【完結】ミキって書かせて頂きます

すみ 小桜(sumitan)

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2話 星空の誘惑

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 その三人組は、楠の横に来ると、一人の女性が声を掛ける。

 「ここ、いいかしら?」
 「どうぞ」

 楠に声を掛けた女性は、胸の長さまで伸びた髪から大きな円型のピアスが覗き、メイクもばっちり。Vネックのシャツに短めのAラインのスカート。柔らかめのピンク色で揃えている。

 続いてその隣に、もう一人の女性が座る。
 彼女は先ほどの女性と対照的で、長い髪を後ろで一つに束ね、黒系のパンツスーツ姿だった。仕事が出来ますという感じだ。

 そして、その横には男性が座った。
 紺に白のストライプシャツに紺のスラックス。それに甘いマスク。女にモテそうだ。

 「ここいか?」

 対照的な二人を見比べていたミキに、男性から声がかかる。

 「どうぞ」

 そう答え、彼を見上げた。
 眼鏡を掛け、ライトベージュのシャツにパンツ、黒のオープンジャケットを羽織っていた。先ほどの男性から見れば堅物に見える。

 「失礼します」

 さらにその隣に、静かに男性が座る。
 白シャツに薄手のグレーのカーディガンを羽織り、白っぽいジーンズをはいている。
 彼は優し気な感じだ。

 これで七時半前に全員揃った事になる。
 ミキは全員を見渡して、思っていたより若いと思った。ミキと同じ二十代に見えた。今の若者は、家族を求めているのだろうかと、自分も同じぐらいな歳だというのにそう考えていた。

 「あの、まだ夕飯までに時間がありますし、軽く自己紹介しませんか?」

 楠が提案すると、皆賛成する。

 「では、私から。四番に宿泊します、楠里奈と言います。宜しくね」

 楠が会釈して挨拶をすると、隣の女性が続けて挨拶をする。

 「私は、伊藤いとうあやです。あ、二番です」
 「私は、相内あないひとみです。明後日札幌で仕事なので、その前にまったりしようと思いまして。宜しくお願いします」
 「俺は八田はった秋広あきひろ。瞳と同室で一番。恋人同士です。札幌に行くって言うんでついて来た。宜しくな」

 伊藤に続けて、二人も挨拶した。
 三人は何かのサークル仲間なのかと思ったが、相内と八田がカップルだった。

 そして次に、相内の前に座る男性が挨拶をする。

 「えっと、次は僕でいいのかな? 僕は、ほり望六のぞむ。部屋は五番。実は、結婚式の下見の下見? で来ました」
 「下見の下見って何? って、結婚するの? おめでとう」
 「あ、はい。日時はまだ決まってませんが……。ありがとうございます」

 伊藤にそう言われ、堀が照れてお礼を言うと、皆も祝福を贈る。

 「次は俺かな」

 そう言うと、ミキの隣の男性は立ち上がると軽く会釈した。

 「俺は、遊佐ゆさまこと。ゆっくりとくつろぎたくて、ここを選びました。宜しく頼みます。一番端の六番です」
 「最後は私ね。若狭かかさせミキって言います。言いづらいのでミキって呼んで下さい。三番です。明日、小樽観光楽しみたいと思ってます!」

 元気に自己紹介を終えると、見計らったように夕飯が運ばれてきた。
 頂きますと、皆、食事を始める。
 食事には海の幸が沢山出て来た。ホタテにうに、いくら、それにカニ。そしてニシンも。
 こんなに食べきれないという程で、ミキは大満足だった。

