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第4話
「とりあえず、部屋で少し休みたいわ」
「それなのだが、今までの部屋はアンナが使っていて……」
「はい!?」
「レネットの部屋は、学園に行くようになったら広い部屋にすると言っていただろう。ちゃんと部屋を用意した。調合室にバスルームもある。前の部屋の横だ」
私が、驚いて大きな声で返したものだからお父様が焦って早口で言った。
そう言えば、そんな事も言っていたわね。
でも私の部屋を使わせるなら一言あってもいいんじゃない?
「レネット、こっちよ」
お母様が、私に言って部屋へと向かうので、文句を言いたかったけど、後をついて行く。
荷物は、侍女が部屋に運んでくれていた。
私の前の部屋を過ぎ隣の部屋が新しい部屋で、前より広い。寝室も別になっていた。
お母様が、部屋に入るとパタンと部屋のドアを閉めた。
「ごめんね、レネット」
「仕方がないわ。でも一言言ってほしかったわ」
「そうよね。初めは、すぐに出て行くと私は思っていたのよ。三人で客間を使っていたわ。でも、彼女がお勤めにでるのを嫌がってね」
お母様が、困り顔で言う。
彼女とは、お父様の妹の事よね。ウルミーシュ子爵夫人。
この世界の貴族のお勤めとなれば、どこかの侍女でしょう。実家に帰って来て、実家で侍女の真似事などしないでしょうから。
「事業に失敗して、屋敷を売って何とか借金はなくなったようなのだけど。実際、ここで手伝い程度に仕事をしても給料をあげられる程ではないのよ。食費や宿泊料をそこから引いたら、スズメの涙ぐらいよ」
だよね。私もそう思うわ。
この世界の貴族は、領地を持った貴族と大きな仕事を生業としている貴族が生活している。
領地を持っているのは、だいたいが伯爵家以上の貴族。我が家は伯爵家だけど、領地を持っていない。
だから薬屋と薬草問屋を営んでいる。
貴族が貴族として生活をする為には、それなりのお金がいるから資格を持っていなければ、もう侍女や執事として働くしかない。
うちで雑用するよりお金が手に入ると思うけど、侍女も執事の仕事もした事がなければ、やっぱり給料は安いか?
「ちゃんと働く為に資格を取りに今から学校に通うとウルミーシュ子爵が言い出す始末」
ため息交じりにお母様が嘆く。
「グリンマトル家からお金は出しませんが、その学費はどうするのですか? と言えば、口を閉ざしたのよ。我が家のお金を当てにしていたのが、バレバレよ。ウルミーシュ子爵は、学園でアンナの婚約者を見つけるつもりだと言うけれど、兄の所に居候している令嬢と結婚してくれる令息がいるかどうか」
お母様が嘆きたくもなるはずよ。
お父様にすれば、妹だから何とかしてやりたいと思うのでしょうけど、彼らがちゃんと働く気がないのならこれからずっと養っていかなくてはいけなくなるわ。
「って、そんな話をしたらアンナに薬師の資格を取らせたいと言い出したのよ。学園の卒業後に通わせたいからお金を貸して欲しいって。私は反対したわ。あの子ちょっと我が儘だし、結局ウルミーシュ子爵夫妻自身に働く気がないのだもの。お金が返ってくるかもあやしいわ」
そうよね。返す気なんてないかもしれない。
薬師は、5年間も通う。学園卒業後に通えば21歳に卒業よ。しかも、試験に合格しないと薬師にはなれない。
でも資格を得られれば、安泰なのは確か。その年齢になっても薬師になれば、結婚できる可能性もある。
ただ、親族にとはいえ借金がある令嬢と結婚する相手がいるかどうか。
「お陰でこのごろ喧嘩が増えたわ」
「え!」
「大丈夫よ。経営家としてちゃんとあなたへのお金は確保しているからね。勝手を言われても、手を付けられないようにしてあるわ。あの人にも、ちゃんと言ったわ。じゃないと別れてやるって!」
「えぇ! お、お母様?」
まさか、そこまで関係が拗れているなんて。離婚の危機だわ。
「いやぁね。泣きそうな顔をしないの。脅しただけよ。なぜ私が出ていかなくちゃいけないのよ。お人好しなあの人に、釘を刺しただけよ」
ってお母様がウィンクする。
まさか、この言葉が遺言の様になるとは、この時の私達は思ってもみなかった――。
「それなのだが、今までの部屋はアンナが使っていて……」
「はい!?」
「レネットの部屋は、学園に行くようになったら広い部屋にすると言っていただろう。ちゃんと部屋を用意した。調合室にバスルームもある。前の部屋の横だ」
私が、驚いて大きな声で返したものだからお父様が焦って早口で言った。
そう言えば、そんな事も言っていたわね。
でも私の部屋を使わせるなら一言あってもいいんじゃない?
