居候と婚約者が手を組んでいた!

すみ 小桜(sumitan)

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第27話 エルダ視点

 まさか、プロンテヌ侯爵が領主の息子を選ぶなんてね。
 これじゃ相手を丸め込む事も排除する事も出来ないじゃない。
 何の為に執事長以外の使用人を総入れ替えしたと思っているのよ。てっきり執事長に頼むと思っていたのに。

 相手が権力を持っているから下手な事が出来ない。
 危なく、追い出されるところだったわ。

 「ごめんなさい。この子、忘れぽくっていけませんわ。ねえ、レネット。あなたも一人で馬車に乗るのが怖いからアンナと通いたいのよね? あんな事があったもの。言って聞かせるから許してくれるわよね」
 「え……そうね。ワザとではないのならね」
 「ごめんなさい」

 アンナに謝らせて何とかしたけど、マスティラン子息を見るに本気ぽかったわ。
 彼、もしかしたらレネットに気があるのではないかしら。
 お兄様伝手に聞いた話によると、マスティラン令嬢とレネットが先に知りあって、彼とも仲良くなったとか。

 「どうするんだ! 領主の息子がしゃしゃり出て来た。このままだと、あいつレネットと結婚する事になるんじゃないか。彼をごまかせるとは思えない」
 「手は打つわ」
 「学園の噂も消えちゃったし。レネットが除け者にされている感じでもないのよ。それどころか、同じクラスの婚約者の浮気相手だとされる令息が、孤立しているわ」
 「アンナ、今なんと?」
 「だからレネットじゃなくて、浮気相手の令息が孤立しているのよ」
 「このままだとヤバくないか? 何か感づいてたりしないよな? あいつ頭良さそうだし」

 ガストンが怯えだした。
 こんなやつに娘をくれてやるのは嫌だけど、もう引き返せない。ルトルン伯爵も巻き込んだのだから。
 でもいい事を思いついたわ。

 「アンナ。あなた、彼らに手を貸す代わりに、協力を持ち掛けて」
 「え? 彼らって?」
 「もう、マスティラン子息の元婚約者とその令嬢の浮気相手の令息よ。いい? 誰にもバレない様に人前では仲良くしないのよ」
 「わかったわ。ガストン様との為だもの」

 アンナは、力強く頷く。

 「まずは、持ち掛けた後、レネットを貶める噂を流すわよ」
 「え? でも、そんな事をしてもあの人が消しちゃうんじゃないの?」
 「大丈夫。本当の事を流すから」
 「わかったわ」

 次の日から、マスティラン子息が家にやって来た。
 しかも、経理の仕事を始めるなんて。厄介ね。
 まあ私では、経営の方は携われないから、そっちのお金をどうこうできないけど、グリンマトル家の財産関係を知られると困るわ。
 だからと言って、彼をどうこうするなんて無理。だったらレネットをどうにかした方がいいわよね。

 案の定、噂を流した次の日には、元気がなくなっていた。

 「お母様、凄い事になっていたわ。叔父様達の葬儀にマスティラン子息も来ていたって噂を流しただけなのに、ダマレドゴ伯爵令嬢と婚破棄をして、グリンマトル家に通っているって噂も流れて。それがなぜか、レネットが誑し込んだ事になったのだけど!」

 アンナが嬉々として話してくれる。

 「これで、彼がこちらに通いつめれば、レネットの首を絞める事になるわ」

 二人は、私を尊敬な眼差しで見つめる。
 先の噂の話を聞いて、ピンときたのよね。
 マスティラン侯爵の子息が悪い事でも相手が居れば、その者に悪意は移る。

 今回の場合は、レネットよ。
 彼女が唆した。その証拠に、行かなくてもいい葬儀にも参列し、毎日家に連れ込んでいると。

 「いい? アンナ。聞かれてから答えるのよ。レネットが婚約者であるガストンと居るより、マスティラン子息と居る方が嬉しそうだと」

 これも嘘ではないでしょう。

 「少しでもマスティラン子息に近づいた日には、後でネチネチと言われると」

 そして、嘘を混ぜたとしてもこれも事実になる。

 「ガストン様との婚約を破棄しようとしているとね」

 背びれ尾びれがついて、レネットは悪役に作り上げられて行く事でしょう。
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