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37話 怪しい電話

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 「ただいま、戻りました……」
 「どうだ、進み具合は?」

 ミキが入るや否や支店長の見谷は、わざわざ二人に近づき聞いて来た。
 殺人犯を探していて、詐欺に加担した者に行きあたった事は内緒にする。

 「まあ、ぼちぼち……」
 「いやしかし、第一発見者になるんなんて、持ってるなお前達!」
 「嬉しくないですけどね。ところで、これ書いたら載せてもらえるんですか?」
 「当たり前だろう!」
 「そうですか。頑張ります……」

 ミキは、そう言うと席についた。

 ――全く、調子がいいんだから!

 始めて会った時に、ミキにさせる仕事はないと言っていたのにと、ムッとするミキだった。

 「よかったですね」

 浅井が嬉しそうに、ミキにそう声を掛けた。

 「そ、そうね……うん?」

 鞄から、ブーブーと音が聞こえたのである。
 ミキは、スマホを取り出すと電話に出た。

 「もしもし。もしかして、出頭する気になったの?」

 相手は、佐藤からだった。

 『……いや、そうじゃなくて。その、お礼と言うか情報をと思って……』
 「情報? なんの?」
 『愛人の家……』
 「え? 愛人!」

 つい、大きな声になり、ミキは辺りを見渡した。
 気にしていたのは、浅井ぐらいだった。
 ジッと浅井は、不安そうにミキを見ている。

 「それって三木さんなんだよね?」
 『たぶん……。その人の居場所がわかったから一緒に行かないかなって……』
 「一緒に? あなたが行ってどうするの?」

 ミキは、変だと思った。彼女に会うとしたら脅す為。反省をしていない事になる。しかも、それを知っている相手に一緒に行こうと連絡をくれたのだからである。

 『そうじゃなくて、それ終わったら一緒に警察にと思って……』
 「うーん。罪滅ぼしのつもり?」
 『まあ、そんなところかな……』

 ――罪滅ぼしね……。言っている事ちぐはぐだでなんか怪しい。取りあえず、彼に会うだけあって詳しく聞くかな。

 「わかったわ」

 ミキは、何も気づかないふりをして了承し、電話を切った。

 「あの、佐藤さんからですか? 愛人って?」

 いつもの如く、不安げ気に浅井は聞いた。

 「組長の愛人の家がわかったらしいわ。これから、ちょっと確認に行ってくる」
 「え! 一人で行くつもりなんですか!」
 「ついて来る?」
 「勿論行きます! って、いうか怪しくないですか、その話……」

 ミキは頷く。
 浅井でも気づける程、怪しげな話だった。

 「滅茶苦茶怪しいわ。でも、行かないと真相がわかんないでしょ?」
 「……そうですね。で、場所どこなんですか?」
 「うーん。宮の森のマンションですって。私、よくわかんないけど場所わかりそう?」

 今度は、浅井が頷いた。

 「僕が案内しますから住所を教えて下さい」

 浅井は、前のめり気味に言った! 
 ミキは、佐藤から聞いた住所を浅井に教える。

 「そこなら、わかります。あ、僕、トイレ寄ってから行きますから、先に外に行っていていいですよ」
 「わかったわ」

 ミキは頷いた。

 「少し出て来ます」

 浅井に言われた通りミキは、先にオフィスを出た。
 少しすると浅井も出て来て、二人は佐藤が指定した場所の宮の森マンションへ移動を始めた。
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