「レネット、こっちよ」
お母様が、私に言って部屋へと向かうので、文句を言いたかったけど、後をついて行く。
荷物は、侍女が部屋に運んでくれていた。
私の前の部屋を過ぎ隣の部屋が新しい部屋で、前より広い。寝室も別になっていた。
お母様が、部屋に入るとパタンと部屋のドアを閉めた。
「ごめんね、レネット」
「仕方がないわ。でも一言言ってほしかったわ」
「そうよね。初めは、すぐに出て行くと私は思っていたのよ。三人で客間を使っていたわ。でも、彼女がお勤めにでるのを嫌がってね」
お母様が、困り顔で言う。
彼女とは、お父様の妹の事よね。ウルミーシュ子爵夫人。
この世界の貴族のお勤めとなれば、どこかの侍女でしょう。実家に帰って来て、実家で侍女の真似事などしないでしょうから。
「事業に失敗して、屋敷を売って何とか借金はなくなったようなのだけど。実際、ここで手伝い程度に仕事をしても給料をあげられる程ではないのよ。食費や宿泊料をそこから引いたら、スズメの涙ぐらいよ」
だよね。私もそう思うわ。
この世界の貴族は、領地を持った貴族と大きな仕事を生業としている貴族が生活している。
領地を持っているのは、だいたいが伯爵家以上の貴族。我が家は伯爵家だけど、領地を持っていない。
だから薬屋と薬草問屋を営んでいる。
貴族が貴族として生活をする為には、それなりのお金がいるから資格を持っていなければ、もう侍女や執事として働くしかない。
うちで雑用するよりお金が手に入ると思うけど、侍女も執事の仕事もした事がなければ、やっぱり給料は安いか?
「ちゃんと働く為に資格を取りに今から学校に通うとウルミーシュ子爵が言い出す始末」
ため息交じりにお母様が嘆く。
「グリンマトル家からお金は出しませんが、その学費はどうするのですか? と言えば、口を閉ざしたのよ。我が家のお金を当てにしていたのが、バレバレよ。ウルミーシュ子爵は、学園でアンナの婚約者を見つけるつもりだと言うけれど、兄の所に居候している令嬢と結婚してくれる令息がいるかどうか」
お母様が嘆きたくもなるはずよ。
お父様にすれば、妹だから何とかしてやりたいと思うのでしょうけど、彼らがちゃんと働く気がないのならこれからずっと養っていかなくてはいけなくなるわ。
「って、そんな話をしたらアンナに薬師の資格を取らせたいと言い出したのよ。学園の卒業後に通わせたいからお金を貸して欲しいって。私は反対したわ。あの子ちょっと我が儘だし、結局ウルミーシュ子爵夫妻自身に働く気がないのだもの。お金が返ってくるかもあやしいわ」
そうよね。返す気なんてないかもしれない。
薬師は、5年間も通う。学園卒業後に通えば21歳に卒業よ。しかも、試験に合格しないと薬師にはなれない。
でも資格を得られれば、安泰なのは確か。その年齢になっても薬師になれば、結婚できる可能性もある。
ただ、親族にとはいえ借金がある令嬢と結婚する相手がいるかどうか。
「お陰でこのごろ喧嘩が増えたわ」
「え!」
「大丈夫よ。経営家としてちゃんとあなたへのお金は確保しているからね。勝手を言われても、手を付けられないようにしてあるわ。あの人にも、ちゃんと言ったわ。じゃないと別れてやるって!」
「えぇ! お、お母様?」
まさか、そこまで関係が拗れているなんて。離婚の危機だわ。
「いやぁね。泣きそうな顔をしないの。脅しただけよ。なぜ私が出ていかなくちゃいけないのよ。お人好しなあの人に、釘を刺しただけよ」
ってお母様がウィンクする。
まさか、この言葉が遺言の様になるとは、この時の私達は思ってもみなかった――。
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