男装令嬢は侯爵家に嫁入りしました

すみ 小桜(sumitan)

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1話

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 彼との出会いは、数か月前。お茶会に招かれた時だった。
 その時はまだ、だとは気づいてはいない。

 「今日はお招き頂きありがとうございます」

 ちゃんと令嬢として招かれているので、ドレスを着てカーテシーをする。

 「待っていたわ、メロディーナ嬢! 彼女は、長らくケイハース皇国に居て帰国されたルティアン・ラフリィード侯爵令嬢よ」
 「お初にお目にかかります」
 「ラフリィード嬢、こちらメロディーナ・ハルサッグ伯爵令嬢よ。さあ、こちらへ」

 私達を紹介しているこの方は、赤い瞳に髪のソフィア・カシュアン侯爵令嬢。情け容赦ない侯爵と言う黒い噂があり、赤の一族と比喩されている。
 そして、紹介されたラフリィード侯爵令嬢のお父様は外交官で、子供達はこの国ではなく他国で過ごしていると聞いていた。帰国したのね。
 ラフリィード侯爵令嬢は、少し切れ長の碧眼で、長いストレートの銀の髪。チラッと私を見るも、困惑した顔つき。

 同じ侯爵だからカシュアン嬢は、マウントを取るつもりのようね。
 しかし、私達を引き合わせてどういうつもりかしら? 彼女が男ならまだわかるけど、女同士なのよ。

 こちらへと呼ばれたのは私ではなく、席に座っていたラフリィード侯爵令嬢の方だった。彼女は、何も言わずにスーッと素直に立ち上がる。

 あ、なるほど、そういう事ね。
 立ち上がった彼女は、私と同じぐらい背が高い。
 私は、3センチのローヒールを履いて170センチある。その私と一緒だからラフリィード侯爵令嬢と私を並べたかったのだろう。嘲笑う為に。

 ラフリィード侯爵令嬢も可哀そうに。きっと、コンプレックスを持っている事でしょうに。
 カシュアン嬢に目をつけられたのが運の尽き。彼女の趣味は、こうやって人をからかう事なのだから。

 「あらやっぱり同じぐらい背がお高いわ」

 嬉しそうにカシュアン嬢が言った。

 「おや、これはこれは。メロディーナ嬢と同じぐらい背の高い令嬢がこの国におられたとは」

 にやりとして現れたのは、カシュアン嬢の二つ年上の兄、アモレ・カシュアン子息。
 こいつは本当に嫌いだ。凄い女好き。
 こんな事をいいながら私すら口説いてくるのだからね。

 「あらお兄様。こちらがルティアン・ラフリィード侯爵令嬢よ。うふふ。未来の姉上になられるお方かしらね」

 え! 二人をくっつけるつもり?
 みんなの視線がラフリィード侯爵令嬢に集まる。
 大人しいタイプみたいだし、相手は侯爵家。相手としてはこの上ないけど、ラフリィード侯爵令嬢としてはどうなのだろうか。噂は聞いている?

 「不愉快です」

 ボソッと言った声が低くて驚いた。凄くお怒りみたいね。
 うん。噂は知っているようだわ。

 「へえ。大人しそうに見えて気が強いんだ。いいね~」
 
 そう言って、カシュアン子息がラフリィード侯爵令嬢に近づく。

 「ぐはぁ!」

 彼女に手を伸ばそうとしたとたん、カシュアン子息は蹲った。どうやらヒールで足を踏まれた……のではなく、向こうずねを蹴ったのね。
 カシュアン子息は、そこを抑えていた。
 踏むならわかるけど蹴るなんて驚きだわ。まあそこも急所だろうから痛いよね。

 ラフリィード侯爵令嬢は、スタスタと歩いて去っていく。
 まあ向こうも侯爵だから大きな騒ぎにはならないでしょう。

 「くそ! あの女狐が! 覚えていろ!」

 女狐って、あなたが言う。というか、本人がいないのにほざくのね。
 痛いわよ、あなた。

 「お兄様。大丈夫ですの?」
 「っち。大丈夫だ。そうだ。今日はお前が相手しろ」

 そう言ってあろうことか、カシュアン子息が私に手を向けて来た。
 嫌よ!

 「きゃあ!!」

 咄嗟にその手を払う突き飛ばす。

 「ぐわぁ」
 「あぁ、ごめんなさい。し、失礼します」

 と、泣きながら私は退場した。
 彼はひっくり返った。女に払われたぐらいで倒れ込むなど軟弱者め。
 まあ何か言われたら、お父様が何とかして下さるでしょう。
 私には、潔癖症という噂が流れているから、突然あのを伸ばしてきたので、振り払ってもおかしくないわよね?
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