中の説明してあげて」
「あら、翔会長いらっしゃい。翔くんの彼女?この商店街の未来を担う会長の彼女ならついてる値札から全品50%オフにしちゃうから何でも好きなものを探してね」
「平山なずなです。残念ながら翔くんの彼女じゃないんですけど、将来彼女になる可能性は0じゃないかもしれないので割引サービスお願いします」
「あら、なかなかのしっかり者ね。気に入った」
田舎のアウトレット水口洋品店の店主裕子は店内の案内を始めた。
「まずは店頭ワゴン。ここにある物はどれでも300円。ちょっと訳アリなお洋服。少し柄がズレたり、色むらがあったり、大きかったり小さかったりで売れ残ってシーズンを超えてしまった物よ。気に入った物があったらお買い得。お店の中のこの辺りは肌着類、子ども用からお年寄り向けまで豊富にラインナップしてるつもりよ。肌着は直接身に着ける大切な物だから一流メーカーの物だけしか置いてないけど、ちょっと前のモデルをお安く仕入れているの。肌着コーナーは半額サービス対象外よ。それからこっちがレディースのお洋服と靴や帽子、反対がメンズとキッズ、一番奥は寝具類。問屋さんで売れ残った物、在庫して倉庫で眠っていて廃棄される物をただ同然で引き取って来ている物がほとんどだからお安くできるのよ」
「大量生産された服が大量に捨てられてるって話しをニュースで見ました。もったいないなって」
「そうよ、焼却処分するにもお金が掛かるし、生地を作った人、服を縫った人の気持ちを考えたら生かしてあげたい気持ちわかるでしょ」
この辺りは昔から養蚕が盛んで繊維関係の問屋や縫製業者も多かったが今はほとんどの洋服が輸入品になった。この店の商品にはサイズや洗濯方法を書いたタグはついているが、肌着類を除いて、メーカーのブランドネームはすべて外されている。仕入れた後で裕子が1点ずつ手作業で外してから店頭に出しているのだ。
そうすることで安売りによるブランドイメージの低下を防ぐ代わりに、安価で仕入れているのが水口洋品店の秘密であった。
つまり、見る人が見ればどこのブランドの服かわかるような高品質な物も多数含まれていた。
「なあ、ペンペン。田舎のアウトレットはただの安売り店じゃなくて人にも、服にも、地球にも優しいエコな店なんだぜ」
「ほんとね~。お店の写真とか撮らせてもらっていいですか?」
「もちろんいいわよ。但し、このおばちゃんの顔はきれ~いに撮ってね。お店はどうでもいいから」
ペンペンは店の外観や中の商品、それから毒々しい裕子のとびっきりの笑顔の写真を何枚も撮りながら、自分が着る服を選んでいた。
「ねえ、翔くん。私って仕事の時は制服でその他は家でも外でもジャージとかスポーツ系の服ばかり着てるから一緒に選んでよ」
「確かに俺が知ってるペンペンはいつも臙脂色か緑のだっせ~学校ジャージだな。もうすぐ一気に秋が来て寒くなるのを考えつつ選んでみたら?裾がタイトなストレッチのパンツなら近所を自転車で走るときも便利だし」
そう言いながら翔が選んだのはダークネイビーのパンツ、真っ白いボタンダウンのシャツ、ベージュのコットンセーター、アイボリーのショートコートにアイボリーのスエードスニーカーであった。
「ちょっと試着してみるね」
自分が選んだ服をペンペンが着ることに翔はおかしなドキドキを覚えて一旦店の外に出た。
傘がいらない程度の霧雨が降っている。
試着室から出てきたペンペンが外にいる翔に向かって手を振る。
「ねえ~どうかな?」
自転車で旅をするペンペンの肌は浅黒く、引き締まった身体付きだった。サイクリングジャージとも学校ジャージとも違うペンペンの姿を見た翔の口から出た言葉は
「エロい、エロ過ぎる! でも似合ってる」
裕子は
「翔!女の子になんてこと言うの! せめてセクシーとか言い方ってもんがあるでしょ!でも女の私から見てもジャージよりはかなりエロいわね。そのまま着て出かけるんでしょ?着てきたジャージを袋に入れてあげるからこっちへ寄越して」
そういうとペンペンのジャージを布製のエコバッグに入れた。
会計は全部合わせて5千円でお釣りが来た。
