あいつが俺の番なわけない

嵯乃恭介

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第三話 三日前

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次はあいつを入れないといけないと保健室の机でコーヒーを飲みながら陣は外を眺めると、勢いよく扉が開いた。

「ちょっと!たかちゃんが来てないし電話にも出ないわ!」

オネェ口調になっていたのでβかΩかと思っていた自分の弟は通常のフェロモンよりも強くクラスメイトが発情期に陥るまでのものを出しているが本人は気づかないし、αなので襲われることはないと思っているので施設送りは見送っていた。

「俺の知っている施設に預けた。お前も預ける予定だ」

「どうして?私の番は隆でしょ?まさか兄さん・・・」

と続きを言うのかと思いきやソファーに座っていた陣の頭を蹴り飛ばす圭太だったが、陣は既に察知していてコーヒーが零れようとも避けてしまう。
 圭太は自分がどれほどまでに圭太に固執しているかを知らないわけではないが、説得には時間がかかりそうだ。

圭太の両親同様に説明をすると圭太は、大人しく相対しているソファーに項垂れている。しかしαの匂いが増すばかりで、血がつながっているβの陣にさえ効いているような匂いを発していた。

「判ったわ。私も施設に入るわ。その前に顔を見せない程度にたかちゃんの声が聴きたいの・・・、いつ終わるか判らない検査なんていやよ」

 「判った、ただし薬を飲んでもらう。これは百万人に一人の割合で作られているから貴重なものだ。お前の匂いでβまでもが発情していることが判ったからな、用意はしていた」

「兄さん、優しいわね。私頑張って圭太を番にするわ」

オネェの番、しかもαの弟がΩの隆が運命の相手となると怖いものがあるが、運命は変えられないものだろうなとと零れたコーヒーのついたシャツを脱ぐ。

 「薬が効くのは三日後だ。それまで大人しく休んでいろよ」

 「家で飲んだほうが良いわよね!私早退するわ」

有言実行と言うべきか、圭太はそのままカバンも持たずに家路についたのだ。おかげでカバンは陣が持って帰ることになる。言わなければ良かったかもしれないと後悔する。
 めんどくさいが、この人間α、β、Ωというものがなければ、隆と圭太は普通の友人として過ごせたかもしれない。



一方、圭太は渡された薬を飲むと一気に眠気来て家の玄関で眠ってしまった。もしも叶うならば隆の夢に隆が出てくることを祈りながら眠りに入る。



二日後、圭太は目覚めた。そこは壁に囲まれた部屋だったが何もないとも言えない。本や机が置かれている。そして防護服を着た医者?らしき人物と兄である陣が一緒に来た。

 「α数値は少し下がってますが、まだまだ安定していませんが、番に会いたいとのことですので早めに声だけでも聞いて、治療に専念してもらいたいと思います」

 待ってましたと言わんばかりに圭太は喜んだが、治療まで待ってられない。抱きしめてキスをして、そして体を重ねたい。隆を誰の物にもしたくない。

「判ったわ。声だけ・・・聞かせてちょうだい。そしたらいう事は聞くわ」

 こんな施設に居たら、数値も関係ない。隆に会いたいだけが募る一方だ。何か秘策はないかと考えるが、鉄格子や監獄のような施設の中で、どうすれば良いのかと悩むが、一つだけ思いついた。

 ー壊してしまえば良いのよね

不適な笑みを浮かべる圭太の表情を見た陣は嫌な予感しかしなかった。
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