居候と婚約者が手を組んでいた!

すみ 小桜(sumitan)

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第6話

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 その後、古くからいる執事長からウルミーシュ子爵夫人の話を聞いた。
 ふと思ったのよね。
 大抵は、薬師の家系なら長子だけではなく他の子も資格を得させるのにウルミーシュ子爵夫人は持っていなかった。なぜだろうと。

 アンナの母親、ウルミーシュ子爵夫人の名前はエルダさん。お父様と同じ、新緑の髪に茶色の瞳。
 彼女は、お父様の5つ下でちゃんと薬師の学校に通っていた。ただし中退している。
 その理由を聞いて驚いた。

 薬師の学校で出会った今の夫、ウルミーシュ子爵の子を在学中に身籠った。しかも、両方ともに婚約者がそれぞれいるのによ。
 結局、婚約者とは破談。まあそうなるわよね。

 私のおじいちゃんとおばあちゃんは、それはそれは大変苦労したようで、しばらくはエルダ夫人も産まれたアンナと一緒に、ここで暮らしていた。
 本当ならウルミーシュ子爵が薬師の学校を卒業した後、ウルミーシュ子爵家の屋敷で暮らすはずだったのに、彼も中退してしまったらしい。
 理由は、二人の事を皆が知っていて、居づらかったから。

 それで、ウルミーシュ子爵家が薬師の仕事の他に運搬の仕事を手掛け、その運搬の仕事を彼に引き継がせた。
 だけど3年前、薬師だった父親が事故でなくなり、薬師の仕事が出来なくなり運搬だけになる。
 心労がたたったのか、母親も一年後亡くなった。

 運搬の仕事には、経営家が居なくても問題ない職業だけど、ウルミーシュ子爵は運搬の仕事に向いていなかったのね。
 母親がいなくなると、仕事を回せなくなった。母親が亡くなる前から借金があったようで、結局はお父様の助言により屋敷を売り借金を返済。

 お父様が、しばらくは面倒みるからと言ったらしく、三人は図々しくも2年も居候していると言う。

 執事長から見ても二人は、お父様に甘え仕事とは名ばかりの雑用を少し手伝うぐらいしかしていないらしい。
 アンナも、初めは大人しくしていたけど、自分の部屋が欲しいと言い出し、私の部屋を使う事になった。
 しかも、お父様はこっそりとアンナにお小遣いをあげ、普段着も三人に買い与えていた。

 お父様? お人好し過ぎますって。
 お父様曰く、仕事を探し一年程で出て行くと思っていたと。普段着も買うお金がないから、出世払いのつもりで買ったらしい。
 けどウルミーシュ子爵家三人は、居座る気満々だった。

 まあ私が、このままだと出て行くわよって言ったので、アンナが薬師の学校に行くお金は出さないだろうけどね。
 まずは、お父様がちゃんとウルミーシュ子爵に、他の仕事を探す様に言わないと始まらないわ。

 お父様も私が言った事で、ウルミーシュ子爵にアンナが学園を卒業まで居てもいいが、その後は仕事がなくても出て行ってもらうと言ったらしい。
 これで真面目に仕事を探してくれるといいのだけど。

 ウルミーシュ子爵は暫くすると、運搬業を営む貴族の所で働きだした。
 エルダ夫人は、我が家でちゃんと働きだした? アンナにも手伝わせている様子。

 私も経営家の仕事を学び始めたので、彼女達に構っていられない。と思っていたらお父様に大事な話があると言われ、お母様と話を聞いて驚いた。
 なんと、婚約者を見つけて来たと言うのよ。

 「大丈夫だ。この家は、レネットに継がせる! 婚約者は、ルトルン伯爵家の次男、ガストンだ。彼は、レネットの一つ上で学園を卒業後、経営学科に通う予定だ」

 余程私が言った事が堪えたようで、私の婚約者まで探して来た。

 「まあ、あなた。そういう事は私に一言相談してと言っているでしょう! しかも、レネットの一生に関わる問題だと言うのに」
 「わ、わるかった。でもいい話だろう。レネットは学園に通っても一年目は、経営家の仕事をしなくてはいけない。婿探しが出来ないだろう」

 そうなのよね。領地を持っている貴族は、早くに婚約するらしいけど、そうではない貴族は学園で婚約者を探す。だいたいは、学園卒業後、資格を得る為にさらに学校に通う。
 だから婚約しておくのよね。結婚は、学園を卒業して数年後になる。
 だからと言って、一人で決めないでほしいわ!
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