「商品は毎日新しいのが増えるから明日も明後日も見に来てね」
「裕子さんありがとうございます。ここってキャッシュレスとか対応してますか?」
「ほとんど大丈夫よ。商店街の中で一番ナウいスポットだから」
「忙しくなったら手伝いに来ますから呼んでください」
「忙しくなったらね。じゃあLINE教えて。地元のマダムたちが来るだけだから人手が足りないほど忙しいなんてことはないんだけどね。いつでも遊びにおいで」
「きっと忙しくなりますよ、あっ私のことペンペンって呼んでください。なずななので、ペンペン草のペンペン!」
ペンペンは笑顔で裕子に手を振り店を出た。
「昼飯食べに行こうか?」
「翔くん、車の中で今の写真をSNSにアップするからちょっと待ってね。ちょっとだけ」
「なずなさん、私もちょっと出かけるから鍵を渡しておくわ。こっちがシャッター、こっちは玄関。夕飯は翔くんに美味しいものをご馳走してもらってね」
「悦ちゃん、いってきま~す」
「悦ちゃんも出かけるなら車でどこでも送っていくけど……」
翔が悦子に声を掛けたが
「私は大丈夫よ。2人で仲良くいってらっしゃい」
翔とペンペンは軽のワンボックスに乗り込んで雨の天六商店街を西に向かって走った。
「とりあえず西の端まで案内するよ、こんな小さな町だけど商店街は1.2kmもあって、昔はたくさんの店があったんだぜ」
「今はシャッターが閉まってるお店が多いのね」
「水曜日が休みの店も多いから……。この右側が駅。ちょうど商店街の真ん中、権兵衛食堂から駅までが天六東商店街、駅から先が天六西商店街って呼ばれてたけど、もう店の数も少ないから全部まとめて天六商店街」
「旧街道って感じの建物もたくさん残っているのね。屋根瓦の色がとってもいい雰囲気」
「ああ~、ずっとここに住んでるとただのボロ家が並んでるだけにしか見えないけど、そう言われるとなんだか嬉しいな」
「空き家が取り壊されてどんどん駐車場に変わっていくけど、車で買い物に出るなら商店街よりバイパス沿のショッピングセンターに行くよな。何でも揃ってるし広い無料駐車場もあるから」
「商店街の会長がそんなに弱気でどうするの!」
「そこがアウトレット。俺の服から靴まで全部ここで買ったんだ。全部でいくらすると思う?」
「う~ん、ビシッと決まってるから靴まで入れたら3万円は超えるかな?」
「ざんね~ん、全部で5千円でお釣りがくる」
「げ、激安!本当にアウトレットなのね」
翔は商店街の駐車場に車を停めた。
車から降りたペンペンが見上げると、そこには
【田舎のアウトレット 水口洋品店】と書かれた毒々しいピンクの看板が出ていた。店先にはこれまた毒々しいキラキラが付いたワンピースを着たおばちゃんが立っている。この店の経営者、水口裕子である。
「裕子さん、こんちわ~。お客さん連れてきたからお店の中の説明してあげて」
「あら、翔会長いらっしゃい。翔くんの彼女?この商店街の未来を担う会長の彼女ならついてる値札から全品50%オフにしちゃうから何でも好きなものを探してね」
「平山なずなです。残念ながら翔くんの彼女じゃないんですけど、将来彼女になる可能性は0じゃないかもしれないので割引サービスお願いします」
「あら、なかなかのしっかり者ね。気に入った」
田舎のアウトレット水口洋品店の店主裕子は店内の案内を始めた。
「まずは店頭ワゴン。ここにある物はどれでも300円。ちょっと訳アリなお洋服。少し柄がズレたり、色むらがあったり、大きかったり小さかったりで売れ残ってシーズンを超えてしまった物よ。気に入った物があったらお買い得。お店の中のこの辺りは肌着類、子ども用からお年寄り向けまで豊富にラインナップしてるつもりよ。肌着は直接身に着ける大切な物だから一流メーカーの物だけしか置いてないけど、ちょっと前のモデルをお安く仕入れているの。肌着コーナーは半額サービス対象外よ。それからこっちがレディースのお洋服と靴や帽子、反対がメンズとキッズ、一番奥は寝具類。問屋さんで売れ残った物、在庫して倉庫で眠っていて廃棄される物をただ同然で引き取って来ている物がほとんどだからお安くできるのよ」