 「ねえ、後で一緒に飲みません?」
 「いいねぇ。じゃ、俺たちの部屋で飲もうぜ」

 伊藤は、相内、八田のカップルと仲良くなったらしく、食後の打ち合わせをしている。
 そういえば、三人で食堂に来たとミキは三人を観察していた。

 「ねえ、二人ともこの後、お風呂一緒にどう?」

 クルッと伊藤は振り向き、楠とミキに訪ねて来た。

 「私、入ったから今日はいいわ」
 「あ、私も」
 「あら、早いのね。じゃ私達だけで行きましょうか」

 二人の返事を聞き、伊藤は相内にそう声を掛けた。
 相内は、はいと頷いた。

 「あなたも入ったのね」

 楠が、ミキに声を掛けて来た。

 「はい。露天風呂最高でした」
 「じゃ、これから暇よね。そこのソファーで話さない?」

 楠のお誘いをミキは、二つ返事で了承する。
 食堂の奥には、壁側にテレビが設置してあり、その前にテーブルと三人掛けのソファーが二つ置いてあった。

 ミキ達はしばし、食事を堪能した――。


 ○ ○


 食事を終えると、楠とミキ以外は、お風呂へ入りに行き、二人はソファーに座った。
 食後のコーヒーを飲みつつ、二人は会話を始めた。

 「ねえ、楠さん、私達どっかで会ってません?」

 気になっていた事をミキは尋ねた。
 その言葉に楠は、驚いた顔を見せてから目線を外す。

 「まさか口説かれるなんて……」
 「え! いや、違いますよ!」

 まさかそう言う意味で取られるとはと、慌てて否定するミキを見て、楠はクスッと笑った。

 「冗談よ。……ごめんね」
 「え……」

 ごめんねの言葉を言った時の楠の目が真剣に見えて、ミキはジッと楠を見つめる。

 「やだ、なーに?」
 「あ、なんでもないです……」

 それから二人はまた、他愛もない会話を始め、気が付くと十一時を回っていた。

 「もうこんな時間。お開きにしましょうか」
 「そうですね。楽しかったです」

 楠の言葉にミキは頷く。
 二人は立ち上がると一階に降り、ドアの前まで来た。

 「おやすみなさい」

 挨拶を交わすと、ミキは電気を点けドアを閉める。そして、ソファーに腰を下ろした。

 「もう十一時か……」

 テーブルにある宿の案内を手に取り、パラパラとめくる。
 暇なので読んでみる。

 「玄関って夜十時に施錠なんだ」

 案内には、防犯の為二十二時から六時まで施錠します。御用の方は、カウンターにおいで下さい。――と書いてあった。

 「星空、どうしようかな……。辺り真っ暗だよね? さっき気づけば楠さん誘ったんだけどなぁ。明日誘ってみようかな」

 ミキはふと星空の事を思い出すが、明日見に行く事にし、今日は寝る事にした。寝る支度をして、零時前には布団に入ったが眠れない。

 「あ、そっか。ガッツリ昼寝しちゃったんだ……」

 興奮して眠れないのかと思ったが、昼寝をしてしまった事を思い出す。
 布団の中で眠れずごろごろしていると、隣から声が聞こえて来た。

 「あれ? 楠さん起きてる?」

 スマホを手に取り時間を見ると、もう日付が変わり零時を過ぎていた。
 気になりだすとさらに寝れないミキは、窓を開け夜空を見た。

 「わぁ、綺麗。月も出てる! 眠れないし見に行っちゃおうかな?」

 そう決めると即決行! 脱いだ服に着替えると、パジャマをたたんでふとんの上に置き部屋を出た。
 カウンターに寄ると、そっと声を掛ける。

 「すみませーん」

 だが、寝ているのか返事がない。

 「どうしようかな。まあ、いっか。こっそり行っちゃおう。こんな山奥に泥棒なんてこないだろうし」

 ミキは外に出ようとしてカギを外そうとするが、かかっていなかった。

 「あれ? しわすれ?」

 そっと外に出ると、静かにドアを閉め展望へと歩く。
 スタッフの菅原の言う通り、足元にライトが設置してあり歩くのには支障がなかったが、雑木林の中を歩くので怖く、何も出ませんようにと祈りながらミキは進んだ。

 目の前にやっと開けた場所が見え、ミキはジッと見つめた。
 ミキが見つめていたのは、星や月でははく、開けた場所に佇み月を見上げる女性だった。
 なんとも神秘的で、さっきまので恐怖心を忘れボーっと見つめていた。
 さあっと風が吹くと、長い髪とスカートがさらさらとなびく。

 どれくらい時間が経っただろうか。ふと、女性がミキの方を振り向いた。
 ミキは、反射的に木の陰に隠れてしまった。
 女性がこっちに向かって歩いて来るので、出るに出れなくなる。

 ――見ているのばれた? いや女性同士だし問題ないし。別に隠れる必要もなかったし。でも、隠れたら怪しいよね?

 などと思いめぐらせていると、女性はそのままミキの前を通過していく。

 「あ、帰るのか。って!」

 ミキは、安堵したのち驚く。
 彼女が自分より背が高かったからだ! 足元を見ると、スニーカーだった。
 ミキはそれなりの背丈があり、泊まり客の女性の中では一番背が高い。

 「え? 私、一六九センチあるのに? 私が一番背が高いと思ったのに……。どこの人?」

 てっきりアットホームに泊まっている女性の中の一人だと思ったので驚いた。
 彼女を追うと、一本道なのでアットホームに出る。そして、玄関から建物の中に入って行った! アットホームの客だったようだ。

 「………。高く見えただけかな? 取りあえず、私も戻ろう」

 ミキは、ドアを開けようとするが開かなかった!

 「マジですか!」

 当たり前だが、ミキが出て行ったのを知らないので、カギを掛けられた。
 時刻を確認すると、もう夜中の一時だった。

 「やばい、どうしよう……。ベル鳴らしてもいいかな? もっとちゃんと声掛けておけばよかった。……あ!」

 ミキは、ある事を思い出し、自分の部屋外へ向かった。

 「やっぱり!」

 三番の部屋の窓が開けっぱなしになっていた!
 つまり鍵を掛けずに部屋を出ていた。

 「いや、私って抜けてる。でも、抜けててよかった!」

 ミキは、窓から部屋に入ると窓を閉めた。そして、こっそり靴を置きに行き、スリッパをはいて自分の部屋に戻った。
 時間を確認すると、一時半近かった。
 着替えると、ベットにあるライトだけ灯し横になる。

 「なんか疲れた。結局、女の人見ていただけだし。何してるんだろう、私」

 目をつぶると今度はそのまま、スッと夢の世界にミキは落ちて行った。
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