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第1章
第1話 水晶竜と薬師のエルフ_4
「ノクスさん、ですか。はじめまして、私はレイスと言います」
目元を下げ、会釈をして挨拶をする。
「……レイス」
呟くように名を呼ばれたあと、頬を撫でるノクスの触手にびくっと身をこわばらせてしまう。二ヴルの腕にしっかり抱かれていて身動きが取れないため、擦り寄ってくる触手に好きなようにされるしかない。うねり動く触手の先が咥内に捩じ込まれ、苦しさに身悶えしてしまう。
「……んぐっ、ふ、んん……ッ」
甘い液体を分泌させながらじゅぷじゅぷと激しい音をたて舌に絡みつき、触手がレイスの咥内を犯しはじめる。喉の奥を触手で突かれ、嗚咽を洩らす。脚を這う触手の感覚。閉じた内腿を二本の触手で無理やりこじ開けられ、性器に触手の先が絡みついた瞬間、咥内に捩じ込まれた触手がずるりと引き抜かれる。
「――やめとけ」
唸るような声が耳元で聴こえて、ぎゅっと閉じた瞼を開ければ触手の先を握りつぶさんとする二ヴルの腕が映った。
「ただのコミュニケーション、というやつだ。もう少し触れなくては過去や思考は読み取れないが……」
ノクスは無表情のままヨダレを垂らしながら無意識に腰を浮かすレイスを見下ろす。咥内の触手は抜かれたが、性器を這う触手は動きを止めるどころかぬめりけのある液体を絡めながら動きを速めて何かを探している。
「此処だな」
とノクスが嗤うと、下半身が痺れるような感覚がレイスを襲った。本来ならただの排泄器官である性器の先に鋭く尖った触手が入り込んできている。それも複数。
「やっ! あ……っ、そん、な……とこぉ」
尿道の中を熱い何かが小刻みにうねりながら進む恐怖に腰が抜け、二ヴルの腕にしがみついてしまう。潤滑剤代わりに分泌される液体が中から溢れ出し、レイスの内腿をだらだらと伝う。タオル越しに勃ちあがるレイスのそこを見て、二ヴルは再び唸り声をあげる。
「おい。もう充分触ったろ」
「精液の採取が一番いい情報源になる。遺伝子を得ることでどのような生活をし、何を記憶して生きてきたか。それに好む食物、趣味嗜好や――」
「殺されてえか」
「性感帯などの情報を全て得ることができる」
込み上げる熱を吐き出すための場所は塞がれ、身をよじるしか逃れる術はない。性行為というのは生物が行う繁殖行動であり、種を永続的に続けていくためのいわば生態系を維持するものであるというのは知っている。
「成程、お前は自慰もしたことがないんだな。射精もまだなのか? 興味深い。……恐れることはない、繁殖行動でなくとも快楽のためだけに性行為をすることはある」
男の性器を擦り勃起させ、女の性器へ結合させて袋の中で子を融合させることも。だが、女とまぐわうどころか、自らその場所を慰めることが無いレイスは性器に触れられる奇妙な感覚にひどく怯えた。
「んっ、ん、んあっう」
「……今お前が感じているのは"快楽"というものだ」
「や、やっ、待……んぁあっ」
「良い子だ。声を出すともっと悦くなる。快楽だ。いいな、これが"快楽"だぞ、レイス」
性器の先に更に触手が絡みつき、分泌液をどくどくと尿道へ流し込む。それと同時に、ノクスが言った快感というものをじわじわ覚えていく。
尿意とも異なる下半身の違和感。何かが込み上げてくるのを必死に堪えようとはするが、尿道の中を触手に激しく上下に擦られ、目の前が真っ白になっていく。
視線を上げれば、自分を見下ろす二ヴルと目が合ってしまう。三つの鋭い目が自分を見つめている。
「二ヴル……さ、ん……っ」
怖い。
と小さく呟いた次の瞬間、勢いよく触手が引き抜かれた。
「あ……っ」
先程まで与えられていた快感の余韻に浸りながら、腰をひくつかせどこか物足りなさを感じていることに気がつく。あのまま尿道を触手で擦られていたら、どうなっていたのだろう。恐怖に混じる少しの好奇心と、昂る行き場をなくした吐きかけの精子。寸止めをくらった事実が理解できないレイスは、その不快感をも快楽だと錯覚してしまう。出したい、とすら言葉にすることが出来なかった。尿道から出るのは排泄物、男女の繁殖行動でのみ精子という種が男から出る――それを射精という。文献でしか射精を知らないレイスは、自分の起立した性器を布越しに見て心拍数を高めた。なぜ繁殖行動でもないのに自分のそこは腫れているんだろう。性器を擦ると不思議な感覚になっていくが、その終わりはどのようなものなんだろう、もしその先にもっと知らない何かがあるなら――……。
「……まさか本当に殺すつもりでくるとは」
物騒な台詞に徐々に熱を下げていく。
真正面にいるノクスの方を見ると、触手の先が結晶化していた。赤い結晶。水晶とはまた異なる鉱石だろう。
「二ヴルが自分以外の個体に固執するのも珍しい。……残念だ。エルフの生態に非常に興味が湧いたんだが」
そう言ったノクスからは少しも残念さを読み取ることが出来なかったが、表情の一切を変えることなくただ深いため息のあと、レイスの顔に顔を近づけて「今度、羊皮紙を持ってくる」と短く告げた。
空気が重たい。低気圧のせいで頭痛がするような、そんな呼吸の浅くなるような空気だ。
ノクスと引き剥がされるように二ヴルに抱かれたまま大浴場へと来た道を戻って、服を着せられたまではよかった。ふわふわとしたよくわからない気分が落ち着いてきた頃に、現在自分が置かれた状況に混乱してくる。
高そうな一人がけ用の椅子にどかっと座る二ヴルの膝上に、抱きかかえられるようにして座っている。
「……」
「…………」
「……」
「……………………」
長い沈黙が続くことに耐えきれず頭上にある顔を恐る恐る見上げると、それはもう不機嫌そうにしてそっぽを向いてこちらを見てくれない。声をかけようにも、何と話しかけたらいいかわからない。それに、擬似的ではあるが繁殖行動の一環を二ヴルに見られてしまった恥ずかしさはおそらく一生忘れることができない醜態だ。
「……悪かった」
突然の声に驚きビクッと肩が跳ねた後、二ヴルの三つ目がレイスを見下ろす。あまりの空気の重さに、何に対しての謝罪なのかも訊ねることが出来なかった。
「俺の能力は触れた者の快楽と痛みを奪うこと、それから俺が得た快楽と痛みを与えること。……だから、初めてお前に出会ったときに痛みを奪うために悪戯した。許せよ」
謝罪はどうやら、レイスへの行いに対してのものらしい。
「痛みを……奪う」
だからあのとき肩の痛みが消え去り、僅かに二ヴルが苦しそうな顔をしたのかと腑に落ちる。
「どうして……見ず知らずの私のためにそんな……」
「下心だよ馬ァ鹿。一目惚れってやつだ。言わせんな」
「…………」
一目惚れ。それは自分が意図せずかけてしまった魔法だ。他者の心を支配することが、こんなに苦しく罪悪感にまみれるものだとは知らなかった。
「二ヴルさんが私に抱いているのは自然な一目惚れの感情ではありません。私が造った"惚薬"による偽りの一目惚れの感情です」
「は?」
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全てを告げる前に、目の前が真っ暗になる。
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