「大量生産された服が大量に捨てられてるって話しをニュースで見ました。もったいないなって」
「そうよ、焼却処分するにもお金が掛かるし、生地を作った人、服を縫った人の気持ちを考えたら生かしてあげたい気持ちわかるでしょ」
この辺りは昔から養蚕が盛んで繊維関係の問屋や縫製業者も多かったが今はほとんどの洋服が輸入品になった。この店の商品にはサイズや洗濯方法を書いたタグはついているが、肌着類を除いて、メーカーのブランドネームはすべて外されている。仕入れた後で裕子が1点ずつ手作業で外してから店頭に出しているのだ。
そうすることで安売りによるブランドイメージの低下を防ぐ代わりに、安価で仕入れているのが水口洋品店の秘密であった。
つまり、見る人が見ればどこのブランドの服かわかるような高品質な物も多数含まれていた。
「なあ、ペンペン。田舎のアウトレットはただの安売り店じゃなくて人にも、服にも、地球にも優しいエコな店なんだぜ」
「ほんとね~。お店の写真とか撮らせてもらっていいですか?」
「もちろんいいわよ。但し、このおばちゃんの顔はきれ~いに撮ってね。お店はどうでもいいから」
ペンペンは店の外観や中の商品、それから毒々しい裕子のとびっきりの笑顔の写真を何枚も撮りながら、自分が着る服を選んでいた。
「ねえ、翔くん。私って仕事の時は制服でその他は家でも外でもジャージとかスポーツ系の服ばかり着てるから一緒に選んでよ」
「確かに俺が知ってるペンペンはいつも臙脂色か緑のだっせ~学校ジャージだな。もうすぐ一気に秋が来て寒くなるのを考えつつ選んでみたら?裾がタイトなストレッチのパンツなら近所を自転車で走るときも便利だし」
そう言いながら翔が選んだのはダークネイビーのパンツ、真っ白いボタンダウンのシャツ、ベージュのコットンセーター、アイボリーのショートコートにアイボリーのスエードスニーカーであった。
「ちょっと試着してみるね」
自分が選んだ服をペンペンが着ることに翔はおかしなドキドキを覚えて一旦店の外に出た。
傘がいらない程度の霧雨が降っている。
試着室から出てきたペンペンが外にいる翔に向かって手を振る。
「ねえ~どうかな?」
自転車で旅をするペンペンの肌は浅黒く、引き締まった身体付きだった。サイクリングジャージとも学校ジャージとも違うペンペンの姿を見た翔の口から出た言葉は
「エロい、エロ過ぎる! でも似合ってる」
裕子は
「翔!女の子になんてこと言うの! せめてセクシーとか言い方ってもんがあるでしょ!でも女の私から見てもジャージよりはかなりエロいわね。そのまま着て出かけるんでしょ?着てきたジャージを袋に入れてあげるからこっちへ寄越して」
そういうとペンペンのジャージを布製のエコバッグに入れた。
会計は全部合わせて5千円でお釣りが来た。
「商品は毎日新しいのが増えるから明日も明後日も見に来てね」
「裕子さんありがとうございます。ここってキャッシュレスとか対応してますか?」
「ほとんど大丈夫よ。商店街の中で一番ナウいスポットだから」
「忙しくなったら手伝いに来ますから呼んでください」
「忙しくなったらね。じゃあLINE教えて。地元のマダムたちが来るだけだから人手が足りないほど忙しいなんてことはないんだけどね。いつでも遊びにおいで」
「きっと忙しくなりますよ、あっ私のことペンペンって呼んでください。なずななので、ペンペン草のペンペン!」
ペンペンは笑顔で裕子に手を振り店を出た。
「昼飯食べに行こうか?」
「翔くん、車の中で今の写真をSNSにアップするからちょっと待ってね。ちょっとだけ」
0
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される
clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。
状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる